最終話 魔境での日々
エクルド王国と魔境を巻き込んだ戦いは終焉を迎えた。
タイラス第二王子はレオン第一王子によって捕らえられ、今後の処遇はエクルドとの話し合いを持って決定するという。王家の人間とはいえ、現国王になんの話もなくいきなり侵略行為を働いた罪は相当重いだろう。
そんな彼の悪事をぶちまけたのは――なんと聖女カタリナであった。
彼女はノイアー神父らの説得により、正しく人々を導くために必要なことを理解し、さらに自分がタイラス王子に騙されていたという事実を知ってすべてを打ち明けてくれたのだ。
――まあ、そっち方面の話は専門家にお任せするとしよう。
俺は俺でようやく訪れた平穏な日々を楽しみつつ、魔境村をさらに大きくしていかなければならない。ようは多忙の身ってことだ。
「うぅーん……今日もいい天気だ」
侵略戦争終結から一週間後。
あの頃がまるで悪い夢だったかのように、今日も爽やかな朝となった。
屋敷の前で体を伸ばしていると、そこへイベーラたちダンジョン探索組がやってくる。
「やあ、おはよう」
「おはようございます、エルカさん」
「これからダンジョン?」
「えぇ。昨日、とても良い場所を発見したのでそこを中心に魔鉱石の採掘に着手しようかと思っています」
「そいつは楽しみだ」
イベーラたちを見送ったあとは村の様子をチェックしていく。
今日もあちらこちらで活気ある声が飛び交い、人々が忙しなく働いている。
先日の侵略戦争のあと、エクルド側の商人たちがこの魔境へと移住し、今後はここを中心に商売をしていくと言ってくれた。
とはいえ、まだまだ村として機能しきるには時間を要する。
やるべきことは山ほどあるからな。
「おはようございます、エルカ様」
村を見て回っているとリリアンがやってくる。
すっかりこの村の自警団が板についてきた――というより、ほとんどマスコット的な可愛がられ方をしているな。
「今日も元気だな、リリアン」
「周りのみなさんが元気ですからね。ついつい乗せられてしまいます」
「ははは、それは確かにあるな」
なんでもない会話で盛り上がりつつ、さらに村を歩いていく。
そのうち、いろんな人たちが声をかけてくれて、それぞれがこれから取り組んでいく内容を教えてくれた。
彼らがこうして精力的に動いてくれているおかげで、魔境村は成長していける。
それに、新しい仲間も加わった。
「来たか、エルカ」
「やあ、アル」
この魔境に住み、かつては人々にとって脅威とされていたヌシたちだ。
もともと人間に対して好意的だったアルに加えて、パーディやゾウィルといったこれまで人間とかかわりを持ってこなかったヌシたちも、あの戦いを通じて魔境に暮らす人々と心を通わせ始めていた。
今ではこうして普通に村で過ごしていてもそれが当たり前の光景になっている。
「今日は何をするんだ?」
「とりあえず、エクルドの商人さんたちと打ち合わせかな。それが終わり次第、魔境探索に出ようかと」
「旅の準備は整っています!」
リリアンが指さす先にはテントなどの荷物を積み込んだ馬車があった。さすがというべきか、用意が早いな。
「さて……それじゃあ、今日も頑張るか」
息を吐き、気持ちも新たに今日も魔境の開拓に挑む。
いつか、この村を世界一の村にできるその日まで。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~ 鈴木竜一 @ddd777
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