シロナガスクジラのこえ

イタチ

第1話

夜のしじまは、どこまでも波に揺られ

私の存在意義は、その砂の数ほども

もろく崩れ絶対的な意志など存在できない

私は、灯台の明かりが、

ボェーと夜を、回している姿を見ながら

一人、砂の数を数え始めた


「ナガイクジラノこえ」



私の住んでいる島は、実にせまっくるしく

其れを世てきには、猫の額とでも言うのだろうが

どちらにしても、直ぐに何かにぶつかる

都会は直ぐにコンビニにぶつかると言うが

だとしたら、私の島は、その一角を、抜粋すれば

その区画だけで、都会の何でもある一角が、再現できるのでは無かろうか

もちろん、超巨大な施設はないが

その代わりに、プールは、眼前に広がる

人をいく人も殺してきたと思われる

潮の流れの超絶早い海が、どこまでも、雲を境に、広がり、唯一流れの緩い砂浜で、その流れを見つめれば

私は空に沈んでいったとしても、気がつかないこともあるのかもしれない

そのほかに、島の中心部を盛り上げた山は

都会の超高層ビルよりも高いかもしれないが

どちらにしても、火山岩で、ごろごろしたその岩肌は

大根下ろしのように

転べば、皮膚を、そぎ落としてしまうだろう

この小さな島に、医者や歯医者、八百屋、個人スーパー

その縮図は、余り、都会と変わらないのかもしれない

しょせんは、人工密度の問題であり

其れが、歩いて五分か

自転車で三十分の違いなだけである



午後の何もない

くそ田舎のどうしようもなく低レベルな授業を聞きながら

私は窓辺で良く枯れずに何年も居座るサボテンの球体とその下の分裂した球体を、眺めながら

ぼんやりと視界の端を、青と水色と何かにごった白の方向へと、向け

「つまり、私はそのとき空爆をみたのです

真っ赤に輝いた光は、打ち上げ花火とは違い

私の居る後方に、下がって来ており

空襲警報が、その音を邪魔するように・・・」

授業の朗読を、聞いていた

「ポカッーン」

私の頭上に、小気味の良い破裂音がこだまし

私の、逃避に、カミガタの丸められた円柱状の炸裂弾が、

私の短く刈った、髪の毛を、弾かせて、弾頭した

私の頭の被害 甚大であり

眼下の光景が、垂直よりも一瞬三十度降下し

直ぐに、垂直に戻るも

そのときには、一度暗転した視界は、瞑目しがたき明るさにさいなまれ、そのときになり、教師の鬼山が

眼鏡の奥を、とがらせ

日焼けした野暮ったい顔が、私を、敵兵のような表情で、捕虜と認識したのだろうか

見下すように、見下ろしていた

「加藤君 立っていなさい」

この島の生徒の人数は、3人

実に、有意義な教師の使い方である

私だったら、こんな物はすぐさま廃止して

仕事でもさせた方が、よほどプロ意識が芽生えることだろう

人間の生物的要領の無駄使いにおもえてならない

どちらにしても、こんな物は、一等すごい教えるのがうまい人間が、テレビ電話か何かで、全生徒に、教えてしまえば、いくらか、生徒の方に、お金としてのリターンは、還元されるだろう

