6:こっそり、ぴったり
●●●
「つ~ゆり~、帰りどっか寄ってこ~!」
「ひゃ」
帰り支度してる露璃に忍び寄って~、バックハグ!
「もう、びっくりさせないでよ……」
「えへへ~。ひゃ、だって。かわよ」
露璃が座ってる時じゃないと、身長的にこのポジ無理だから、あたし的には割とレアだし。ちょっとくらい、いいじゃんね。
てか、不満そうに言ってるくせに、取ってくれた手、引き離したりとかしないし。なんなら指絡めて引き寄せて、つないでくれるところもかわちぃ。好き。すべすべ。いい匂い。
「あれ……浦宗さんたちは?」
「あぁ、今日はなんか、みんな用事あるんだって~」
「そうなんだ」
るなちはダンス教室、さかなこはバイト、パンちゃんは注文してたお取り寄せスイーツが届くって、ウッキウキで即帰り。レポ待ってるぜ。
「だから、今日はヒマなわけ~」
「いつもは放課後、忙しい?」
ちょっとからかうみたいな言い方と、きれいなまつげを若干伏せがちに向けられた横目が近すぎて、ドキッとする。それ、もっとほしい。
「あはは~、いつもヒマだったわ。や、でも露璃と一緒にいるので忙しいよ!」
「ヒマな方がよかった?」
「え~! そんなわけないじゃん~!」
「ふふ、知ってる」
「時間あったら、露璃と一緒に使いたいからね。当たり前じゃんね」
「うん、ありがと」
やっぱなんか、あたしのテンション感見透かされてるかも。最近ノリよくなってきて嬉しいよ~。
「てかね、さかなこのバイト先、ダマで突撃しようかな~とかも思ったんだけど、どうせならそれ、みんなで行った方が面白そうな気してさ」
「そういうの、迷惑じゃないの……?」
「え~、売り上げには貢献するし、なんだかんだ平気だと思うんだけどな~。でもガチでキレられたら反省する~」
「いいんだ、それで……」
パンちゃんと一緒なら、いけると思うんだよね。さかなこ、パンちゃんには甘いから。
でもるなちと一緒だと、うざがられると思うんだよね。さかなこ、るなちには厳しいから。あ、いつメンだとプラマイゼロだったわ。
「ってことで、どっか寄り道して帰ろっ」
「うん。図書室寄ってからでもいい?」
「いいよ~。本読むの?」
「ううん。借りてた本、返してくるだけ」
「そっか。てかなんならあたし、図書室行ったことないかも」
「え、そうなの……? 本、あんまり読まない?」
「ん~、雑誌とか? あとは、アプリでマンガとかは読むけど」
ちょっと名残惜しいけど、覆い被せてた身体と首元に回してた腕をほどいて、露璃を解放してあげる。
代わりに、机の前に回って、今度は真正面からご対面。ん~、今日もビジュよ。
「そうなんだね。私は、紙の本の方が、ちゃんと読んだな~って気になるっていうのもあるんだけど」
「あ~、イチゴのフレーバーと本物のイチゴじゃ、食べた感じ全然別もんだもんね」
「え……ふふ、ちょっと違う気もするけど……うん、そんな感じ」
そういや、るなちたち以外の友達からは最近、水澄さんとそんな仲良かったっけ? とか言われてて。
仲良く見えてんなら嬉しいし、そこんとこどんどんアピっときたいよね。
「露璃は本好きだもんね。図書室、よく行くの?」
「うん、割と。図書館とかもたまに」
「あ~、ぽいぽい」
「本屋さんとか、古本屋さん回ったりするのも好きだけど、借りて済む本は、割と借りちゃうことが多いかな」
「あーね」
わかるわかる~、他にもお金使うとこあるもんね。服も、コスメも、お菓子も、ほしいものいっぱいあるよね~。
「てか、本似合うよね」
「そう?」
