おじいちゃんと丸ノ内線

第5話 池袋駅

　丸ノ内線は終点の池袋駅に到着する。

　するとＪＲの改札から、運休を知らせるアナウンスが聞こえてきたんだ。

『現在、山手線内回りは車両点検のため運転を休止しています。新宿方面にお急ぎの方は、埼京線をご利用下さい』

　それってなに？

　山手線は動いてないってこと？

　というか、内回りってなに？

「じゃあ、また丸ノ内線で帰るかの」

「えー」

　不満を漏らす弟。

　そして次第に駄々をこね始める。

「ほら、埼京線は動いてるって言ってるじゃん。ちょっと遠くなるけど副都心線も使えるから」

　全くこれだから鉄道マニアは。

　聞き慣れない路線ばかり挙げちゃって、乗りたい電車に誘導しようとしてるの見え見えだよ。

「それでも丸ノ内線に乗るって言うなら泣き叫んでやる。僕はホントは青い地下鉄に乗りたかったんだ！　ロマンスあふれる青い素敵なやつに！」

　はいはい、その願いはもう少し大きくなってから自分で叶えなさい。

「おじいちゃん。私、仙台堀をちゃんと見てみたい」

「おお、そうか。じゃったら御茶ノ水駅を出るとき、よーく車窓に注目しとるんじゃよ」

「そういえば、その近くのトンネルから災いが出てくるって噂を学校で聞いたんだけど」

「神田淡路町は江戸城の鬼門にあたる場所じゃからのう。トンネル内に要石や後戸があるかもしれん」

「えっ？　それなら僕も見てみたい！」

　なによ、その変様は。

　おじいちゃんと顔を合わせると、くすくすと笑いがこぼれ落ちたんだ。