一年生の赤鬼
第十三話 赤鬼、入学する
「新入生代表!
「はい!」
国立天願学園の入学式。華やかな装飾が体育館を彩る。伊織は素晴らしい学校に入学できた喜びとは正反対のジトっとした目で新入生代表の五月雨時雨を見つめていた。
「本当なら俺があそこにいたのに...。」
ま、長ったらしい言葉を考えるよりはマシかもしれない。
なんとなく五月雨時雨を睨みつづけていると、新入生代表の言葉が終わった。
「校長先生からの言葉。」
すると校長が袖から出てきてマイクの前に立つ。
ギンッ!
「ッ...!」
すごい圧だ。目線だけで野生の獣と相対しているような、巨大樹の下に立っているかのような気分になる。
「...校長の
シーンとした空気。全員が前を見いて息をするのさえ遠慮しているように見える。
...すごい。この体育館全体が校長に支配されている。
「皆さんはここで異能師になるまでの全てを学びます。よく学び、よく励み、よく寝て、よく遊ぶこと。以上!」
...え?
「校長先生の言葉は常に五分より長い」
と言う世の中の法則が今破られたのか?
早い。校長の言葉にしては早すぎる。
新入生全員がポカンとしている中、入学式が終わった。てかよくよく考えたらあの校長俺の首席合格取り消した人じゃん。あんな人に文句言えねえよ...。
「...どうしたの?そんな重々しい雰囲気で...。」
「...ちょっと、な....。」
「...?」
隣の男子が心配して話しかけてくるが、テンション低い俺の前では無力なのである。はははは。
ー・ー・ー
教室に着いた。学校は見た目よりもだいぶ大きく、体育館から教室までかなり歩いた感覚だ。
「どーよどーよ?この制服!」
「アー、うん、かっこいいよ。」
生徒たちは興奮して自らの制服を見せ合っている。
制服カスタム申請。合格者100名の狭き門を潜った天願学園の生徒は、一人一人に制服カスタムの権利が与えられる。キャラメル色のブレザーにベージュの裏地、赤いネクタイの元の制服から自由にカスタムをしていい。制服の理想化はモチベーションアップにつながるのだ。
俺?もちろんカスタムした。堅苦しいのが苦手だから着やすいパーカー仕立てに。
みんなお互いに話す人を見つけて、友情を深めようと頑張っている。
「あ、なんかテンション戻ってる。僕は
先ほどの隣の男子―――蔵尾が話しかけてくる。長い前髪に丸メガネ。制服は和服風になっている。由緒ある家柄なのかな?
「
蔵尾とはなんだか馬が合った。何に憧れているか、とかどうして異能師になりたいのか、と言う話題で盛り上がる。ここ何ヶ月かは総務省のマンションで1人だったから何だか嬉しい。
「やっぱり受かってるわね。」
柔らかい女性の声。その声に俺は振り返らず答える。
「この声...。従姉妹のサブリミナル明美⁉︎」
「違うわ!」
赤鬼のスマッシュ 夜野やかん @ykn28
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