第18話 結果発表~っ
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今月のF&M文庫――****.10
決定! 第二回F&M賞
229編の応募をいただいた第二回F&M(ファンタジー&ミステリー)賞
は、以下の六作品を最終候補作として選出しました。
「 占 術 師 」 神林大葉 (かんばやし おおは)
「 水 晶 の 柩 」 篠木陸 (ささき りく)
「 風にのせたメモリー 」 手塚美久 (てづか みく)
「 白 の 六 騎 士 」 堂本浩一 (どうもと こういち)
「僕はこの星で殺された」 新崎彩香 (にいさき あやか)
「 夢 幻 物 語 」 藤井恵津子(ふじい えつこ)
九月十五日、亜藤すずな、甲賀明日夫、桜井美優、杠葉純涼、蒲生克吉の各
氏による選考会が開かれました。その結果、以下の四作品を選出しました。
大賞
「 占 術 師 」 神林大葉(かんばやし おおは)
「僕はこの星で殺された」 新崎彩香(にいざき あやか)
佳作
「 水 晶 の 柩 」 篠木陸 (ささき りく)
「 白 の 六 騎 士 」 堂本浩一(どうもと こういち)
選考の詳しい模様については、十月十五日発売の月刊「アウスレーゼ」十一
月号に掲載します。また、受賞作四編については、当文庫から順次、刊行して
いく予定ですので、お楽しみに。
引き続き、第三回も募集しています。締め切りは****年の六月三十日。
楽しいお話、恐いお話、哀しいお話等など、自信作を待ってまーす!
F&M文庫 10月の強力ラインナップ
(以下略)
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おおー、すごい。ユキは、その文庫の挟み込みを見るなり、思った。思うだけでなく、口に出していたかもしれない。それだけ感心し、嬉しかった。まるで自分のことのように、頬が緩んでしまう。
「何をにやにやしているんだ」
横に立っていた堂本が言った。さっきからしきりに、きょろきょろと周りを見ている。
「嬉しいもんね」
文庫本を棚に戻しながら、無邪気に答えるユキ。
「自分のことみたいに喜んでいるな」
「だって、おごってくれるんでしょ?」
「あ、それか」
舌打ちまじりに堂本。全面的に書き直した「白の六騎士」を投稿する際に、入賞したら、アイディア料代わりにおごると約束したのだ。そのときは、入賞なんて考えていなかったので、気楽に応じたのだが。
「忘れてたの? ひどいなー。ね、佳作でも何かもらえるんでしょ?」
「大賞は百万。佳作は五十万」
「おおー」
「単位は、ペソかルーブル」
「……その冗談、面白くないよ」
ユキが指摘すると、がっくり肩を落とす堂本。
「だめだなあ。笑いのセンスが自分にはないのかもしれない。木川田に言われてから、暇さえあれば考えているんだが、どうもよくない」
「んー、私が言ったのは、そういうギャグじゃなくてだね、ユーモアの方。分かる? humorよ」
「発音、変だぞ」
やり返しておいてから、堂本は付け加える。
「で、実際にもらえるのは、半分の二十五万なんだ。電話連絡をもらったとき、教えられた」
「何で? 二作だから?」
「そうらしい。と言っても、大賞の方は何本出ようが、それぞれに百万だって。佳作は五十万を頭割り。そういう規則」
「怪しいなー。二回目でしょ、この賞? 都合のいい規則を作ってるんじゃないの?」
「賞金の話はやめ。心が貧しくなる」
「じじくさい言い方。……堂本クンは、賞金目当てじゃないんだから、それもしょうがないけど。そうそう、これでデビューできる訳? 本にはなるみたいだけど」
「一冊は確実に出る。だから、デビューは間違いない。でも、そのあと、注文があるかどうかは分からないなあ。去年の第一回の人を調べてみたんだ。大賞一人、佳作一人で、大賞の人は続けて書いているようだけど、佳作の人はデビュー作だけで、それっきり」
「むむ、微妙なとこ。――あ、印税とかも入るんでしょ?」
「そっちの話は、やめって言ったろ」
「たかってるんじゃないったら。仮にさ、すっごく売れて、作家で食べていけるようになったら、大学はどうすんの?」
「うーん」
そこまでは考えていなかったようで、堂本は黙り込んでしまった。棚には、数え切れないほどの本が並んでいる。目の前だけでなく、書店全体に。
「売れっこないさ」
毎日出版される書物のあまりの多さを考えたのか、悲観的に堂本は言った。
「売れたらの話だっての」
肘で相手の背をつつくユキ。
「大学に行きながら書くさ」
やや投げやりに、堂本は答える。
「それはとーぜん。受験勉強、うまくいくのかってことと、親が賛成してるのかってのを聞きたい」
「詮索好きだな、相変わらず」
かなわないという風に首を振る堂本。
「受験は心配していない。いざとなったら、一芸入試狙いかな。小説で公募の賞を取っているとなったら、合格させてくれるとこもあるだろ」
「そっか、その手があったか。羨ましい……」
「親はなあ、母さんの方はあんな感じだから、別にどうってことないはずなんだ。親父の方が分からない。趣味でやっている分には、口出ししてこなかったんだが……。作家を昔風の、やくざな商売だと思っているだろうな」
その様子を見て、ユキは口を挟んだ。
「ひょっとして、今度、佳作になったのも、言ってないとか?」
「当たり。母さんにだけ言って、口止めしてもらっている。もっとも、母さんは口が軽いから、直に伝わるだろうけどね」
「ふうん。まあ、大学に行けば、その間はごまかしが利くって」
「ごまかしね。当たらずとも遠からず」
と、苦笑する堂本。
「とにかく、選評を知りたいんだ、今は」
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