1日目の終わり

 その後無事にガイアの町にたどり着いた後、俺たちは別れることになった。


 マリーは当初ガイアの町に勇者などいるわけがないと笑っていたが、レンが伝説の治癒魔法の使い手と分かると当分の間パーティを組み、勇者らしきものを共に探すと言っていた。

 レンは魔法使いとして適性のある一族の出身らしく、魔王が現れた際に治癒魔法が使えるようになったらしい。

 そのため一族のばあさんの予言を聞いて勇者と共に魔王を倒すよう言われたのだとか。


「カケル、なんで自分が勇者だと言わなかったペカ?」


 南口を出てカシズの実があるという森を目指している途中、不思議そうにスーが俺に尋ねる。


「そりゃあ信じてもらえないからな。襲われているところを助けて俺が勇者です!ってなれば話は別だが、レンからしてみればマリーのほうがよっぽど勇者に見えてるんじゃねえか」


「でも仲間になることは出来たんじゃないペカ?」


「それも無理だろう。そもそもレンには俺と組むメリットがない。しかも異性だ。レンくらいの年頃なら警戒くらいしてもおかしくない。仲間になるよって言っても断られるのが落ちだ」


「そういうものペカか・・・・。じゃあカケルは一人で魔王を倒しに行くペカ?」


「いや、レンは仲間にする。聞けば治癒魔法とやらはレンしか使えないみたいだし、死んじまうリスクを考えたらレンは絶対にいる」


 そもそも不安定なスキルなんだ。仲間はいたほうが色々と安定するだろう。


「その冷静さがあってなんで元の世界で養分パチンカスだったか不思議ペカ」


「お前は絶対俺に嫌味を言わないといけない決まりでもあんのか」


 その後しばらく歩くと森が見えてきた。確かに実のようなものがなっている。

 俺は木登りなんかしたことがないし、手の届く距離に実がなっていなかったため木を蹴って落ちてくる実を拾う。

 カシズの実はりんごくらいの大きさだったため、そんなには持てなかったが俺とスーで10個ほど拾って町へ帰った。




 ギルドに着くと昼くらいに出発したのにもう日の落ちそうな時間になっていた。

 ジンも心配しているかもしれないな。

 中に入ると結構な数の冒険者たちが飯を食ったり、酒を飲んだりしている。


「おーいカケル。心配したぞ。」


 カウンターにいるジンが俺たちに気づき話しかけてきた。


「すいませんジンさん遅くなりました」


「道に迷ってしまったペカ」


「君がマリーの言ってた弟さんか。いやーそれにしても何もなくて安心したぜ」


 どうやら俺たちのことはマリーが話してくれていたようだ。

 俺たちはジンに実を渡して銀貨を1000枚受け取る。

 なんだかコインが1000枚あるって考えるだけで2万円もらった感覚だ。


「おし、じゃあしっかり銀貨1000枚渡したぞ。こんなことはこれっきりだからな」


「はい。ありがとうございました」


「それでお前これからどうするんだ?」


 ジンが俺に真面目な顔をして聞いてきた。

 冒険者になって金を稼ぎつつ、レンと仲間になって魔王討伐って流れが理想的なんだが如何せん俺の強さがランダムであるところが痛い。


「俺にやれそうな依頼ってのはやっぱりなさそうですか?」


「うーん、それはなんとも言えねえな。とりあえず冒険者で稼いでいくつもりなら明日は朝1番で来ることだ。それならお前がやれそうな依頼もあるかもしれねえ」


「わかりました。色々とありがとうございます。それと泊まれる宿とか知りませんか?また路上で寝るわけにもいかないので」


「それならギルドを出て右手にいくと宿屋がある。1泊銀貨800枚だ」


 銀貨800枚か。今日は飯食えねえなあ。

 こんなことになるくらいなら元の世界で昼飯食っときゃよかったぜ。


「カケル、何か食べるペカ。お腹が減って倒れそうペカ」


 ジンに礼を言いギルドを出ようとするとスーが腹をさすりながらそう言った。

 てか説明書とか言ってた割にお前飯食うのかよ。


「今日はダメだ。飯なんか食べると宿代がなくなっちまうだろ」


「銀貨200枚余ってるペカ。それで何か食べるペカ」


「食べるって200枚で何を食うんだ?あのメニュー表を見てみろ。一番安くて銀貨300枚いるんだぞ」


 俺はギルドに併設されている酒場のメニュー表を指さしてそう言った。


「うー貧乏はつらいペカねえ」


 結局俺たちは何も食わずにジンから教えてもらった宿屋に向かった。



 ジンに教えてもらった宿屋についた俺たちは一番安い部屋を借りた。

 ベッドも1つしかないし6畳ほどしかないが野宿をするよりましだ。


「今日は疲れたペカ。お腹もすくしさっさと寝るペカ」


 そういって部屋に入るなりスーはベッドに横になる。

 俺はすぐにスーを抱えてベッドから下した。


「な、なにするペカ!?」


「ベッドは俺のもんだ。お前は説明書なんだから実体化とけよ」


「無理ペカ。一回実体化するとカケルが元の世界に帰るまでは元には戻れないペカ」


「はあ?そういうことは初めに言えっての!それじゃあ食費も何も二人分かかるじゃねえか!」


 その後スーとしばらくベッド争奪戦をしたがスーが児童虐待だとかなんとか騒ぎ出したので仕方なくベッドはスーに譲ることにした。


 ベッドに入るとよっぽど疲れていたのだろうスーは秒で寝息を立て始めた。

 俺は地べたに寝転がり明日のことを考える。


 やることは2つ。

 1つ目はレンを仲間にすること。2つ目は金を稼ぐことだ。


 できれば1つ目を早めに達成したい。レンと仲間になれば受注できる依頼も増えるだろうしそうなれば自然と2つ目の課題も達成できる。

 ただ問題があるとすればレンに勇者だと思われるようにするにはどうしても運ゲーのスキルに頼らなければならないことだ。

 早めにいいフラグが引けるといいんだが・・・


 2つ目についても運ゲーか。とりあえず明日受注できる依頼があればいいが。

 そのためにも明日は早起きしないといけないな。


 俺はそこで考えるのをやめて眠りについた。

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運ゲースキル【スロット】を手にしたパチンカスの俺が魔王を倒すまで~神様だってサイコロくらい振る!~ かがみてん @shichiya

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