これも少子化の要因に違いない

廊下は、蒸し暑く

エアコンの姿を見回しても確認すること願わず

ただ、古ぼけた、木の床

老化した、その全貌は

以前のにぎやかさだけが伺い知れ

そのほとんどの教室

一つをのぞき

物置として、学校の用具以外には

祭りの出し物の御輿やら

漁師の網が整頓されていて

混沌としていることこの上ない

ぼんやりと天井から垂れ下がるように浮かぶまん丸の時計は

後三十分で、午後十二時

もしくは、午前十一時59分程を指している

うだるような暑さ

窓は、金網越しに

海風を、押しつけ

これがいわゆる

児童廊下放置と言う事例なのだろうか

私は、めを、廊下から、教室に変えたが

いつもと対して変わらない

混沌とした教室内

一年三年六年

と言う

私を含めた三人

それに教師が一人

国語の授業は、いつも朗読を、前半に行い

ある時は、地獄絵図 ある時は、熊のプーさんなど

私の脳内は、花畑で休んでいると

どこからか、賽の河原で石詰みを、している

子供の声が聞こえてくるほどのカオスと化していた

今は夏のせいだろう

教師の脳内に

体験もしていない戦争の空襲が、到来し

まるで夏の風物詩のように

図書館から、埃のかぶった本を、

著作権侵害も、知らない馬鹿なのか

それとも教師の権力が、法律を越えているとでも勘違いしているのだろうが

職員室でコピーして配布している

図書館のはだしのゲンは

いつも、同じかんがなくなっており

そのたびに私のゲンの認識は、停止していた

私は、思考を、ぐるぐると、かき回しながら

時計をにらんでいる

戦争の本は、図書館に、散列しており

その居所は、おおよそに分けて、歴史

民話の二大吹き溜まりを見いだすことが出来る

そのほかにも、物語自体が、其れを有したフィクションや

其れこそ、戦争は戦争でもドラゴンやエルフが、登場するような

ファンタジー色強い

疑似戦争物も、存在している

ただ、其れも絶対数は、まばらであり

其れこそ四散しているといわらざる終えず

結局は、少数派の

たまたま発見している程度なのである

しかし、それに比べ、歴史は、そこにかっこある現実として存在しており

消えていった軍事の図鑑などとは違い

断片ながらも

その存在を、少々示唆している

私は、廊下にいながら

図書館のほんの場所を、空想する

時計を向きながらも

その行方は、

廊下から見える部屋の三番目を、間借り

図書室と書かれた

部屋の扉を開け

一室だけ絨毯が引かれ

その赤い部屋に、上履きで進入していた

図書室の本は、少々有り

こんな離れ小島にも関わらず

田舎の小学校程度には

人数とは関わらず存在している

教室よりも少しばかり大きな部屋

そこの前壁には、天井付近まで続く本棚が設置されており

あと五十センチほどで

耐震構造になりそうであった

そのほんの無いような

先ほど言ったとおり

田舎の小学校ほどあり

絵本 フィクション 自伝 歴史 図鑑

其れ其れが

大人十人ほどの体重を、優に越える程の質量を、有して

並べられている

このくそ田舎の離れ小島の

断崖の絶壁ではないが

一歩嵐になれば、自然に、クローズドサークル

な、この島と同じような

内容の本も、少なくとも三冊はある

その程度の図書室なのだ

もちろん司書も図書委員会も

何ならこの島に本屋もないが

それでも、くそ田舎と同等の本が、貯蔵されている

其れは、私にとって、唯一の自慢でもあり救いだ

なぜなら、いつこのしまがなくなっても

悠々と、そして誰もいなくなったと言えるし

だいたい、舞台的には、コーラを片手に冷房の利いた部屋で、ゴジラを見るほどに不敬で、不遜な遊びができる

つまりは、こんな非効率的な機械的ではないこの島において

この場所は、腐さった脳味噌とも言えるし

麻薬じみた魔境ともとれた

そんな場所で、私は、はだしのゲンの一かんめを、手に取ったとき

空中を、ヒュンと、かなきり音を上げ

私の方に何かが落ちた

「給食だ、手を洗ってきなさい」

私は、渋々、本棚に、本を置くと

廊下に飛び出したチビどもに続き

廊下に設置された

無駄に数の多い水道に、手を入れた

給食と言っても、お弁当であり

私は、教室の廊下の壁に置かれた

120センチ水槽に、泳ぐ

一匹の赤と白のふとい欄虫を、ながめながら、卵焼きを、ほおばる

教師は、自分の席で、白と赤の

