第6章
決闘祭から一月が経った。半年間離れていたタケルは持ち前の明るさでギルもメリッサに支えられながら義勇軍に馴染んでいった。
「アランさんあの子は義勇軍に入れて良かったのですか?」
「彼女の意思を尊重したまでだよ、それにこれはアイツの意思でもあるから・・・。」
それは決闘祭から戻って一週間が過ぎた頃であった。降りしきる雨のなかとある客人が義勇軍の本部を訪ねて来た。
「ミサトさん。どうしたのですか?」
思わぬ来客に動揺する一同。その沈黙の中ミサトは告げる。
「レイちゃんをここで働かせて欲しいの。」
ミサトの後ろからレイが顔を見せた。
「久しぶりだね。」
頷くレイ。
「ここは常に危険と隣合わせの組織です。レイちゃんにもしものことが遭ったら・・・。すいません。」
その場を離れるミーナ、フェルトとフローラが察しあとに着いていった。
「私、シンジが過ごした組織に入りたい。雑用でもなんでもする。シンジが居た空間がどんな場所なのか自分自身の肌で感じたい。」
今にも泣きそうな強いその瞳にどこか懐かしさ感じた。
「レイちゃんのご両親も同意の上よ、入って暫くは私が様子を見に行くわ。」
「わかりました。レイには義勇軍本部で働いてもらう、任務や依頼には連れて行かない。ミーナそれなら良いかい。」
「・・・。はいその条件でしたら」
「レイもそれで良いかい?」
「ありがとう。隊長さん。」
そうしてレイは義勇軍の本部で世話係として働くこととなった。今では、
「レイさんすみません、この書籍を図書館で探してきて頂きませんか?」
「わかりました。ムウさん。・・・お待たせしました。」
「いつもありがとうございます。」
と手伝いをしたり。
「なあなあレイ。これどっちが面白い。」
「・・・。どちらもつまらない。」
「なっ!やっぱ顔に落書きじゃダメか~」
「そうだタケル。そんなもの面白くもなんともないぞ」
「ツバイこそ腹踊り全然ウケてないじゃんか」
「ハハハ、ほっとけ」
メンバーのバカ騒ぎに参加したり。
「よお、レイ今日も元気か?」
「はい。ハドソンさんおはようございます。」
「あぁ~またハドソンさんレイちゃんにちょっかいかけてる~。」
「フローラ誤解を招く発言するな!」
「レイさん。良かったら私とフェルトさんと買い物に行きませんか。」
「うん。行く。」
「わぁ~い。じゃあ早く行こう。」
と女性メンバーと遊んだりと義勇軍での日々を楽しんでいた。
「隊長さん。ミーナさんお茶です。」
「レイさんありがとうございます。あら、可愛いですレイさん。」
「・・・。ありがとう。」
赤面になるレイ。
「どうしたんだその服装。」
「どうよ隊長、おれっちが選んだメイド服は?」
「・・・。ツバイ、仕事をしてこい。」
「ハイ。すいません。」
「似合ってない?」
「うん?凄く似合ってるよ。」
そう言われるとレイは足早にその場を去った。
「レイのやつどうしたんだ?あっアラン一緒に仕事に行かないか?『インク村』って村の魔物の討伐依頼なんだけど」
「タケル君、僕も連れて行って欲しい。そこの村に亡くなった同志の両親が暮らしていると聞いていて。行こうか悩んでいたんだ。」
「ギルさん行きましょう。その村温泉が有名らしいですよ。」
「おっいいね温泉俺も行こうかな~」
ハドソンが話しに入る。
「温泉私も行きたいです!ねっフェルトさん」
「そうね。いい羽休めになるわ」
「レイさんも行きませんか?」
「私。大丈夫。」
「そうですか・・・。残念。」
「私も行きたいですアランさん。」
「おいおい、皆行くのはいいが、目的は依頼の完遂だからな」
「は~い。」
翌日、アラン・ミーナ・タケル・ハドソン・フェルト・フローラ・メリッサ・ギルは、インク村を目指して高野を歩いていた。
「なかなか、距離あるんですね。私疲れました。皆さん休憩しませんか?」
「フローラ、だだこねないで。」
「は~い」
「タケル、依頼者との約束の時間には間に合うのか?」
