★世界観設定や歴史、地理・地名など

 ファンタジーを読むのに欠かせない世界観の設定や独自の歴史。

 作者が設定厨じゃないため『精霊王の末裔』にはあまりこまかい設定は出てこないのですが、第七章を読むのに必要な部分だけおさらいしておきます。



(1)この世界の成り立ち


 はるかなる太古の時代、世界には神々が暮らしていた。

 世界は平和で美しかったが、ひとつだけ問題があった。

 アビーゾと呼ばれる残忍な男神がたぐいまれなる神力により、ほかの神々を支配し、圧倒していたのだ。

 困った神々はアビーゾを倒そうと相談するが、アビーゾはあまりに強く、それは不可能だった。


 そこで神々は、アビーゾを封じるためにひとつ世界を創り出すこととした。

 新しい世界の深海にアビーゾを沈め、神力のこもった鎖でしばりつけた。

 アビーゾが逃げ出さないように、神々は見張り役も創造した。


 それが四大精霊王である。


 水・火・風・大地をつかさどる精霊王のおかげで、何もなかった世界には豊かな自然と生き物が生まれた。

 やがて進化の過程で人間が生まれ、ときには人化した精霊王とのあいだに子を為すこともあった。


 そうして生まれたのが、たとえば水の精霊王であるホワイトドラゴンの血を引く竜人族である。


 しかし深海に沈められたアビーゾは虎視眈々と復活のときを狙っていた。


 彼は1200年ほど前、大きな魔力と霊感を持っていた人族の修道女ラピースラをそそのかし、水の精霊王の半身を氷漬けにした。


 これにより世界にはアビーゾが深海から吐き出す瘴気が満ち、魔物が増え、魔法体系が発展した。


 精霊王の一柱が半身を封じられたくらいではアビーゾの復活は難しく、異界の神々たちも静観していたが、アビーゾは次なる精霊王の力をそごうと画策し始めた。


 たびたび人間にコンタクトを取るものの、アビーゾと同調する者は少ない。


 この様子を異界から眺めていた神々は水の精霊王を解放するため、ホワイトドラゴンの力を受け継いだ竜人族を誕生させることとした。


 だが大きすぎる力を持つことになるので、魂の選別は慎重に行われた。


 その結果、歌うことが大好きで、大きな力なんて持っていても楽しく笑っている方が性に合うというお気楽な魂が選ばれ、先祖返りした姿で誕生することとなった。これが本作の主人公ジュキエーレである。



(2)第六章のあらすじ


 ジュキたち一行は皇帝陛下から「魔石救世アカデミー」の残党狩りを依頼される。

 帝国騎士団と共に潜入調査を行うことになっていたが、前日未明、レモがさらわれてしまった!

 卑劣な策を弄して瘴気の森に立てこもるアカデミー元幹部たちと、ジュキたち一行の死闘が幕を開ける!


 え、簡単すぎるって?


 第七章につながる重要な話としては、この調査中に火魔法が弱まっていることにセラフィーニ師匠が気付く件です。


「火大陸に住まうと言われる火の精霊王不死鳥フェニックスの力が弱まっているために、火の精サラマンドラたちの力を借りにくくなっているのかも知れません」

 と師匠は予想します。


 ジュキはふと、ラピースラが最期に言っていた言葉を思い出します。

『火の精霊王不死鳥フェニックスはすでに、火大陸で人間の手に落ちた』――


 帝国上層部や騎士団長クラスには、

「火大陸で百年以上続いてた部族間の抗争に、とある部族長が終止符を打った。それは不死鳥フェニックスを捕らえることに成功し、その生き血から不死の兵士を作り上げたからだ」

