編集済
なんという読後の余韻......。
生活・環境の豊かな描写と示唆に富んだ物語で、短編とは思えない厚みを感じました。
厳寒の北の大地。
その厳しい環境下で生きるために、小さな村に熊送りという慣習が生まれたことは、自然なことなのかもしれません。
村の中で、ひととして生きる上で、必要としてきたこと。
エンリィも最初は「熊のお肉美味しい」って言っていたし、シュカだってきっと......。
でもグラチカとの出会いで若い兄妹は村の外側を知ってしまったのかな。
ヒドゥンが食べられることを拒んだことから、儀式や村の掟は、所詮ひと側の都合で作られたものでしかないのだろうな、と......。
熊送りの様子が描かれた最終話を読むと、序盤で猟師たちの頭蓋骨が2つ並んでいたのも、皮肉がこめられているように感じます。
グラチカが撃たれるのを目の当たりにしながら、エンリィが冒頭の三行を心の中でつぶやくシーンは、ひととしての在り方への疑問や、価値観が変化していく瞬間だったのかなぁと捉えました。
シュカとグラチカが微笑ったこと、エンリィに鋭い爪がついたこと。
兄妹に訪れた精神的な変化を見事に書ききっていて、感動しました。
個人的に2回目の「グラチカ…なんで来ちゃったの?」が切なくも温かく、胸につき刺さりました。辛いけど、あったかい......(泣)
素晴らしい作品、ありがとうございました。
作者からの返信
青草さん…何というか、
読みとる力の凄さに圧倒です。
並んだ頭蓋骨は禁を犯した見せしめ。
共存するために、厳格なルールが
ある世界を描きたかったのです。
冒頭の雌熊は人を赦さなかった。
人は施しを受けていることを
忘れてはならない、と。
熊送りの資料を調べるうちに
とても崇高で厳しいものが
うっすら見えてきました。
とても理解には至らないですが。
「なんで来ちゃったの?」
↑特に気に入っているシーンです。
青草さんに刺さって良かった。
せっかく逃がしたのに、というシュカ。
行くしかないのに、というグラチカ。
私は二人が羨ましい。
お読みいただき、コメントに感動!
こちらこそありがとうございました。
青草さんの作品も楽しみです。
また伺いますー
編集済
コメント、お邪魔します。
過酷な自然(熊)と、人との距離がとても近い、というか重なっている、童話的なお話ですね。
舞台となる山の寒さが、身にこたえました。厳しい。
最後にエンリィが走りながら、熊になり神に変化していく姿が目に見えるようでした。
面白かったです。心に残るお話でした。
作者からの返信
本城さん、こんばんは。
厳しい冬を感じていただけて、
とても嬉しいです。
神と熊と人。
境界線を引かないまま、
不思議を信じることが
あってもいいいかな、と思います。
感想とても嬉しかったです。
本城さんのギリシャのお話、
難しいのかな…と思ってましたが
人物がイキイキしてて楽しいです。
気になっています。
編集済
アイヌの民話を読むようでした。
たまたま最近、知里幸恵『アイヌ神謡集』を読む機会があったので、勝手に「おおっ」となりました。
人と熊がとても近くにありながら、その間には厳格なルールが存在していて、逸脱すれば神としての熊が牙を剥く……という、苛烈な風土に適したありさま。
親を亡くした兄妹が肩を寄せ合い、村の一員として手心のない扱いをきっちり受ける様子。
生活感のある語りが、とても良かったです。
最後にエンリィが熊になったシーンは、本当にこんな神話がありそうだなと、幻想的でありながら説得力を感じました。
面白かったです^^
作者からの返信
鐘古さん、
こちらもお読みいただき、感謝です。
アイヌ神謡集…何だか凄い。
民謡ですか?マニアックな響き。
私も気になってきました。
私は民俗も宗教も詳しくはなく…
この作品は、
北海道旅行と【三毛別ヒグマ事件】
のお話を下敷きにしています。
(↑カムイコタンも観光しましたが)
自主企画のテーマ【神饌】を考えた時に、
熊送りにピンときたのです。
【神に熊を供えるのではない】
【熊に人は供えない】
アイヌだけでなく、世界共通で、神=熊。
現実に熊が人を喰うこともあるのに、
生贄に人を捧げることはない。
生贄に人を求める神はあっちこっちにいて、
洪水をおさめるために人柱にしたり、
山に放置したり、火を放ったり、祭壇に…
そんな話がゴロゴロあるのに、
熊は人を求めない。
自然と神、熊と人が近い世界。
恐れ、敬い、対峙する。
厳しいけれど、崇高な気がします。
不思議をお楽しみいただけたなら