「なんかこう、レースのカーテンが揺れてる窓際とかでさ、オシャな木の椅子に座って、髪かき上げながら読んでる~みたいなイメージ」
「えぇ、そんなに優雅じゃないけど……揺花の中では、そういうイメージなんだ」
「そそ。清楚女子よ」
「じゃあ、イメージ壊しちゃってごめんね」
「えー、そんなことないって。あたしよりは清楚でしょ」
「かわいい方がいいよ」
「露璃もかわいいじゃん」
「……ありがと」
ふへ。何回言っても照れるじゃん。やっぱかわよ。あたしには、その清楚な恥じらいができないんだわ。
「ちな、何の本借りてたの?」
「えっとね、国語の教科書で扱われてた、昔の作家さんの本。他にどんなの書いてるんだろうって、気になって」
「え、そんなとこから興味持つとかあんの? すご」
「揺花も読んでみる?」
「ん~、なんかむずそうだからいいや。それよか、露璃が本読んでるとこ見たいかも」
「え、私を見るの? 本じゃなくて……?」
「そっ。あたしの知らない露璃観察~」
「えぇ、なにそれ」
「ダメ?」
「別にいいけど……それ、おもしろいの?」
「え、わかんないけど。露璃のことはずっと見てたいよ」
「それは……ありがとう」
「あ、てかそーしようよ! いいじゃん、予定変更~」
「え、どういうこと……?」
「今日は露璃のこと研究する日ってことでさ、露璃は普段通りな感じで、本読んでてよ。あたしは横でそれ見てるからさ」
「えっと、うん……じゃあ、揺花がそれでいいなら」
「オッケー! 決まりっ」
ま、いつも露璃のこと見てるっちゃ見てるし、シンプル一緒にいたいだけなんだけど。
そういうとこも、見透かしてくれてるのかな~。
◆◆◆
「やば、めっちゃ静か……!」
人のまばらな図書室内を、物珍しそうにきょろきょろと見渡す揺花の姿は、やっぱりなんだか賑やかで。
声をひそめているはずなのに、逆に目立つというか、なんだか無理矢理気味というか、落ち着かなさが漏れ出ているというか。
なんとなく、知らない場所に連れてこられた小動物みたいなかわいさまで感じてしまう。
「大声出さなかったら、普通に話しても大丈夫だよ」
「そ? でもさ、なんかそういう気分になるくない?」
「それはまぁ、わかるかも」
釣られて私も、ちょっと声のトーンを落としつつ。今日は私が、揺花の手をそっと引いてみたり。
「! ……へへ」
「……ふふ」
お互いになんとなく、目配せついでに、吐息が漏れる。
揺花のひそひそ声も、結構好きかも。
「ね、何読むとか、もう決まってるの?」
「うん。さっきの本の続き、気になってて」
「あーね」
「本棚そこだから、ちょっと待っててね」
「りょ~」
当番の図書委員さんに本を返却した後、同じ作家さんの本を借りてから、本棚の列を抜けて。
奥まった窓際の席に、二人で隣り合って座る。
「放課後って、なんか思ったより人いるんだね」
まだひそめたままの声が、私にちゃんと届くようにっていう配慮なのか。それとも単に、近くに寄り添いたいだけなのか。図書室内の様子を窺いながら、自然と肩を寄せてくる。
「そうだね。普通に読書してる人もいるし、あとは宿題とか、自習やってる人とかかな」
そんな揺花に、合わせるように。私もちょっとだけ、スカートを直すフリをして椅子の位置を近づける。
「はぇ~、なんか別世界の話だわ」
「宿題は、やった方がいいと思うけど」
「今日はないじゃん~」
「ふふ、そうだね」
「それよかほら、遠慮せず読んで読んで」
「う、うん……」
こんなに催促されて本を読むこと、なかなかないよね。しかも、隣で見守られながらとか……絵本の読み聞かせかな?
