第2話 悪の大幹部さまが三幕構成についてサクッと説明する

 ここは悪の組織ブラックサターンの秘密基地

 そこでは大幹部ブラック・プリンセス将軍……通称ブラックプリンが神妙な顔つきで立っていた。


「いかがいたしましたデビルプリン将軍」

 側近で機械人間のジャアークが訊いてみる。

「おお、ジャークか。実は今日は三幕構成について語ろうと思っているのだ」

「……と言いますと?」

 指揮官の唐突な言葉にジャアークは小首をかしげる。


「我々は物語の世界にいる、物語の多くは3幕構成で語られている、そこの理解を深めれば、ヒーローたちを倒せるに違いない!」

「さすがでございますデビルプリン将軍! さっそく部下どもを集めます」

 ジャークは表情は変わらなかったが金属の手で激しく拍手をした。


 数分後……急遽、大会議室に集められた戦闘員や怪人たちの前にブラックプリンが現れた。ざわめいていた室内が一斉に静になる。

「皆のもの。今日は対ヒーロー対策の一環として物語に重要な要素であ三幕構成について説明しようと思う」

 と言ったものの、三幕構成と言われても戦闘員たちはきょとんとしている、それはそうだ。

 ブラックプリンは、軽く咳払いをして説明を始めた。


「まず三幕構成というのは、脚本の構成のことだ。

 三幕構成は、ストーリーは3つの幕、第一幕、第二幕、第三幕、の3つの部分に別れている。


 第一幕は「設定」、第二幕は「対立・衝突」、第三幕は「解決」を描き、

 その割合は、大体 1:2:1 だ。

 

 第一幕と第二幕の終りにはターニングポイントというもがある。

 ターニングポイント、またはプロットポイントとも言うが、これは物語の流れが変わるきっかけだ、つまり物語の分岐点だ。

 なんかのアニメでヒロインが人間潰しちゃったりするとこだな」

「それ、ほんとにヒロインなのですか?」

 ぎょっとしたジャークが口を挟んだ。


「たとえば映画のDVDをタイムラインを表示しながら観てみると、なにかしらストーリーに新たな展開がある時……ターニングポイントは、そのくらいのあたりになっているぞ。韓国映画なんかは若干、一幕を長くしている感じがするな。しかも主人公を追い込むのが多いと思う。

 あと話がダレると感じる映画は、二幕のバランスが長すぎるものが多い気がする。

 サブプロットが詰め込みすぎとかいろいろあるんだが、そういうのはいずれ別の機会に語ろう」

 そう言ってブラックプリンは、咳払いした。


「各幕に語っていくと……


【設定】である第一幕 では、誰が、何をするストーリーであるのかを描く。

 主人公はどんな人物でどんな生活をしていて何を目的としているか、

 あるいはどんな問題を抱えているか、が語られる。


【(対立や衝突】を描く第二幕では、主人公が自らの目的を達成するために、その障害と、対立、衝突するのだ。

 そして第2幕の後半には、主人公が最大のピンチに陥るまでを描くわけだ。


【解決】を描く第三幕 は第二幕で描かれた目的の達成、問題が解決する」


 そう言い終わったと同時に、会議室のスクリーンに映像が映し出された。


「では、参考にひとつのパターンを語ろう。


【第一幕】

 あるところに普通の女の子がいた。

 彼女は普通の学生で特に熱中することもない生活をしていた。

 だがある時、偶然テレビでアイドルを目にした事でアイドルになる事を目指し始める。

 これが第一幕だ。

 そしてターニングポイントは偶然、アイドルを目にしたことだ。

『第一幕のターニングポイント→たまたまテレビでアイドルを観た事』


【第二幕】

 第二幕では、彼女はアイドルになる為に活動を始める。

 途中でライバルが現れたり、トラブルが起きたりする。

 あるとき大手プロダクションの主催するオーディションが開かれ、彼女はそれに参加する。

 だが最大の敵であるライバルに見事な歌唱力をみせつけられ、主人公は自信を失ってしまう。

 そしてついに彼女の順番が来る。

 その時彼女は覚悟を決めてステージに向かった。

『第二幕のターニングポイント→決意してステージに向かう』

 ここが第二幕のターニングポイントだ。


【第三幕】

 第三幕では、自信を失ってステージに立った彼女だったが、今までの経験から得たスキルで歌いきるのだ。

 そしてオーディションで優勝する。

 こうして主人公は目的を達成し、晴れてアイドルとしてデビューできるわけだ」


 映し出されていた映像にENDマークが出た。それと同時に拍手が起こる。


「よしよし、かわいい我が配下どもよ。次回はもっと具体的な例を出して説明してやろう」

「それは楽しみでございます、将軍」

「劇場版仮面ライダーで」

「それ敵です!」

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