惨劇でしんだ血みどろに大量の蛆が清掃活動をしているような、シンプルな物であり

江戸時代でも、そこに、漬け物ぐらいついたのではないかと思われる

日の丸弁当を横に

その前、二つの机を、一つに会わせ

向かい合うように

子供が、今期の大統領の無能さを、語り

其れと同列に、アクションヒーローの監督の示唆することを思い悩ませている

其れを横目に

砂利をつつく

ライトに照らされた

欄虫は、見たこともなく大きく

三十センチは、優に、越えているだろう

その横のバケツは、掃除道具入れに入っているような

ブリキの鉄色のバケツではなく

青くそしてでかい物が、三杯、水槽の台の横

黒い足に沿わせるように、壁がわに並び

台の中には、輿電と書かれてしわくちゃになった

大袋の錦鯉でもあげるのかというような

見たことはないが、養殖用の餌袋みたいな物が

三袋収まり

ガラス戸に、ないふうされている

そのほかにも、薬瓶が、数本並び

この教師が、嫁の代わりに、数少ない

引っ越し道具とともに

この島に、ついてきた、御仁の一つである

名前があるのかどうかはしらないが

海の真ん前で、狭いかどうかはしらないが

大きな水槽で、ひとがよる度に、よちよちと

歩くように、やってくる姿は

小動物にも似ている

「では、一時頃には戻るように」

お弁当箱を、元の布で包み縛ると

手を合わせて、教師はそういう

教室を出ていった扉を、後に

「ピンクは、不要だ、いや人間である必要性さえない」

と、熱弁を振るう低学年の声を聞きながら

麦茶を流し込む

時計は、壊れており

教卓の上に、大きな

教師が、注文した

運動会でも使うような

パタパタと日めくりのように回る

めまぐるしく

なおかつ威圧的な単二電池五本の時計が

地響きを立て

うるさく、動いていた


時刻のすぎるのは異様に遅く

また、ふとすれば、無意味に、違いない

私は、数字が、紙の中で、死んでいくのを見ながら

欄虫の腹を眺めていた

数式の文字列は、まるで、無意味な、算段に、言葉を与えしゃべらせているようで、聞くに耐えない

世の中が、数字で成り立っているのか

それとも、世の中の物を、言葉足らずに無理矢理

ねじ込んだのが数式なのか

教科書の無駄なカラーページを、深くおりながら

横目に、其れを見るが

太った男のような揺れる腹に、目を戻すと

数式は、依然として、同じ形態を、ノートに記している

金魚も、数式も興味はない

あるのは、机の中の得もしれぬ

紙の駄作のみである

黒板には、二つの線が、

長細い体を、さんぶんかつに

電柱のように、空を横断しており

そこには、それぞれの数式

緑色の黒板の中

白く汚している

「であるからにして、一+一は、二なのであります」

実に下らないことを言っている

一+一が、二なのは分かる

しかし、世の中、数という絶対数を、しれば知るほど

それに依存し、安心感を妄想するのでは無かろうか

水槽内の欄虫も

まさか、今日から餌が与えられないと言われたからと言って、何か、養殖を始めるとも思えない

私の脳内に、十以上のよく分からない

新しい別の次元を示唆する

第十一番目の文字が、姿を現したとき

時限が終わった

宿題を、片手に、教室を出る

水槽では、赤い金魚が、こちらに手を振っている

実に欲張りな奴である

きっと将来は、現代病の肥満で、水槽の底の方で、手を振りながら生きることになるだろう


私は、、舗装されていない校舎のグラウンド突っ切ると

そのまま長い坂道を、下る

この道は舗装されており

こわれかけのアスファルトが

端の方を、崩しながら

下の方向に続いている

どこまでも森に囲まれたような、道を下るが、学校しかないこのみちに、車の排気ガスが、撒かれることはまれであろう

学校のグラウンドであっても

草はまばらに生え

その実益

その広大な平面図は

ヘリによる着陸を想定されたもので

今のところ一度も

ヘリの中でしんだものはいないと言うが

ここが使われたこと自体

同じく無いだろう

空はいつものように、曇り

辺りはさえぎるものがないせいか

雲の流れも素通りする

らしく、実に早い

山にぶつかったものは少数派であり

ほとんどが、見向きもせず

我々に、きりもみせずどこかへと流れていく

それでも、ぶつかれば、其れは、濃霧となり

町を浸食する

町もないが

どちらにしても、山を登れば、その残り香のように