「あ、スマホダメだよね?」
「音とか出さなければ、大丈夫なんじゃない?」
「横顔撮ったりとか」
「それは恥ずかしいからダメ」
「へ~い」
何はともあれ、気を取り直して、借りたばかりの本の表紙をめくる。
「…………」
誰かのかすかな話し声。紙のかすれる音。それらをかき分けてペン先が走り抜ける、筆致の響き。時折廊下を行き交う足音に、折り重なった部活毎の喧噪……。
全部が遠くて、無音じゃないのに、静かな時間。それがただ、ゆっくりと過ぎていく。
本と向き合うと、そういう空気が、自分を包んでくれるような気分になる。
揺花と一緒なのに、そんな落ち着いた時間に浸ること、珍しいかも。
「…………」
揺花と付き合うまでは、割とこういう時間を、一人で過ごしてることが多かったはずなのに。
今はそれを、揺花と一緒に過ごせてるんだって思うと、なんだか不思議。だけど全然、嫌じゃない。
新しい自分。新しい、二人の時間。揺花は私に、新しい世界の色を見つけさせてくれる。
「…………っ」
それはそれとして。一つ問題があるというか……こうやって揺花のことを考えちゃって、本の内容に全然集中できてない。
ホント言うと、微妙に落ち着けてもいない。
頭の中も、文字を追う視線も、揺花に惹かれて、揺花のことばかりになってしまう。
だって、こんなにくっついて、こんなに近くに、ぬくもりがあるんだから……。
「……ていうか、ね」
「え、うん」
「退屈じゃない?」
「ぜ~んぜん」
隣に目をやるまでもなく。
机にへばりついて、枕にした両腕に柔らかそうな片頬を預けたまま、揺花はその無邪気な視線で、ずっとこちらを見上げてて。
流石に、視界の外には追いやれないくらい、私の意識を占有しているわけで……。
「あ、あたしいると、気ぃ散っちゃう?」
「えっと……そういうわけじゃ、ないんだけど……」
でも、あんまり凝視されると、やっぱりちょっと、気にはなっちゃうし。
揺花でも、というか、揺花だから、というか……。
「じゃあ~……このくらい離れてたらいい?」
ぱっと身体を起こした揺花は、身体一つ分、椅子をずらして。今度は背もたれにへばりつくような姿勢で、また私の観察モード。
「あ、別に離れなくても……」
「ん? 寂しい?」
「え……うん」
「えへ、あたしも~」
結局、元の距離まで椅子と本を引き寄せて。
本の内容には、無理矢理集中するしかないみたい。
「今、指ちょんってした?」
「たまたま、当たっただけ」
「へへ、ちょんちょ~ん」
「ん、もぅ……」
ページを開き直した時に、机の上で偶然出会った指先同士を、そのままなんとなく、絡ませて。流れるように、机の下で結び合って。肩も触れて。
「……ねぇ、これじゃ、読みづらいよ……」
「じゃあ、あたしがページめくったげる」
「一緒に読む?」
「え~、それはいい。難しい字わかんな~い。そのページ読み終わったら言ってね。あ、待って、察するわ」
「えぇ……いいけど……」
片手をつないで、身体を寄せ合った状態は、なんだか半身の二人羽織みたい。私の知ってる読書のスタイルと、だいぶ違う。
「そういや、メガネかけないんだね」
「うん。かける時もあるけど、黒板見る時とかだけかな、基本」
「そういやそっか」
なんだろう、この状況。ある意味新鮮だけど。
こんなこと、一人じゃしないし、できないし……。
「ん……ちゅっ」
「っ!」
どうにか本に意識を戻そうと思っていたところで不意に、しっとりとしたぬくもりが、頬に触れて。
「えへへ……露璃の横顔見てると、なんか、したくなっちゃった」
咄嗟に、間近ではにかむ、揺花の悪戯っぽくにやついた顔を凝視して。それから慌てて、周りの様子に目を配る。
ぱっと見た感じ、自分の手元に集中してる人ばかりだし、この席、位置的には結構本棚の陰になってるから、多分、見られてないと思うけど……。
「もぅ、急にするのはびっくりするからやめてって……」
「それがいいんじゃん~」
「むぅ……」
「あ、ごめん、ガチ? もうしないしないっ、リップもついてないよ、ほら、鏡見る?」
「距離の探り方、強引すぎだと思う」
あまりにも唐突だったとはいえ、半ば受け入れている自分も、どうかとは思うけど。
