第4話 後楽園駅
御茶ノ水駅を出発した丸ノ内線は、再び地上に出る。
武蔵野台地の端っこは川で削られてギザギザしていて、その部分から台地の外に飛び出したらしい。
すると車窓から、なんとも刺激的な風景が飛び込んできたんだ。ジェットコースターが観覧車の中心を走り抜けるという衝撃的な映像が。
思わず弟と私は車窓に釘付けになる。
「すごいっ!」
「何? あれ? 何なの、おじいちゃん!」
すると背後から、おじいちゃんの予想外の言葉が飛んできた。
「見ちゃいけん。あれは敵の基地じゃ」
敵の基地?
どう見たって遊園地なんですけど……。
それよりも驚いたのは、その時のおじいちゃんの険しい声。まるで窓から見える施設すべてを嫌悪するような刺々しさをまとっていた。
だから私たちは黙ってしまう。
ビルの合間をすり抜ける丸ノ内線の車窓からは、今度は白くて大きな風船のような建物が見えてきた。
「あの中に敵がおる」
「敵って何? おじいちゃん」
私は思い切って訊いてみる。
すると敵の驚きの正体が明かされたんだ。
「巨人じゃ」
きょ、巨人!?
あの中に巨人がいるの?
「十八・四四メートルの球宴じゃ」
「十八・四四メートル級!?」
それってヤバいじゃん。
だからあんな大きな建物の中に閉じ込めてるんだ。
「まさか、悪魔の民と呼ばれた民族があの中に?」
「そうじゃ。カワグーチ、エトー、オータケ……。我が愛する広島の民を、次々と巨人化させてきた施設じゃ。恐ろしいのう。最近ではマールが巨人になりおった」
「ええっ、マールが!?」
思わず変な声が出てしまった。
だってマールは、決して巨人にならないと思っていたから。
ショックに打ちひしがれていると、弟が追い打ちをかける。
「お姉ちゃん、それってアニメの巨人の話じゃないから。野球の巨人の話だから」
「えっ?」
そこで私は、はっと目が覚めた。
が、おじいちゃんはずっと白い巨大な施設を睨み続けている。五十メートルの高さを誇るドーム・トキオを。
「マールを返せ……」
言葉からにじみ出るおじいちゃんの感情は、なんだかアニメと似ているような気がしたんだ。
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