きりを見ることも可能であり

雲が山を覆っているときに

上れば、ミストが、体を包むことは請け合いである

坂道を、下り終えれば、

そこは、猫が、大王とでも言うように

堂々と歩き

逃げもせず図々しいこと計り知れない

熱帯のような動植物が、コンクリートの道を挟み

壁の上に姿を現し

時折

何を、絶滅に追い込もうと画策しているのか

猫の残映が、道路から消えたり出たりしている

極悪猫である

きっと、世界を、恐怖のズンドコに、陥れる日も

近いに違いない

なぜなら、海外の悪い人間のそばでは、

いつも猫が、牛耳っているのが、洋画からは、簡単に、見て取れるのは、日本人の周知の事実であり

揺らぎようもない恐ろしい事実なのだ

猫による怪奇な作戦の一端を、後目に足を進めれば

森とは反対側には、荒れ狂うこともなく

コンクリートの港を、徐々に、消し去り

人間滅亡を、策略する波が、打ち寄せている

そのちゃぷりちゃぷりと

這い寄るような音を聞きながら

黒いランドセルと

赤く熱しながら

帰宅を開始し続ける

ランドセルから出した本は、ずっしりと重く

桃のような重さを、たたえ

とても帰宅中に

歩きながら読めるような代物ではないことを

におわせている

自宅までは、後五百メートルほどだが

私の日月がっぽの鈍足を

牛歩などを、素知らぬ早さで

顔をぐるぐる巻きに撒いた

下級生が、バイクにでも乗ったような早さで

かけていく

私は、本に目を、伏せながら

ひだるような

ひりついた太陽光が、切れ間から流れ込んでいる

屋外の中

灰色の冷気を、欲しながら

じりじりと熱しられた不道徳なアスファルトの地面を

踏みつけて貶している


家の中は、多少涼しく

いじるような暑さが、屋根を介して

蒸し暑く暗い室内を、流れている

冷蔵庫を開け

細長い茶色い液体の入った円柱状の

容器から麦茶を、接種すると

一時のみであったが

体内に、冷水が、流れ込み

体温の減少を、有していたこと間違いないが

それでも、其れはほんの一時の間違いであり

過ちは、繰り返される

そして人は、この黒い液体に、体内を支配され

気がついたときには、冷蔵庫の前で、口から黒い液体を吐き出しながら

暑さに、茹だり溺死しているに違いない

其れ程までに、体の温度は、変温動物の機能を、実直に遂行したいらしくすぐさまに、元の温度へと戻ろうと移行する

私はそのたびに、数度、冷蔵庫を、開き

青白いチェレンコフ光にも似た光景を、広げながら

その中から、円柱を、取り出して

また接種を、繰り返す

体内に、二三度取り込んだ後

今に戻り

薄暗い中

本を開く

ぐるぐると

数えることもはばかられる

扇風機が

一秒かんに小で600程度

回転している

私は、うすぐらやみの中

いやよいやよと

同じ方向に、振っては戻ってくる

無機質に変化させられた

元生物のなれの果てを、鑑賞しながら

さらに薄暗く

読みづらい紙のページに、目を、走らせる

それは、端から見れば、接吻のようにも

また、目を血走らせたキョウジンにも似た

変態的行為の倒錯にも思えたが

しかし、文明の光は、電気代と自然破壊により

私に、無価値な文字列を、羅列し

無感情にハッピーにらりさせている

外は、いつの間にか、疲れ果てた

豆電球のように、ぼんやりと空の向こうで吐血しながら青い海を、赤く染めている

空は、薄く、血しぶきがあがり

太陽の死に様と

明日くる復活に対する生け贄のように

その頬を、黒く予感させながら

赤く染めている

庭先では、白い犬が、寂れた、城下町の用兵のように

私に近づき、よれよれの舌で餌をくれと

ろれつの回らない、戯言を、白い涎と共に、地面を黒く吐いていた

私は、腐らないと噂の

銀色の盥に、水を張り

軒下に置くと

給料を、与えられ

はしゃぐように、飛びついた犬は

其れを、文字通り浴びるように

頭からつっこみ

口を動かす

その光景は、涎に飲み込まれた

哀れな犬のようにも見えたがしかし

その逆であるという説も譲れないようにおも思われた

私は、縁側から、避難し

扇風機が、暑い空気を、

目先三ずんほどだけ

わずかに、温度を、二三度下げている

真下に陣取ると

その栄光を、称えながら

その下で、ページを、めくられた本を、持ち

最近その存在を、電気書籍に奪われるにいざ知らず

物質的

肉体的な現実的存在まで消失し

