第24話 蟻地獄の頭
ドリーがここまで優秀とは思わなんだよ。
考えていた以上の働きぶりにワシは今、猛烈に感動しておる。
いかんね。
フランシス殿の変な癖が
とにかくだ。
ここまでは想定を超えて、事が運んでおるのは間違いないな。
思っていた以上に釣れてしまったのは『餌』のドリーがいささか、やりすぎたせいだと言えるだろうて。
やりすぎなくらいに肌が見えておるし、あの体型だからな。
おまけに恥じらうように薄っすらと頬を染めているのに騙されておるんだろうよ。
アレに恥じらいやたしなみという感情が芽生えているのかは
下手をしたら、見られていることで興奮しているのではないかね?
正に天然なる『連環の計』とでも言うべきか。
さて、どうしたものか。
見事なくらいに我が計にかかった敵将の青年とその護衛らしき一団が、眼下におる訳だ。
彼らは終着点に到達した讃えるべき勇者であるな。
その数、おおよそに見積もって百もいってないか。
彼らがここを文字通り、終着の地とするか否か。
領主の館の前にある大きな広場が蟻地獄の頭にあたる部分となる。
突貫工事で改築し、以前の趣きがあり、落ち着きのある石畳の広場は様変わりしておる。
周囲を急ごしらえの楼閣で円形に囲み、地面には可燃性の液体をぶちまけてあるのだ。
無造作ではない。
相手を脅すのに効果的なように撒いてある。
命を取るだけでよいのなら、実に簡単なのだ。
燃やせば、いいだけだからなあ。
「頃合いやよし。放て」
ワシの合図に弓兵が火矢を放った。
実に腕のいい射手で狙い通りに弧を描き、着弾しておる。
「少々、燃えすぎたか」
炎の渦がさながら、嵐のように勢いよく、燃え盛った。
そうするように仕組んだワシだが、あまりの勢いに少々、怖気づいたのは内緒である。
燃えすぎではないかね。
これでは効果的ではあるが、延焼しかねないのだが……。
ワシ、知らんよ?
「さてさて。もう少しくらい、脅しておくかね。もういっちょ、よろしく頼むよ」
死にはしないし、大怪我を負うこともないだろうが高角度から、落下してくる矢だからなあ。
そこそこに痛くはあるだろうて。
「ワシはシゲン。モーラの軍師である。貴殿らは既に袋のネズミ。潔く、投降されたし」
頃合い良しと見て、楼閣の上に堂々と姿を現したワシの一世一代の大勝負だ。
先陣の将エーリクが匹夫の勇に過ぎない下郎であれば、この期に及んでも負けを認めずに死を選ぶであろうなあ。
だが、少しでも英傑としての才覚があるのであれば、一時の恥を忍ぶかもしれん。
さて、どう出るかね?
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