「どうだか、村まではこの高野を歩いてさらにあの山を渡らなければ行けないみたいだしギリギリだな。」
「ってことは休憩は無しだな。」
「え~。ハドソンさんのいじわる。」
「なんでだよ!ところでこの辺って確か鬼の居住地域だよな?大丈夫なのか?」
「なにか大変なことでもあるのですか?」
「人間と鬼は昔からあまり友好的な関係ではないんだ。自分達と違う者を隔離する傾向にある我々人間と自尊感情の強い鬼では反りが合わないことが多いんだ。」
「それに鬼は好戦的なヤツが多いからよ、人間嫌いの鬼に出会ったら最悪だな」
「確かに想像しただけでも恐ろしいですね。」
イメージを膨らますミーナ。
「ちなみにインク村は鬼の居住地域との境目にある村よ」
「えぇ~嫌です。帰りましょ。」
少し前のテンションがウソのように落ちるフローラ
「皆さん静かに。」
突然、ギルが人差し指を立てる。
「ギルどうしたんだ?」
「近くに魔物がいます。」
「確かか?」
「隊長。間違いないと思われます。私は何度かギルと一緒に仕事をしているので経験があるのですが、義勇軍に参加してからギルが気配を感じ取った時は必ず魔物が現れています。」
「そうか、わかった。皆注意して進むんだ。」
少し進むと魔物の群れに遭遇した。心構えが出来ていたこともあり気づかれることなく群れを倒すことができた。
「ギルさん凄いですね!」
タケルは純粋に凄いと感じていた。
「おそらく、一時的とはいえ魔物のいや闇の力を使った僕の身体は魔物の存在を感知できるようになったのかもしれない。」
「悲しいな、一度使った愚かな力と一生付き合わなきゃいけないってのは」
「ハドソン殿なにを・・・。」
「メリッサ。いいんだ。事実僕は未だに僅かとはいえ、魔力が使えることに戸惑いを感じているのだから。」
沈黙する一同。
「切り替えて行こうぜ。ちょうどインク村に着いたみたいだしよ。」
そこは豊かな自然に囲まれどこか気持ちを和ませてくれる雰囲気の村であった。
「どおした?タケル。」
「なんかよ~。故郷を思い出しちまって。」
「どんな場所なんですか?」
「『ポポの村』っていうごく普通の小さな村なんだけど村中皆が家族って位に仲が良くてさ凄い温かい気持ちになる場所なのさ・・・。いけね皆早く。依頼主に会いに行くぞ。」
「なんか話しを聞いていたらジーンとしてきました。」
「タケルがこういう性格になるのも分かる気がします。」
「ミーナどういう意味?」
「そのままの意味ですよ悪い意味なんてないです。」
「そうか。褒め言葉として受け取っておくよ。」
しばらくして依頼主の家に到着した。
「儂がこの村の村長じゃ、儂の依頼を引き受けてくれてありがとう。」
「村長さん早速なんですが・・・。」
「依頼の件じゃな。君らにお願いしたいのはこの村を襲撃してくる魔物を退治してその根源を倒して欲しい。」
「なあ村長さん、それってよこの辺に住んでる鬼達に任しても良かったんじゃないか?」
「確かに髭帽子の兄ちゃんの言うとうり。いつもならこの村に住む鬼に依頼するんじゃ。」
「では、何故我々に依頼を」
「今はな、鬼達が内部抗争状態なんじゃ。」
「どうゆうことですか?」
「きっかけはレオパルド王国の崩壊から始まっておる。」
「!?」
「レオパルド王国崩壊後に王国で鬼族の代表としてレオパルド王家に仕え幹部の一人になっていたケンシンが戻ってきたのだ。元々鬼族を統括していたケンシンが戻ったことでケンシンがまた鬼族を指揮すると思われたのだが、他種族との共存主義を主張するケンシンに、ケンシンの居ない間に鬼達をまとめていた排他主義を主張するノブトラが真っ向から対立して内乱が勃発し7年間ずっと続けておる。」
「7年も・・・。」
「それにあやつらの出自が余計にややこしくしておる。ケンシンとノブトラは義兄弟でのそれまで鬼のリーダーだった父と正妻の鬼との間に生まれたのがノブトラで父と人間の間に生まれたのがケンシンだと言われておる。」
「鬼の長と鬼人の長の対立というわけか・・・。」