今では、生産されていない

古き書物に

その証を見ることのできる

紐のしおりを

紙から、すくい上げると

文字を追う

文字列の林に迷ったときには

其れが、竹藪なのか森林なのか

それとも、地下なのかも分からず

山の中を迷うことになる

其れが、コンクリートに埋め込まれた

赤い線の走る

灰色の町なのか

水脈を、たたれたあわれない田舎町なのか

骨と皮で、死んだことにも気づかない

今現状の日本なのかは知らないが

どちらにしても、色々なところのキョウジンの文字にふれられていることは、まごうことなき事実

其れは、朱に染まれば、赤くなるように

麻に混じれば、植物も、上を向かなければならないように

物事の根底は・・・

私の聴覚に、玄関の引き戸があく音がした

薄ぼんやりとした部屋を出ると

薄白いスーパーの袋の中に

これでもかと拷問めいた詰め込まれた食材は、

ウインナーのようにも、

子豚の蒸し焼きウツボカヅラの蒸し飯にも思われた

私は、本を置き

もう一度台所に、向かい

用意することにした

屋外では、虫の鳴き声が、

農薬にあえぐこともなく鳴いている

実にまれなことであろう

現代社会によって

日本的信条は、欧米化により

風情よりも実益主義という陳腐なものへと置き換わり

人は仕方なく

その些細な感情主義を、ラノベやアニメといった

空想科学へと費やすのだ

その実験的精神論は、

作品というベールに、何とか包まれた

過去のオカルト主義に代表するような

知識人の趣味思考に、変換されたがしかし

それは、オカルトしかりロリコンしかり

時代と共に、反逆者の汚名と共に

一部の危険思想の煽りを受け

その神髄を、理解しないにわかにより

文字化できない繊細微量筆移出来ない物は

その神髄と共に、きけんしそうと共に消失し

一部のレジスタンスが

草の根活動とし啓蒙活動を

政治 法律 国家権力 ご近所の目を気にしながらも

それを、続けている

しかしながら、この文化もしかり

消滅する日がこないとも限らない

なにぶん世の中は、雨散霧散

諸行無常 昨日の友は今日の敵

栄枯栄睡 講談 SF 怪奇小説 見せ物ゴヤ

コビトプロレス 推理小説 本 金魚

古典園芸  数知れず

数をたどれどその数知れず

途方もない道容赦もされず

にわか音頭は数あれど

極める物は数ほど知れず

知らず知らずの意味さえ知れず

無意味 形無し 認識なされず

踊る 緒形も 忘れて消えて

ただ残るは、無味無臭

形のこらず何も残らず

意味のある物 意味をなさずとこれしかり

有機物に、見いだす阿呆は

腐ることも願わず消え去り

ただ、灰となる

狂う肥料と

「ご飯が、出来たわよ」

目の前のラーメンの渦巻きが、湖の岸辺に、一周

ぐるりと飯店しているどんぶりには、

黄金色に、混ぜられた卵を含む麺が

カセイソウダーの中で、もがいている

醤油色の醤油ラーメンのスープの上には

白菜と豚色のハムが、二枚ゆだり

白くやけどをしている

私は、テーブルの上に置かれた

箸から自分の分の茶色いのを取り出すと

花柄の

昭和からそこにあるのではと個人的に噂している

液体のしみこまないような素材の上に置く

軽くふれた手には、年齢劣化と思われる

ネチャ付きが感じられる

ソフビと違い

それに対する愛着もない私は

ラーメン皿を前に、思案する

この広大な面積を

アルコールによる

一時的に

粘着面をとることにどれほどの意味があるのだろうか

軟化材が、それ以前に含まれているのか

いや、これは、溶けているのではないだろうか

茹だるラーメンを前に

私は、箸をおいている

「頂きます」

白い電球の下

私は、手を合わせると

ラーメンを、口にした

なんて事もない

それは、乾麺である

ラーメンを、らーめんめんたらしめているのは

果たして、この黄色い麺なのだろうか

これは、そーめんでもうどんでもなければ

糸こんにゃくでもマロニーちゃんでもない

ラーメン

果たして、その意味はどの程度なのだろうか

インスタントラーメンであるが

その制作方法は、どの程度のいさを有しているかは

計り知れないが

私は、醤油味の醤油色のスープを、飲むが

それは、醤油であるが

その醤油は、どの程醤油なのだろうか

粉末でも醤油なのだろうか

いや、もしも、うにょうにょしていても

目隠しをしていて

その上で、それが、醤油味であれば

