2.

「では、よろしくお願いします。今日は、ありがとうございました。」

「いえ、こちらも良い契約ができました。」

男は車に乗り込んだままそう答えた。

車が走り出した瞬間、アジトに戻る。

バッジを外した瞬間、いつもの優しそうな顔に戻った。

「疲れた~。」

「お疲れ、曇。契約は契れた?」

近くを通った雪が曇に缶コーヒーを投げながらそう聞く。

「勿論。予定通りアントワープ貰ってベルギーは共有になった。」

「いいじゃない。アントワープを栄えさせてそちらに移住する人を増やし、ベルギーがあいつ等には回せなくなる。そのままベルギーいただきってことね。流石曇。怖いこと考えるわ。」

「これを考えたのは雨だよ。しかも、このまま他の国も頂こうっていう魂胆もあるんだ。」

「どうやって?」

「少しずつ、少しずつ貰っていくんだ。小さな都市や島をね。それで、あちらが耐えられなくなってこっちに宣戦布告する。そのまま倒して一気に全部頂きっ!だって。」

曇は空っぽになった缶を投げてパッとキャッチした。

「そこまで考えてるのね。でも、この作戦だと曇の契約の腕にかかってるわね。」

「大丈夫。そこを見込んで雨は考えてくれてる。無理ならすぐにこちらから仕掛ける。気にするなって。」

「やっぱりうちのリーダーは天才だわ。一生ついていく。」

「僕も。」

「お前ら、何の話してんだ?」

そこに通りかかった雨が不思議そうに聞いてきた。

「なんでもないわ。それより、曇がまた契約を契ってきてくれたわよ。」

「おお。よくやったな、曇。」

雨は曇の頭を撫でる。

「そういえば、あれできた?」

「できた。結構調整に時間がかかったがな。」

雨は二人を連れて研究室に連れて行く。

「ほらよ、雪でも隠し持てるように、髪留めにしといた。」

「わ!思ってたよりもしっかりできてるじゃない!流石雨!」

雪の手に手渡されたのは、ボールペンくらいの大きさの髪留めだった。

雪のカラー、ピンクゴールドに雪の結晶の飾りが3つついている。

「ねぇねぇ、それ何?」

ずっと髪留めに視線をやっていた曇が聞く。

「ああ、これは銃だよ。ここの、先のところから弾が出るんだ。普通の銃とは違ってな、弾丸じゃねぇんだよ。毒が混入されたビービー弾みたいなもんだ。雪の結晶の飾りはダイヤル式になってて、回せば毒の強さや成分が決められる。雪は頭がいいから、調整位できると思ってな。使い方は前持ってたダイヤル型の細身銃と同じだから。」

「デザインもあたし好みだし!センス最強じゃん!早速つけてみる!」

髪の毛をハーフアップにして、髪留めを付けた。

「どう?似合う?」

首を傾けながら、二人に聞く。美人なだけあって、その姿も様になっている。

「似合ってる。いつも綺麗な雪がもっと綺麗に見えるよ。」

「ほんっと、曇って人たらしなんだから♡流石優男!」

「そんなことないってば…。」

苦笑いで返事する曇に、雨は、曇の肩に手を置いてため息を吐いた。

「お前も大変だな。」

「全くです。」

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一寸空は闇 夜闇桴月 @Yoyami_F

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