「じゃあ、していい?」
「確認、遅いよ……」
「ほっぺじゃん」
「どこでもだよ」
「え、どこにしてもいいの?」
「そういう話じゃないから」
「えへへ、ごめんごめん~」
「もぅ……」
明るいリップの色も相まって、甘いフルーツみたいに艶めく唇に、自然と視線は奪われて。
その合間から、細く囁く声色も、なんだか妙に熱っぽい。
「あ。ね」
「なに?」
「ちょっとさ……ほら、こうやって、本、立てて。隠れられるようにしてみて」
「どうして……?」
「ん~、本に隠れてこっそりキスチャレンジ! 的な? せっかくだしさ、してみよ? ね? してみたいっ」
「また、変なこと思いつくんだから……」
お互いの吐息が混ざり合うくらい、そんなにべったり詰め寄られたら……もう、キスしちゃってるのと変わらないよ……。
「いいでしょ~、ね、ねっ?」
「……もう、欲張りなんだから」
こういう使い方、よくないなとは思うけど……。言われた通り、開いた本を立てて、目隠しにして。
周囲の視線や気配も、一応確認して。
「声出しちゃ、ダメだよ……?」
「揺花こそ……」
そんなこと、頭ではわかっているはずなのに。
何故だか声を抑えようと思うほど、逆に、変な吐息がこぼれそうになる。
「んっ……」
「……んぅ……っ」
羞恥心と好奇心に急かされるまま。
立てた本の陰に潜り込むように、お互い顔を寄せ合って。
ついばむような、ほんの一瞬。唇同士が触れ合ったかどうかのところで、すぐに距離を取る。
「……はぁ」
「……へへ、成功かな、バレてないかな……?」
「知らない……」
「どうだった?」
「……違う意味で、ドキドキした」
「え、クセになっちゃう?」
「ならないっ」
「えへへっ」
流石に、気恥ずかしさで揺花の顔を直視できなくなって、本の中に逃げ込む勢いで視線を戻す。
図書室に来て、こんなに落ち着かないの、初めてだよ……。
「なんかさ、ちゅーする度に思うんだけど、わ~って、叫びたくなる感じになるんだよね。ならない?」
「私は……なんだろう、上手く、話せなくなっちゃう、かも」
「じゃあ、無理に言葉にしなくてもいいんじゃん?」
「……うん」
なんだかんだ言いつつ、こうやって揺花が手を差し伸べてくれることに期待しちゃってる、私もちゃんと共犯で。
その後のこういうやり取りまで、お互いの気持ちが重なっていたことを確かめるプロセスの一部。
「……嫌じゃなかった? 怒ったりとかしてない? てか今更だね、へへ」
「そんなこと……あるわけないよ。むしろ、ちょっと、楽しかった」
「おっ、もっかいやる?」
「やらないから……」
「えへへ」
一人で過ごすのが平気だったはずなのに。今では二人で過ごしたいって思ってる。
私の方から、素直にその気持ちを表すのは、相変わらず上手くできていないと思うけど……。
その溝を簡単に飛び越えてきてくれる揺花に、やっぱり甘えてしまいそう。
「とか言って~、ホントはしたいんでしょ~?」
「……したいけど、今はもうしない」
「え~、遠慮すんなよ~」
「もぅ、ダメだから……っ」
また悪戯な子猫みたいにすり寄ってくる揺花を引き離そうと、身体をよじったところで……。
「ん……?」
「っ!」
背後で誰かの足音がして。
二人でぴったりくっついたまま、揃ってびくりと、身体を震わせる。
それから恐る恐る、背後を窺うと……本棚と本棚の間の通路を、ちょうど誰かが、横切っていっただけみたい。
というか、冷静になってよく見てみれば、その通路側からは、全然、隠れられてなくて。
もしさっき、タイミングよく……あ、悪く、かな? 誰かがそこを通っていたら……普通に、いろいろ、見られちゃってたかも。
「やば、ウケる。こっちからだと丸見えだったじゃん」
「なんで楽しそうなの……心臓に悪いよ……」
「え、だいじょぶそ? 診察してあげよっか?」
「結構です」
「ちえ~。触診してみたいから、いつでも言ってね!」
「……前から思ってたけど……揺花って、こういうの、好きだよね」
「え、なに? 誰かに見られそうなシチュってこと?」
「……そういう感じ」
「んんー、どうだろ、別に狙ってるつもりないんだけどな~」
「え……」
天然でスリルを求めてるの……?