それはまさしく

醤油と何ら分からないのかも知れないが

少なくとも私は、

目の前の醤油スープを

醤油以外の味で表現しかねた

確かに、鳥のような味がするが

鳥の味とはどういう意味であろうか

インコでは違うのであろうか

カラスでは違うのであろうか

どちらにしても、鶏とは、元から鶏の味なのだろうか

機械化が進めど鳥は、機械化などせず

されど、有機物の器から解脱することも出来ていない

もし出来れば、大変な損害が、人間だけにあるのかも知れない

もし鶏に、全世界が牛耳られていれば

それは、鳥食を、拒否した反対勢力の国をのぞけば

鶏に大誤算を、生むことになるだろう

ラーメンの中の小麦を半分ほど食してしまえば

私の脳内に映る

麦茶の黒い残映は

私を、どんんどんと夜の思考へと落とし

戻ってこれない横町を曲がっている気がする

金魚の変化を、人間に当てはめたとき

それを多様性と呼べる人間がどの程度居るのだろうか

もし、金魚に幸福を覚えた金魚がいたとして

それは、自分の姿であることを、幸福に思ったというのだろうか

私は、黒いスープに浮かぶ白菜を、口に入れながら

思案する

電灯が、音もなく揺れている

黒いスープの中で

白い電球がニヤリと笑った


「そんなことはない」

熱くもぬるくもない

逆に、それは何なのかよく分からない

風呂に

体を沈めながら考える

本は、風呂の湯気の中で

ぼんやりとゆがむ

ページはにじみ

なんだか頭まで茹だる思いだ

外は暗く

風呂場だけが明るい

曇りガラスは、闇が張り付いて

ペンキでも塗った壁のように

何も写さない

私は、本に視線を向ける

黒い文字が、印刷された紙は

若干黄色く黄ばんでいるように見える

タイルの目が、浴室の外を、覆い

湯気の下で、カビと対峙している

私は、ページをめくりながら

モモについて考えを、巡らせている

そういえば、家にあった気がする

背表紙の下を見れば

何故か、分別するためのシールが貼られていない

これは、私の本である可能性がある

こんな島にモモを読む小学生が

いや、人間が、私以外に居るとも考えられない

中古で買ったその本は、安く

送料込みでもまとめ買いであれば

一つ百円にも満たない

私は、その本を、いぶかしげに、何度もみるが

やはりそれは、モモであり

そして、図書館の刻印は、されていない

私は、仕方なく

またぺーじをめくる

しかし、どうも、私は、記憶違いでなければ

この本を、アルツハイマー病を発祥していたり

個別の人格が私の中で入れ替わったりしていなければ

図書室から 借りたようなきがするのだ

私は、冷水を、シャワーから浴びると

表にでた

そのまま自分の部屋の本棚をみる

茶色い木の棚には、色々な紙が、無造作に、置かれてはいるが

一応

図鑑と小説の境目くらいはある

その中で、黄色い箱に入った本を探すが

そんな物はどこにもない

何度も探すが、見つからず

ただ、机においた

図書館から持ってきたようなきがしてならない

黄色い背表紙が、部屋の中で映る

私の部屋は 畳敷きであり

その中に、木の机と本棚 タンス

そしてベッドがあった

そのベッドは、いやに簡素で古くさく

白い布団の上にシーツがかぶせてあり

まくらも似たような色である

その中で

机の上にある

モモを取り出す

とりあえずぺらぺらとページをめくったって

それに誤差があるか

私には、分からないし

それに、さして、違いが分からない

コレに、何か、変わったことがあるのかとも考えたが

ストーリー状に

私は、決定的な違いを見いだすことは、出来ない

仕方なく

布団に、飛びつくと

ぎしりと安易なベッドは、畳の上に悲鳴を上げてきしむ

私は、じんわりと冷たい

すべすべとした感触を感じながら

シミにまみれた天井を、隠すように

明るく光る天井から下がる電気をみる

ライトが向きだしの周りに

お盆の行灯のようなカバーが、四角くかけられている

それは、劣化して、蜘蛛の巣が張っているようにも感じる

私は、本に手を伸ばし

ページをめくる

どこかで読んだことのある

みた覚えのある

文字の配列

私は、記憶の曖昧さが

砂のように、こぼれ落ちるのを感じながら

以前みた

砂浜の砂の城を覚え返すように

ページに目を這わす

それは、紙であるし

また、文字でもある

猿がキーボードをたたけば