とても嬉しいです。
小さな山村の暮らし、厳しい自然、人と神との関わり、兄妹や熊との間の絆……そういったものが丁寧に描かれた、美しくて悲しくて、素晴らしい作品でした。
拙作にコメントをくださるときのイメージとのギャップが大きく、そこも面白いなと感じております。
作者からの返信
あっ、ありがとうございます。
コメント、とても嬉しいです。
カニカマさんの作品、
いつも楽しませていただいています。
ウソ知識の尖ったユーモアに
ズップリはまってしまい、
返信コメントもさぞや面白いだろうと、
ついつい毎回投下してしまって…
(と、言ってハードルを上げる。笑)
ご迷惑になってないといいのですが。
(多かったら消してくださいねー)
また、お邪魔します。
三寿木様
コメント失礼いたします。
寒村を舞台にした、兄妹と仔熊の物語。
そう思っていたらとんでもない。
圧倒的な筆力とスケールで描かれる、民族的かつ神話的な物語は素晴らしいの一言です。
選び抜かれた言葉で紡がれる文章の美しさに惹かれ、兄妹と神熊、村人の生と死に心を掴まれ、幸と不幸の混在した川辺の出来事に驚嘆し、そしてラスト。
人を捨て、人を知る、そんな存在へと移ろった彼女の心を思うと、胸が張り裂けそうです。
悲しくも美しい、心の奥底に爪痕を残したまま離れない。
そんな素晴らしい作品をありがとうございました。
作者からの返信
明之さん、素敵なコメントありがとうございます。
書くこと、伝えることに悩んでいた時の作品でした。悲しくも美しいというお言葉、とても嬉しいです。
悲しいお話でしたが、読んでいただき大変感謝です。
うわー、熊か兄か、どちらかは助かると思っていましたが。
試される北の大地はかくも厳しいものなのですね。
丁寧に作り込まれた物語は、悲しくもどこか美しさを感じ、アイヌの文化を伝えてくれる素晴らしいものだと感じました。私も見習いたいものです。
作者からの返信
一矢射的さん、コメントありがとうございます。
熊と兄。野生動物と人は近過ぎてはいけないんじゃないか…と。
罰としては厳し過ぎると思いましたが、自然界と人間界の掟から外れた者は淘汰される。私の【腑に落ちる】展開をを採択してしまいました。
実は作中の熊送りはアイヌのイオマンテではないのです。仔熊の扱い方も祭の儀式も違うし、人身御供などありません。他の国にも共通する熊を送って神とする【熊送り(熊祭)】の概念だけを取り入れました。
アイヌの文化は興味深いですが、ちゃんと理解するのはとても難しいように思います。(北海道旅行で実感したことがありました)
なので、一応【アイヌのイオマンテではない】ことをお伝えさせて下さい。
(書いておいて何ですが、私もググって知ったことばかりです。詳しくないです)
コメント、勉強になります。
ありがとうございます。
質の高い素晴らしいお話をありがとうございました。出先で読んでいて♡☆を押していなかったのでまとめて押させてもらいました。
アイヌの熊送りをベースに、余計な感情描写をそぎおとし、なおも胸に迫りくる自然と人間の対峙の厳しさと、天界から冬の地表を覆いつくす神の無慈悲な息吹が文章から迫りくるようでした。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
感想を教えていただくたびに、ハッと気づくことがあります。
無慈悲な息吹…確かに。
誰にも等しく厳しい神(自然)の前では、
人の欲も感情も願いも何もかも
吹き飛ばされてしまう気がします。
こうすれば救われるという約束事など
本当はないのかもしれないな…と。
この作品の熊送りは…
イオマンテではないのですが、
儀式のために仔熊を育てるのは
アイヌだけみたいです。
他にも熊を祀る国があって、
熊は神聖な神と見なされているようです。
現実には熊による人食いがあっても、
神としての熊に人身御供を捧げる伝承は
検索で見つかりませんでした。
(本作はフィクションです)
日本でも世界でも人身御供が存在する。
なぜ、人は人身の生贄を供えるのか。
そのことが気になってしまいました。
♡☆も嬉しいのですが、
コメントはもっと嬉しいです。
ありがとうございます。
コメント失礼します。
年長者が滔々と語る神話を、寒空の下、焚き火を囲んで聴いているような……そんな気持ちで読ませていただきました。
この村も慣習も実在する! そう感じるほど、土地に根付いた生活や信仰が丁寧に描かれていましたし、ルビがそれを更に深めていました。すごいです!