「そういうことじゃ、そして家督はケンシンが継いだ。よっぽど不満だったのじゃろう、当時ノブトラはケンシンに反旗を翻し家督争いが起きた。」
「どうなったのですか?」
「当時、種族間戦争が終結した頃でのレオパルド王国国王がケンシンを仕官させたことで『形』としては収まった。しかし王国が崩壊したことで再燃してしまったんじゃ。」
「それがこの村とどういった関係が?」
「ここまで来るときに君達も見ただろうが、この村では人間と鬼が共存して暮らしておる。儂が共存派を主張しておるからというのもあるが、この村にも共存派と排他派がおっての今の鬼の対立の縮図がこの村になっている。」
「それで互いに牽制し合って実質活動出来ていないというわけだな村長さん?」
「そんなとこじゃ髭帽子の兄ちゃん。だから君達にお願いした。・・・と話しは終わりじゃ魔物退治頼んだぞ、宿はここに泊まりたまえ宿主には儂が話しを通してタダで泊まれるようにしてある。」
「ありがとうございます。」
村長と話しを終え宿の前に着いた義勇軍一同。
「隊長すいません。私はこのまま亡くなった同志の両親の元を訪ねに行ってもいいですか?」
「いいぞギル。行って来い。」
「私も付いて行くぞ。」
「メリッサ・・・。よろしく。」
二人は亡くなった同志の両親の元へ向かった。
「私達は宿で一休みしますか。」
「賛成です。温泉入りましょ」
「俺達も一休みするか」
「俺はこの村の中歩いてくるわ。」
「そうか。タケル気負つけてな」
「分かってるじゃあ。また後で」
そう言ってタケルは村の中へと去っていった。
「お~。なかなか広いし整った部屋じゃないか。」
宿に入った五人はそれぞれ部屋で寛いでいた。アランが縁側で景色を眺めていると、
「アランさんそちらのお部屋はどうですか?」
「快適だよ。そっちは?」
「こちらも凄く快適で過ごしやすいです。」
「ミーナさん早く~。」
「どこかに行くのかい?」
「はい。早速温泉の方に、アランさんとハドソンさんも久しぶりに入浴出来ますし、お風呂に入られてはいかがですか?」
そう言ってミーナは上機嫌に立ち去った。
「ハドソンさん。温泉入りませんか?」
「うん?そうだな、この村に来て温泉に入らないってのも変な気がするし入るか。」
「本当は入りたくてウズウズしていたんじゃないですか?」
「バレたか。」
カコン。ザバーン。
「お~。いい湯だな~」
「ですね~。」
「アラン。後で大浴場の方に行かねーか?なんでも露天風呂らしいぞ。」
「どうせなら今すぐ行きましょうよ。」
足早に大浴場に移動すると、そこからはインク村が一望できた。
「良い眺めだ・・・。」
「綺麗ですね・・・。」
二人が景色を眺めていると聞き覚えのある声が徐々に近づいて来た。
「温泉って気持ち良いですね。」
「そうね、いいお湯だわ。」
「最後はこの露天風呂ですよ。なんでも、ここからの景色は最高だそうです。」
「どんな景色なんでしょう・・・。」
かくして男女五人は鉢合わせしてしまうのであった・・・。
一方タケルは村の中を歩き回っていた。目の前の光景がどこか懐かしく自然と和やかな表情になってゆく。
「ちょっとやめて下さい。返して。」
ふと声のする方へ顔を向けると複数の男に女性が一人囲まれていた。すかさず間に入るタケル。
「なんだお前は?」
「女の子相手に複数で来るのは卑怯なんじゃないか?」
「はぁ?お前白馬の王子様のつもりか?おいやっちまおうぜ。」
一気に襲い掛かる男達はあっという間にタケルに打ちのめされその場を立ち去った。
「あの。ありがとうございます。」
庇っていた女性の方を向くと同い年位の女の子だった。
「いやいや、当然のことをしたまでだよ。大事なモノは無事だった?」
「貴方のおかげで無事だったわ。」
「それは良かった。・・・へぇ~。絵を描いてるんだ?」
「うん。旅をしながら風景やその場所の人々を描いてるの。貴方は?」
「俺は今『義勇軍』に参加して日々依頼を仕事にしている毎日だよ。知ってる?『義勇軍』?」