シェイクスピアになる確率を、考える話しも

猿が人間より優れているから文字を使わない可能性もあるし

また、シェイクスピア以上の文字を書いたとしても

人間が理解できない可能性もある

いや、単純に、シェイクスピア以上の物を書いたっておかしくないはずだ正直興味はないが

私は、最後のページを見る

版数は、乗って居らず

代わりに、別の作者の戦記物の命題が乗っていた

それから、数ページ戻れば

なでぜだか、奇妙な、数字が掲載されている

「第0版」

そんなことはあり得ない

版がなければ出版もされない

もしこれが、試作品だとしたって

それを、ゼロ版とするなんて話し

私は得てして聞いたことがない

こんな離れ小島の

閉鎖された情報網で

それを、断定することは、危険きわまりない

反社会的思想かも知れないが

しかし、それにしたって、ゼロ版などききお呼びになく聞いたこともない

かりに、それが、96の見間違い

もしくはQの可能性はないにしろ

10の1がかすれて見えない

100の10がかすれたり削れて見えない

もしくは、誰かのいたずらで

巧みに、見分けがつかないように

1から偽造本を作り

それを、古本屋に売りつけると言う

楽しみを有した

道楽者がいてもおかしくないがしかし

それがいたとしても

コレが、どうだとする理由もなさそうである

もしそんな、紙やインク

もしくは、一部だけ差し替えたとしたって

もしかすると

この一冊の正規の値段以上の

手間のようなきがしてならない

つまり、私は、謎の書物を、天井に掲げ

失意のうちに、宿題に、手を伸ばした


よやみの中で

眼下に、光る光景が見える

どこまでも暗い暗闇の中

ぬかるむような足が、一歩前に出そうとも

田圃の土に、タールを、流し込んだ

粘着しな闇は、私の身動きを、制限し

その明かりが、何による発光なのか確認することも許してはくれない

ただ、暗闇の中

何かが光っている

その暗闇の確証は

夢の中では出来ない


目を覚ますと

ぐっしょりと濡れた汗に

目が、きもちゅわるくしばたいた

私は、シャワーを浴びると服を着替え

一人 朝食を済ませると

学校へと向かう

鞄には、モモの本が、入れられており

校門のひびの入ったコンクリートの双方を、すぎ

そのまま校舎にはいると

図書室に向かう

何もない

がらんとした

室内

この時間

教師は、欄虫の腹でも拝んでいることだろう

私は、ミヒャエル エンデの項目を見る

果てしない物語も存在しない

この図書館には

確かに、モモが、あったはずだ

つまりは、もちろん

それ以外の本があるはずもなく

それは、ただ一つのはずである

私は、海外の作家の項目

いや、本棚を探る

作家ごとにしきりが、入れられているが

おかしな事に

ミヒャエルの立て札の前後に

本はなく

次の本が、積められていた

どう言うことだ

そのつぶやきに

「どうしたんだ」

と言う声を聞いたとき

私は、心臓が、一瞬鼓動を、停止したのかと錯覚した

「おはようございます」

一応の挨拶をする

いつこの教師は、そこにいたのだろうか

「おはようございます それでどうしたんだ」

私は、目が泳ぐ

本は、図書室のいやにきれいで、ずっしりとした机の上に置かれている

「金魚のお世話は終わったんですか」

ああ

と素っ気なく教師は答えた

「それで」と先を促す

私は、仕方なく

ミヒャエルエンデのモモの

ゼロ版の事について聞いてみた

「こんな事はあるんでしょうか」

教師は珍しいこともあるものだな

と何の役にも立たない言葉を残して

さっさと図書室を、出て行く

遠くの方で、小さい足音が、廊下を走る音がした

私は、もう一度 本を手に取ろうとして

気がつく

なんだか

背表紙にはがした後があることに










しーん しんしんしん

蝉が鳴いている

私は得も知れぬ感情のまま

波を見ている

砂浜には

泥になる前の砂が敷き詰められ

ほんの一角を示しては、忘れている

私は、どこまでも続くような

灯台の明かりを見ながら

砂を、握りしめていた

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シロナガスクジラのこえ イタチ @zzed9

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