第一章 曇のち晴
1.曇
「はじめまして。曇です。遠くからお越しいただきまして、誠に感謝いたします。」
「いえ、こちらこそこのような素敵な場を設営していただき有難うございます。」
「それでは、こちらにどうぞ。」
曇が今回の交渉相手を交渉専用会議室に連れて行く。
この部屋は大量の盗聴器やカメラが仕掛けられており、何か変なことをした途端機械が作動し、対象者をすぐに焼き尽くす。
「あっ、そうだった。こちらのバッジを付けてください。この先はこのバッジがないと入れません。この会社を出るまで肌身離さず持っていてください。」
小さな机の上に規則正しく並べられたバッジを指さす。
「これになにか機械などはついていますか?」
「いいえ、ただの判別コードがついているだけです。もし気になるなら、調べてみては?」
曇がそう言うと、相手側の社長が部下に指示し、機械で調べ始めた。
そんな機械で調べても何も出てくるはずがない。このバッジには、嘘発見器、盗聴器、心臓停止電流器がついているが、このバッジはインターポールでもわからなかった。
こんなおもちゃのような判定機で見つかるわけがない。
曇はこっそり鼻で嗤った。
「社長、何も見つかりませんでした。」
「ほう…。」
「これで証明できたでしょう?それでは行きましょう。」
曇は部屋に通す。
「早速ですが、あの契約について少し改変したいことがあります。宜しいでしょうか?」
「ああ、まぁ。」
「そうですね、まずは領地について。我々天闇は、日本全体とアメリカの一部を領地にしています。それで、そちら様の領地を約3割ほど共有していただけないかと。」
「はい!?3割もですか!?」
「はい。逆に言えば3割しかありません。イギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、アイルランド、オランダを領地にしていらっしゃるそちら側なら、ベルギー一つ程であれば痛手ではないかと思われますが。」
「…だが、ベルギーを無くせば、あの武器庫も無くなるというわけだろう?それは困る。」
「総て頂くわけではありません。ただ、共有を申し出ているのです。」
「共有?」
「そうです。ただ、天闇のヨーロッパに行く通過点が欲しいだけなのです。ですが、今回は共有です。ベルギーのアントワープを頂くだけ。残りは共有です。」
「アントワープか…。あそこは貿易に使うからあまり乗り気ではないんですがね。」
「ですが、オランダのロッテルダム港をお持ちなら、あまり必要ではないかと。」
「そうだなぁ。では、アントワープはそちらに譲ろう。残りの範囲は?」
「勿論、共有とさせていただきます。」
「わかった。」
「ありがとうございます。では、こちらにサインを。」
社長は文章にしっかり目を通すと、一番下にサインした。
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