「その、変な遠慮とか、しないでいてくれるのは嬉しいんだけど……恥じらいまでなくなるのは、どうなのかなって思う」
「え、いや、恥ずいけどね。でもドキドキするのは好きっ。露璃も好きっ」
「私も……揺花のことは、好き。だけど、その恥ずかしいのに付き合わされる、私の身にもなってよね」
「でも、付き合ってくれるでしょ?」
「……時と場合によるよ。好きだからね」
「えっへへ。じゃあさ、部屋で二人っきりとかだったら?」
「それはまあ……別に、いいけど」
逆に、それはそれで、余計に恥ずかしくなっちゃいそうな気もして、ちょっと心配ではあるけれど……。
「てかそうだ、今度露璃んち遊びに行ってもいい? まだ行けてない! それか、うち来る?」
「あ……そうだね。うん、いいよ。でも、どっちも、がいいな」
「うんっ、もっちろん。その次は、うち来てよね。約束っ」
「うん、約束」
そうして、いつものとりとめのない会話を交わしている内、跳ね過ぎて調子を崩していた心音も、落ち着きを取り戻してきて。
少しだけ乱れた制服とスカートを整えつつ。椅子に座り直してから、改めて本を開こうと思ったところで。下校時刻を知らせるチャイムが響く。
結局、ほとんど本を読み進めることもなく。
けれど代わりに、また少し、揺花のことを読み解けたような気がする。
いろんな意味で、心臓の予備は、いくつあってもいいみたい……。
◆◆◆
「今日はさ、正門の方から帰らない?」
「え……? いいけど、どうして?」
校舎のエントランスから出たところで、少し先を歩いていた揺花が、短いスカートを翻しながらくるりと振り向いて。
「や~、最近はさ、渡り廊下んとこで待ち合わせしなくても、教室から一緒に帰ることのが普通になったじゃん?」
「そういえば……そうだね」
「だから、いいのかなって」
私の顔色をのぞき込むように向けられた、いつものその、頼もしくて、優しい笑顔が。戸惑いや躊躇いを溶かすように、夕焼けよりも眩しく照らしてくれる。
「あ、でもさ、秘密、いっこなくなっちゃうね。また別の秘密考えないとだね」
「そうなの?」
「そうそう。なんかね、秘密を共有すると、仲良くなれるんだって」
「へぇ……そうなんだ」
「ま、そうじゃなくても共有したいし、なりたいけどね」
「……うん、そうだね。私もそう思う」
揺花にそんな打算は似合わない。だけど、そういうことを考えたり、影響されたりして、実践しようとしてくれるところは、かわいいなって思う。
「てかさ、何か共有しなきゃって思ったけど、あたし、割となんでも話しちゃってるくない?」
「それは……揺花のいいところなんじゃない?」
「あっ、さっきのちゅーも、あたしたちだけの秘密だよね?」
「うん……そもそも、そういうことは普通、あんまり誰かに言ったりしないと思うけど」
「じゃあさ、てことはさ、ちゅーすればするほど仲良くなれるってこと!?」
「どういうこと……そうかも、だけど……」
「じゃあ秘密でちゅーするのは、もっといいってことか!」
「……ねえ、また、変なこと考えてるでしょ」
「え、全然変じゃないない、楽しいこと楽しいことっ!」
「……まあ、いいけどね」
私にはない、その思いつきや行動力が、揺花の素敵なところだし。
結局私も、また共犯になりたくなっちゃうんだろうな……。
「……ちょっと、楽しそうだし」
「えへへ、でしょ~」
また、どちらからともなく、手を取って。視線を交わして、はにかんで。
いつもとは少し違う、帰り道も。揺花と踏み出す足取りは、やっぱり軽い。
それだけで、新しい本の世界に触れるよりも、もっと。揺花との明日が、楽しみに思えるよ。
☆つづく!
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