「うん。よく知ってる・・・。ねえ良かったらこの村案内しようか?私この村に何回か来てるからオススメの場所とか知ってるよ。」
「そうなんだ。よろしく頼むよ。俺、タケル君は?」
「私、サラ。行きましょタケル。」
サラと共に村を回ったタケル、二人は初めて会った関係とは思えないほど親しくなり急速に距離を縮めていった。
「おっ早速描いてるんだ。」
ベンチに腰掛けるサラにタケルは飲み物を差し出す。
「どうかなこれ?」
そこには無邪気に遊んだり、家族と楽しそうに過ごす子ども達が描かれていた。
「凄く良い絵だと思うよ。サラが描く絵の人々は皆笑ってて明るい絵が多いから見てるこっちも幸せな気分になれるな。」
「ありがとう。・・・私ね、物心ついた頃にはもう親がいなかったから、ああやって幸せな姿をしてる子ども達が羨ましくて。」
「そうなのか・・・。ゴメンな辛い過去を話させちまって。」
「良いのよ。あの子達の笑顔は私の元気になるし、それに昔は辛かったけど今は楽しいわ。タケルとも出会えたし・・・。」
「サラ・・・。」
「なに言ってんのかしらあたし。」
顔を赤くしたサラは立ち上がると振り向き様に
「今日はありがとうタケル。」
そう言って立ち去ろうとした
「危ない!!」
そんなサラをタケルは押し倒す。
「ちょちょっと何よタケル。」
「下がって。」
タケルの視線には数体の魔物がいた。サラを後ろで庇いながら剣で魔物を牽制する。
「なんでこの村に魔物が?」
「わからない。けど俺達がこの魔物達の退治を依頼されてるからよ、ちょうどいいぜ。」
そういうと瞬く間にタケルは魔物を蹴散らした。
「大丈夫かい?サラ。」
「タケル・・・。ありがとう。」
「タケル殿大丈夫か!?」
魔物の出現を聞きつけたメリッサとギルがタケル達を見つけた。
「タケル今日はありがとう。楽しかったわ。・・・また会えるかな?」
「会えるさ。きっと。」
「そうだよね。じゃあまたどこかで!」
サラは二人とすれ違いその場を立ち去った。
「メリッサさん。大丈夫ですよ。襲ってきたのは全部倒しました。」
「そうか。良かった。・・・ギル?どうかしたのか?」
「いや、なんでもないよ」
(なんだ・・・。この胸騒ぎは・・・。)
「ギルさん?」
「タケルくん。本当に全部魔物は倒したんだよね?」
「えぇ。倒しました。」
「そうだよね。すまない変な質問をしてしまった。」
「我々は用事が済んだから宿に戻ろうと思うのだが、タケル殿はどうする?」
「俺も戻ります。十分観光は楽しんだので。」
三人は日が沈みかける頃に宿へと戻っていった。
「おう三人とも遅かったな。」
宿の人に案内された部屋では五人がすでに揃っていた。
「なんかあったのか?」
「別になにもねーよ。なあアラン?」
「えっ、なかったと言ったらないしあったと言えばあるし」
「隊長までそんなこと言うのですか」
「隊長酷いです。」
「だから、アレは偶然であって故意じゃないんだって」
「誰がスケベ親父の言い分を信じるものか」
「信じないのはお前くらいだ氷女。なあ、ミーナ」
「私はハドソンさんのことを信じてます。でもアレはなかったこととして忘れられるのですね・・・。」
「おっ、おい泣くなミーナ」
目の前のやり取りに呆気をとられる三人
「なにがあった?」
「この二人に裸を見られました。」
「なっなに~」
驚愕する三人。
「おいおい正確にはスッポンポンはフローラだけで、ミーナとフェルトはタオル巻いてたから見えてないぞ。」
「どっちにしたって見たんじゃないですか!?」
終わる気配を見せない言い争い
「とりあえず。話しを聞かせてくれ」
・・・・・・・。しばらくして。
「二人は偶然とは言え十分反省しているようだし、三人共許してあげてはどうであろうか?」
「まぁそういうことなら。」
「じゃあ俺からいいか?」
タケルが今日あった出来事を話す。
「ほお~女かタケル。可愛いのか?」
「ハドソンさん今言いたいことはそのことじゃなくて・・・。」
