星ノ木


青い花が咲いている。



心の内に咲く綺麗な青い薔薇。



嵐を耐え、砂をかぶり血を被っても枯れる

ことの無かった輝く花。




花の記憶に触れる、花の生きた道を歩き、





46億年、孤独の宙に一人浮かんでいた。


夢の中でもいつも見上げる宙、


声は聞こえるのに一度も話したこと無い

仲間達……、





私達は暗い闇の中で孤独に生まれる。

皆んなが闇に怯え

何も無いまま終わる事実に怯える。




遠くで聞こえる声と、小さな光は

気を狂わせないが

返って寂しさを呼び


より一層孤独にさせる。




だから私達は星を目指す。遥か遠くの

星ノ空を目指す。




孤独に怯える者、死に怯える者、

子の将来を案じる者…、


暗闇の中微かに見える光に夢を見て、

私達は生きている。





寂しかった、寂しかった。遠く離れた星に

声をかけても

孤独と恐怖は拭えなかった。


どれだけ孤独に怯えても

抜け出すことは出来なくて、

堪らず目を閉じて、私はずっと夢を見た。




夢の中にはこれから生まれるかもしれない

沢山の世界があって、


沢山の子供が私の生命の中で

生きていた。



子供達はどの世界でも私の夢を叶えるため、

空を見上げ星海を目指し星の光を

追いかけて行った。




最期はどれも終わりを迎えて、

それが堪らなく悲しくて…、





目が覚めた時、私は子を宿していた。


もちろん客人と思っていた

侵略者から身を守るためでもあるけれど、


それ以上に、子に湧いた愛着と

夢の終わりを受け入れられなかった

私の執着が人類を誕生させた。





人類あなた達は私によく似て、


死に怯え、生に怯え、苦しみながらも

懸命に走り生きていた。



とても弱く、一人では生きられない。

大きなものへ向かっていく時は

その小さな力を集めて立ち向かう。


そんな貴方達の性質は

私の孤独を嫌う気持ちが反映された遺伝

なのだろう。




救いの手を差し伸べられない私に

人類あなた達はよく付き合ってくれました。




何もしてあげられなくてごめんなさい。

地球わたし素敵良い星になれた

でしょうか?




私の声は一度も届くことなく、

貴方達の声も、ろくに聞いてあげることが

出来なかった。




本当に不出来な母でごめんなさい。





今更謝っても仕方ないのに、涙と謝罪が

ポロポロと出てきて…、





一人涙を流しながら静かな夜を過ごす。












「貴女はこれからどうするつもりですか?」



振り向くとそこには星の頭脳体である

一人の少女が立っていた。



彼女は星ノ記録体、星の出来事を記録し

私の内側で何が起きているか

伝えてくれる、


私の子であり、分身とも言える子。




「分からない、どうするべきなのか。」



「苦渋の決断の末、貴女の背中を押そうと

したのに、百年もそこにいてはシイナも

泣きますよ。」




そう、百年もここにいたのね……、



「夜って暗いのね、子供達はさぞかし不安に

なったでしょう。」



「私達に夕陽が沈む概念は無いですからね。

人間達は静かな夜には落ち着きを、

暗い夜には孤独を感じてましたよ。」




「そう…、」



「私も記録でしか知らないので…、

妹であれば違ったのでしょうけど。」





それから沈黙が続いて、

遠くに見える幾つもの星の輝きを眺めていた。







朝を迎え夜を迎え、

一日、一ヶ月、一年、何年も何十年も

何百年も

過ぎていって……、






……私は今もただ宙と星を眺ている。





「貴女も何時までもここにいなくて

いいのに。」



星ノ記録体は片時もこの場を離れようとせず、

私の傍で立ち尽くしている。




「それを言うなら三百年早く言うべきです、

貴女…、星の感覚で生きすぎです。

何のためにそんな人型の器を用意したん

ですか。」





「そうね、ごめんなさい。なら余計に

貴女を待たせてしまったでしょう。

こんなにかまけてないで

別の星にお邪魔してもいいでしょうに…、」



「貴女なら、私が生きてる間に

存命する選択を取れるでしょ?

太陽系の外くらい貴女の足なら容易く

行けるでしょう。」





「そうですね、ですが私に行きたい場所は無いので此処で星を詠み

貴女と共に熄えることにします。」



「此処にはもう記録するものが無いので

私も早くに死んでしまうかもしれませんが…」


















それから20億年、

言葉通り彼女は静かに息を引き取った。




私の体は20億年一切変化なく、

細胞は覚える機能をもう必要ないと

判断したらしい。





記録とそこに根付く記憶は

みるみる消えていき、

私もそこで意思を閉じた。











あぁいつか見たあの青い花……、


あの花が私に言った言葉………………

…………、、、



あ………れ、。…………は、……

……






あぁ、記憶が……、私が……、生命が…

熄える………。






真っ暗で…何も見えない……。


記録も……記憶も……、











最……、……………………に……。




なに………………。…………青…、美し




私……生き…………意味、宝…………

石………………、




しあ…………わ……、






私と言う意思は死んで

これからこの球体はその機能を停止するまで

回り続ける。





意識の無い体は

生きる術を身に付けるのか……、

太陽と共にその幕を閉じるのか、




この惑星ほしである地球わたしにも

分からない。




ただ星である私にも終わりはあって、

幸福を……、生を持ち世界生命の中で

宝石を見つけ、



ただ終わりを迎える。



ただそれだけの旅路……これはそういう物語。






これは星ノ木、生きた路、枝は分かれ木は

枯れて、長く太く…花を咲かせて

いつかを夢見て実をつける。



いつか終わりが来ようとも、それが

哀しく、悲しい物でも…、

花は美しく星は輝く。




これは星ノ木 生命の木、

地球の名を持つひとつの木。


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星ノ終 花水スミレ @sumire34si101096

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