雰囲気で読ませる小説が一番難しいと思いますが、本作は雰囲気がとてもよいです!
純文学寄りのサイコホラーだと感じました。
作中に横たわる兄の死体が、主人公と母を壊していく……
その死体のなまめかしさ、不気味さ、そして鮮烈さ。
また、偉そうですみませんが、文章がとてもうまいと思いました。
簡潔かつ濃密。特に視覚的な描写が鮮やかです。
吐き捨てるような一人称の語りがマッチし、くどくなく、ただただクールで鮮やか。
その静謐な描写の中にテロ的に飛び出す兄の死体の鮮烈さよ!
そのグロさを、全体としての暗く繊細な雰囲気により、グロ美学に昇華している。
精緻な描写と死体のコントラスト、全体の雰囲気、それらが見事にマッチしています。
脱帽です。