自然や生に対する尊敬や感謝、畏怖といったものは、現代では忘れられがちなものに思いますが、それを再認識させ、色んなことを感じ、考えさせられる作品でした。
結末の展開も、余韻がある感じも、すごく素敵です!
素晴らしいものを読ませていただきました。ありがとうございました!
作者からの返信
コメントありがとうございます。
昔話や童話も好きなので、語り部のような雰囲気をお伝えできたことが嬉しいです。(実験的に作風を変えてみたのですが、功を奏したようで大喜びです)
日本語って…漢字って凄いです。
漢字自体で意味を伝えられるし、読み(ルビ)を変えると雰囲気が変わります。意味の伝達は漢字に任せて、カナ読み(響き)は自由に遊んでみました。異国語を作るのは楽しいです。
尊敬、感謝、【畏怖】。
畏怖…あっ!そうですね。この言葉がとてもしっくりくる気がします。何となく心にあったのに言葉としては出てこなかった。きみどりさん凄いです。
このお話は、きっと自然への畏怖と敬意が主題です。
自分で気づかなかった大事なことを教えていただきました。ありがとうございました。
読み始めた当初は、北海道・アイヌ民族のお話かな?
と思いましたが、独自の世界観によるオリジナルの世界なんですね。
ルビの言葉を調べても、該当しないので、そうだと思いました。間違っていましたら、私の不勉強さを哀れんで下さいませ。
独特のルビの言葉が、読むだけで異国情緒を感じ入りました。現実世界でない小説を書く上で難しいのは、服装などの文化。商業誌ならば、プロの方にイメージとなる表紙や挿絵が入ることで、イメージ作りができますが、独自のルビが入ることで言葉による雰囲気ができるものがありました。
お話を拝見しましたが、物悲しくも情緒のある作品ですね。
熊によって家族を奪われた兄妹が、熊を家族にする。
村では熊を神様としているので、兄妹も大切にされるが、なぜ大切にされていくのか判明する。
シュカがグラチカを逃した理由、禁忌を犯してまでグラチカを活かしたかった。シュカの危機に駆けつけるグラチカの最期。
こうしなければ人々が生き残る術がなかったという意味では、決して野蛮な行為ではありませんが、シュカにしてみれば家族を失いたくなかったのが分かる気がします。
残されたエンリィが神になるとは……。
どうして、なぜという思いよりも、家族を失ったエンリィがなぜそうなったのか、悲しいものを感じつつも、良かったような気がしました。
人間によって家族を奪われたエンリィは、人間として行きて行きたくはなかった。グラチカ(神)が、何かしらで叶えてくれたのではと思いました。
意図を理解せず、間違った解釈をしていたら申し訳ありません。
読み終えて、しんみりと情緒を感じ入りました。
素敵な作品です。
作者からの返信
kouさん、コメントありがとうございます。
…全部、その通りです。
工夫したことや書きながら考えていたことがこれ以上ないくらいに正確に伝わっていて、嬉しいと共にとても驚いています。(ルビは思いついたままの創作アテ字です。調べさせてスミマセン…)
でも、これはkouさんの読みとる力が凄いんだと思います。カクヨム、凄い人がいるもんだなぁ…と。
自分では気づかなかったのですが、レビューでシュカは信仰に殉じ、エンリィは越えると教えて下さった方がいました。
この兄妹は世間一般的な考えとは相容れない精神を持っているのだと思います。どんな形であっても、いずれ人の世と決別するのは必至だった気がします。
グラチカは人になついてしまう野生動物のイメージです。本来の生き方に抗っているから…人に利用されてしまう。
何より、熊送りや人身御供に縋ることしかできなかった…厳しく過酷な自然と対峙して生きる村の民についても【野蛮ではない】とコメントを下さったことに、とても感激しています。
丁寧な感想と考察を教えていただき、ありがとうございました。とても勉強になりました。
不躾に失礼いたします。
拝読させていただきました。
コメントを残しておきたい気持ちはあるのですが、
私の貧弱な語彙力では、うまく自分の思いを文字に興せません。
面白かった… という言葉も軽く感じます。
