第6話 奴隷先

 その日の晩。


 孤児院の世話人であるユーリャが奴隷問題について薪ストーブの前で語った。薪ストーブの薪はパチパチと音を上げ、燃えていた。


 「そうさ。あんたたちは奴隷になるんだい。あんたたちは生まれたときからそういう運命だったのさ。自然の摂理さ。アーニャはは銀鉱山へ、ミーシャはキャベツ農園、エレノアは羊飼いのところへ行くことが決まっている」


 ユーリャはまばたきせず言った。否定は許すまいといった具合だった。


 「ふざけんな!絶対に奴隷にならない!」


 アルフレッドは言った。


 「スリばかりするあんたが奴隷以外のいったい何になれるって?」


 アルフレッドは唇を噛んだ。


 「オレは騎士になるんだって。そのほうがいいんだよ…」


 アルフレッドはたどたどしく言った。何か言い訳しているようにも聞こえた。


 「剣を持ったこともないあんたが、騎士になるって?バカバカしい限りだよ」


 ユーリャは吐き捨てるように言った。


 ミハイルは思った。


 ユーリャに対してどんなに奴隷になりたくないって言ったって無駄だろう。


 もうあきらめるしかなさそうだ。


 ミハイルは自分の運命を呪った。


 隣のエレノアはというと、心配そうにアルフレッドを眺めていた。


 すると突然、村の鐘が「カンカンカン」と鳴り響いた。


 「敵だぁぁぁ」

 「山賊共が食料を奪いにきたぞぉぉ」


 村の衛兵たちが叫んでいた。


 その時、アルフレッドは目を輝かせミハイルとエレノアを見た。


 アルフレッドには何か考えがあるようにミハイルは思った。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スリ少年、アルフレッド・バーガーズ 久石あまね @amane11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