第5話 盗んだもの

 アルフレッドは叫んだ。


 「奴隷密売リストを盗んだんだ」


 「そうだ。お前はリストを見てどう思った?あぁ?」


 「リストにはオレやミーシャ、エレノアまで書かれていた。そうだ!オレたちは奴隷になり、もう何もかもめちゃくちゃになって、こき使われて死んでいくんだぁ!」


 アルフレッドは気が狂ったように言った。アルフレッドさ気が狂っていたから笑っていたのだ。


 冷静だったミハイルもこのときばかりは動揺した。エレノアは膝を抱えてうずくまった。


 ぼくたち三人は離れ離れになるんだ。


 ミハイルはそう冷静に受け止めた。


 エレノアとももうお別れだ。


 この北の帝国ではよく少年、少女が奴隷になって売られる。


 この国では誰にでもあることだが、いざ自分たちの立場になると、心が張り裂けそうだ。


 ミハイルは冷静な自分と、動揺している自分。ふたりの自分が心の中でせめぎ合い格闘していた。

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