作者様のしっかりした世界観と、土着の信仰・神話が融合したような
不思議な空気感を感じさせてくれる物語でした。
※「熊送り」というものが本当にあるんですね。
今、ググッて初めて知りました… 勉強不足で申し訳ございません。。
恥ずかしながら学が無く…
(企画へのご参加、ありがとうございます)
作者からの返信
こんばんは。はじめまして。
こちらこそ企画に参加させていただき、読んでいただき、コメントまでありがとうございます。
【土着の信仰・神話が融合したような】
この感想がとても嬉しかったです。
ちょうどそんなイメージをお伝えしたかったのです。
うまく伝えられないのは…私もです。
言葉が見つからなかったり、しっくりこなかったり、相手に伝わってなかったり、失礼したりで悩んでいました。(←今もです)
熊送り…実は詳しくないのです。
私もググりました。
たぶん。ご覧になったソレです。
テレビで見た三毛別羆事件や北海道旅行でガイドさんから聞いた話を思い出しながら書いていました。
熊は神聖な生き物のようです。
企画参加ありがとうございます😊
飢饉は人と動物にとっても辛いもの。食べなければ生きていけない為に互いに淘汰される動物と人。自然と生きる厳しさのなかに神秘さも感じられました。
山には神聖な思いを持つ時もあります。
エンリィはそこに触れたのでしょうか?次代の山の神として。
切なくも厳しい生活の中で育んだ美しい思いに触れる事が出来ました。
神饌という熊の匂いに作品の人々は「冬の匂い」を感じたのでしょうか。
解釈が違っていたら失礼します💦
良い作品に出会えて嬉しかったです。ありがとうございました♪
作者からの返信
コメントありがとうございます。
お伝えしたかった自然と共に生きる厳しさ、自然の神秘を感じとっていただけて、本当に嬉しく思っています。
この作品の神饌はシュカです。
神(=熊)の有り様に憧れたエンリィは熊として生きるのだと思います。
冬の匂いをテーマに書きおろした作品ではなかったのですが、冬の自然の匂いをイメージしながら書いていたので、参加させてもらうことにしました。
ラストの…人ではわからなかった匂いを、けものになってゆくエンリィが感じとっていた辺りです。
はっきりと【冬の匂い】がこれだとは書いておらず、読者さんの想像によって違ってしまうような書き方ですみません。
素敵なお題に惹かれてしまったのです。
私もいろんな冬の匂いを覗かせてもらおうと思います。とっても楽しみです。
レビュー、とても嬉しいです。
コメントを参考に少し加筆させてもらいました。
(とても感謝しています)
カクこと伝えることに
悩みながら書いた作品だったので。
見てもらえて幸せだったなぁ、と。
本当にありがとうございました。
コメント失礼いたします。
古来、人が自然との対話を求めようとすれば、その畏れと敬い、そして恭順を示すために御供を用意しなければいけないものなのかもしれません。
そこには厳格な掟があり、なおざりにすれば必ずその罰がくだる。
兄妹はそういう世界を受け入れて生きていく、あるいは死を選ぶしかなかったのですね。
生と死、それはいつも背中合わせ。
死は生の糧であり、その逆も然り。
この物語を読み終えてそういう真理を諭されたように思えました。
最後、彼女が神格化した熊となったところに救いを感じました。
素晴らしい作品を読ませて頂きありがとうございました。
作者からの返信
こんにちは、那智さん。
人には侵してはならない領域が
あるような気がするんです。
自然にも科学にも、野生動物にも。
近づき過ぎず、搾取することなく、
畏怖や敬意をもって接する。
適度な距離で共存するのが
お互いに幸せなのかな…なんて。
今、生死の意味や価値が
感じにくくなっている時代のような
気がします。
(特定の宗教とかじゃなくて)
人間の範疇を超えた存在による
厳格な掟や罰があってもいいような
気がしています。
そう思うと、
熊害や天災や感染症にも
何か意味があるのかも、と
深読みしたくなってしまう…
深く読み取っていただき、感謝です。
那智さんの読む力と伝える力に
ちょっとビックリしています。
また勉強させてもらいに伺います。
(↑マイペースなのですが)