第4話
己の居場所に帰ってきた一人の少女は、盛大に溜息をついた。
「お?帰ってきたのか。それでどうだった?一目惚れの彼、上手くいったのか?」
誰もいないにもかかわらず急に聞こえてきた声に驚くそぶりも見せず、少女は怒鳴り返した。
「どうもこうもあるものか!お主、嘘を
「やられたのか?」
「存分にな!くっ……お主を信じたのが馬鹿だったわ……。『俺はすぺしゃりすと』だのと言うから大人しくしていたというのに。訳の分からぬことをぬかすのも見逃していたというのに。どうせそこらからいい加減に聞きかじったことをさも偉そうに語っておったのだろう!妙な言葉にかぶれおって!」
「……はぁ。……だがお前は恋すら知らぬおぼこ娘。それがいきなり『どうしたらよいか』などと迫られれば力になりたいと思うのは当然であろう?取り急ぎ現代の『恋』について集めたものを教えただけの話。言葉遣いも最初より随分変わってなかなか様になっていたというのに……。お前には合わなんだか。
こういう言葉遣いも悪くないと思うんけどなぁ~。俺はなかなかに気に入った!」
「ふん……勝手にやっていろ。もうお主のことは信じぬ」
「それよりまた面白いの見つけたんだよ。ドラマも本も全部面白くて。いやぁ、すっかりはまってしまったな」
「知らん。今はかの者のことで十分だ」
「なんと冷たい……。親切心で言うがそのかの者、彼は……手ごわいぞ?あれはそう、鈍感男だ!すれ違いまくったり、ヒロインがやきもきしたりするのを見て楽しむジャンルの主人公だ!」
「何を訳の分からぬことを!邪魔をするな!」
そう言って少女は奥へ姿を消した。
「ふむ。まあ、俺は応援するよ。そういう楽しみを知ったからね。いやはや、なんとも面白いことになってきたな。彼は……キツネに化かされたとでも思っているのだろうなぁ……」
――
「はっくしゅん!……風邪かなぁ?それにしても、ああ、あのふさふさの尻尾……!なんてものを最後に見せるんだ!」
――
「一体、どうしたらよいのか……。名すら聞けなかった……」
――
「「はぁ……。また会いたい……」」
居眠り少女は何者なのか? 藤間伊織 @idks
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