「可愛らしい容姿の方でしたよ。」
「メリッサさん余計なこと言わないでくださいよ。」
「どんな子なんだ?」
「タケル教えて下さい。」
「アラン。ミーナまで・・・だから俺が話したいのは・・・。」
・・・・・そして
「これで満足か皆?」
「サラって・・・良い子なんだろうな~」
「絵が見てみたいです~」
「この話しはおしまい、本題に入るぜ」
ワキアイアイとした雰囲気から一転神妙な御面持になる一同。
「村の人によると、魔物が住み着いているとされるエリアはこの二つ。」
「ほ~。村の東と西にしかも随分離れているな。」
「けれど、襲われた魔物と戦った感じから、一体一体は大した強さじゃなかった。敵の規模にもよるが、ここは、二つに部隊を分けて行動しようと思う。」
「どう分けるんだタケル?」
「アラン、ミーナ、メリッサさん、ギルさんで東方面を俺とハドソンさん、フェルト、フローラで西方面ををやろうと考えているんだけど。」
「そこまでタケルが策を練ってるならそれで行こう。西方面はこのままタケルに任せるよ。明日からこの二組に分かれて行動。最終的な判断は各組のリーダー・・・と言っても俺とタケルなんだがその判断を優先してくれ。」
「了解。」
「じゃあ解散。」
各々が動き出す。明日の準備をする者、鍛練に勤しむ者、明日に備え就寝する者・・・。
「アラン。サンキュー。」
剣の手入れをしながら話しかけるタケル。
「騎士団でも経験したんだろ?その経験を活かしてやればいいさ。」
「そうだよな、今のところはヤバい依頼ではないし、伸び伸びやってみるよ。」
そう言うと立ち上がり縁側に出て二人に声をかける。
「お二人ともそろそろ休んだらどうですか?」
「タケル君。そうだね、切り上げようメリッサ。」
「あぁ、そうだな。」
「明日、バテバテでアランに負担かけないでくださいよ、なあアラン・・・って寝てるし。」
「ではお休みなさい。」
メリッサは足早に部屋に戻った。
「タケル君、明日から頑張ってください。」
「ありがとうギルさん。お休み。」
タケルはそのまま寝てしまうのであった。
翌朝、さっそく二手に分かれた義勇軍。
東方面
アラン組は聞き込みにギルの力もあり早々に住処を見つけた。
「どうしますかアランさん?」
「ギルどの位魔物はいそうだ?」
「数は100はいますが、個体の力はあまりなさそうです。」
「そうか・・・。俺とギルでやる。メリッサはミーナを守ってくれ」
「わかりました。」
「よし、行くぞ。」
奇襲によりあっさりと魔物は打ち倒されていった。
西方面
一方のタケル組は魔物の住処は見つけたものの、判断を決めかねていた。
「多いな・・・。ざっと400~500はいんぞ。」
「こちらが本隊だったんですかね?」
「向こうがどれくらいの規模の敵かわかんねーからなともいえないけど、その可能性が高いな。」
「どうすんだタケル?」
「フェルト、向こうに連絡する手段はないか?」
「通信鏡は使用中に魔力が継続して放出されるから過敏な魔物には見つかる恐れがあるわね・・・。ここは・・・。」
そう言うと、氷で小さな小鳥を作り出した。
「綺麗な小鳥さんですね。」
「感心してる場合じゃないわ。これで・・・。よし、今こちらの情報を持った。小鳥を飛ばしたわ。」
「もう少し様子見をしよう。上手くいけばアラン達と合流して・・・。」
「そんな悠長なこと言ってられそうにないぜ。」
魔物達がこちらに徐々に近づいてきていた。
「バレたのか?」
「マズイわね。あの魔力を感知して気づいたとしたら、上位種の魔物がいるわ。」
「そんな~。」
「こうなれば、先制攻撃を仕掛けるので三人とも援護頼みます。フローラは俺に身体強化の魔法を。」
「わかりました。タケルさん。」
最初こそ勢いのあったタケル組だが、徐々に消耗していく。
「まだ・・・こんなに・・・。」
「タケル一旦退くぞ。」
「ダメだよハドソンさん。このまま俺達が退いたら、あとを追いかけてきた魔物が村に入ってきてしまう。」
「けどよ、このままじゃ。」