 という情報がすでに共有されていました。


 最近、レジェンダリア帝国の南の海に海賊の数が増え、帝国の漁民は困っていました。

 海賊を捕らえて話を聞いてみると、上記のような恐ろしい事実が判明したのです。


 魔石救世アカデミー幹部を一掃したジュキたち一行は、皇帝からまた新たな依頼をされます。


「火大陸で不死身の兵を従えた部族長が、海を隔てた水の大陸に攻めこもうと準備しておるという。そちらは火大陸へ渡って、この部族長のたくらみを阻止して欲しいのじゃ」


 水の精霊王たるホワイトドラゴン(通称ドラゴネッサばーちゃん)からも、


「わらわも不死鳥フェニックスの魂が救援の思念を発しているのを受け取ったのじゃ。どうもまた魔神アビーゾにそそのかされた人間が出たようでのう、不死鳥フェニックス殿は人間の手に落ちてしもうたそうじゃ。わらわの力を受け継いだ坊やに火大陸へ行ってもらおうと思ったんじゃよ」


 と頼まれてしまう。


 ジュキは不死身になった者をどうやって倒すのかと腰が引けているが、ばーちゃん曰く、


「坊やの聖剣なら不死身など関係ないのう」


 とのこと。かつてジュキはラピースラの実験で不死身の魔物と化した蜘蛛伯爵も聖剣で斬っているのだ。


 こうして一行は外洋を航海できる大きな木造船に乗って、火大陸へと旅立つこととなった。



(3)地理と地名


 この世界には4つの大陸が存在する。第六章までは「水の大陸」を舞台にしていた。

 「水の大陸」の南には「火大陸」と「地大陸」が、「水の大陸」の西には「風の大陸」がある。


 今回の舞台になるのは「火大陸」である。季節的には秋も深まってくるのだが、南に移動するため暑くなる。

 (つまり水の大陸は北半球にあるのだ笑 なお地大陸は南半球にあるよ)



〇レジェンダリア帝国


「水の大陸」のほとんどを支配する大陸。宗教や文化の異なる多様な人々によって構成され、王国・連合国・大公国・公国・自治領などから成っている。

人族地域の宗教は、聖魔法をさずけた異界の神々を信仰する聖魔法教。



多種族連合ヴァリアンティ自治領


ジュキたち竜人族や、ユリアたち獣人族が多く暮らしている地域。


帝国南東の沿岸部に広がる、さまざまな種族の亜人たちが住まう地域。

亜人族が信仰する宗教は、四大精霊王を通して自然や万物をあがめる精霊教。

自治領各地に精霊教会が建つ。



〇モンテドラゴーネ村


ジュキの故郷。


海岸線にせまる丘の上にある竜人族の村。村の中心に建つ精霊教会の鐘塔カンパニーレがモンテドラゴーネ村のシンボルで、小高い丘のてっぺんから突き出して見える鐘楼は遠くからやってくる旅人たちの目印になっている。

丘の下にある海辺の村が、小魚や貝類を捕って暮らすセイレーン族たちの漁村。



〇聖ラピースラ王国


レモの故郷。


多種族連合ヴァリアンティ自治領に隣接した人族の王国。


百年と少し前、帝国として統一される以前は、亜人族の地域に対する人族の前線フロンティアでもあったが、現在は平和。

聖魔法教の異端とされる聖ラピースラ派を信仰している。なおリアリストのレモは全く信心深くない。


自分たちの先祖であるラピースラ・アッズーリをあがめているので、本流の聖魔法教会とは相容れない。



〇アルバ公爵領


レモのパパが治める領地。聖ラピースラ王国東部に位置する。なお「アルバ」は暁という意味。東にあるからこの名がついたらしい。



〇帝都


レジェンダリア帝国の帝都で、当然ながら皇帝一家が住まう。


現在の皇后陛下が音楽やオペラを愛し、保護していることから、音楽の都として栄えている。

歌手を志す者なら一度は帝都劇場に立つのが夢。


ジュキはこの夢を叶えた数少ない恵まれた歌手のはずだったが、なぜか少女だと勘違いされているので、本人は大変不服である。

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