「がしゃがしゃうるさいわボケ。」
突如、金棒を持った鬼達が現れ魔物を蹴散らす。
「おい人間共!儂らの仕事を邪魔するならテメーらもシバくぞ。」
「俺らも依頼されて来ているんだ。」
「じゃかしいどけチビ。」
タケルはハドソン達のいる方へ蹴飛ばされる。
「あの鬼ども・・・。」
「ハドソンさん。落ち着いて、彼らがやってくれるならそれでいいよ。様子をみよう。」
意気揚々と金棒を振るっていた鬼達もある魔物と対峙すると苦戦をしいられる。
「なんだこのデケーのは」
「俺達の攻撃がビクともしてないぞ」
「やべー攻撃が・・・。」
巨大な魔物の攻撃で吹き飛ばされる鬼達。
「あれが、親玉みたいね。」
「雑魚共を入れたとしても消耗した俺達だけで倒せるか?」
「厳しいわ・・・。」
「やるしかない。」
立ち上がるタケル。
「おいタケル。無茶するな。」
「ここまで来た以上ここで退けば村が襲われる。それだけはあっちゃいけないんだ。」
「タケルさん危ない。」
振り向くと巨大な魔物がタケルに襲い掛かろうとしていた。
(しまった。)
グオー
咄嗟に出した盾から顔を出すと
「待たせたな皆。」
アランが巨大な魔物の腕を斬り落としていた。
「大丈夫ですかタケル君。」
「アラン、ギルさん。助かったよ」
「おいおい、向こうはどうなった?」
「あちらは割と少数で敵の戦力も大したことなかったのですく終わりました。宿に戻る途中でフェルトさんの氷の小鳥がやってきて急ぎ駆けつけたということです。ミーナさんとメリッサは後で合流するでしょう。」
「頼もしいこと。」
手を差し出すアラン。
「やれるか?タケル。」
「勿論。わるいフローラもう一回身体強化魔法頼む。」
「はい。」
二人に魔法の力が湧いてくる。
「行くぞタケル。」
「おう。」
二人は抜群のコンビネーションで次々と魔物を倒していく。巨大な魔物も二人の手に掛かればあっという間に倒された。
「ふう。終わった。」
「おい、人間共。」
鬼達がお互いを支え合って言い放つ。
「別に感謝なんてしねーからな、貸しを作ったとか考えてんじゃねーぞ。」
「あの鬼ども・・・。」
「別にそんなこと思ってないさ。仲間を助けてくれてありがとう。気をつけてな」
「・・・。おい行くぞ。」
身体を支え合い鬼達は去っていった。
「皆さん大丈夫ですか!」
遅れていたミーナとメリッサが合流した。
「終わったよ。」
「そうですか。タケルは大丈夫?」
「大丈夫だよミーナ。ありがとう。」
「さあ依頼も終えたことだし報告しに行くか。」
帰りの途に着く一同。
「ギル。どうかしたのか?」
「隊長。いえなんでもありません。」
(この感じ。あの時の・・・。気のせいだよな。)
早速、インク村の村長に依頼の報告をした。
「皆ありがとう。こんなに早くやってくれるとは流石は義勇軍じゃ。」
「念のため七日間滞在し魔物が出ることがなければ依頼完遂とします。」
「なんとそこまで・・・。ありがとう。よろしく頼むよ。」
そして何事もなく七日が過ぎた。
「義勇軍の皆さんありがとうございました。これが報酬です。」
「確かに受け取りました。村長さん宿主にも無償で住まわせて頂いたことを改めて感謝します。とお伝えください。」
「はい。皆さんのご武運をお祈りします。」
「ありがとうございます。では。」
村長の家をあとにした一同。
「おいタケル。愛しのサラちゃんに挨拶しなくて良かったのか?」
「いいですよ、彼女は旅人だからどこにいるのかわからないし、それに、また会える。そんな気がするんで。」
「いいね~青春だ。」
和気あいあいとインク村を出ようとした時。
「見つけた。隊長。大変だ」
ボロボロのレオが一同の前に突然現れた。
「どうしたんだレオ!?」
「乱丸が、乱丸が・・・。」
義勇軍はまだ知らない。これがこれから起こる大事件の前触れだということを・・・。
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