ヴィラン!

@nisemono_desu

プロローグ

「キャー!怪人よー!」

女性が叫ぶ。

「グハハハハ!我が名は怪人ロブスター男爵!我輩がこの公園を乗っ取ってやるー!」

ザリガニのような格好をした男がそう叫ぶと遊んでいた人々は血相を変えて逃げ出していった。

一人逃げ遅れた幼い少女は石に足を引っ掛けて転んでしまう。

「おやおやぁ?逃げそびれた小娘がいるなぁ…お前をエビ漬けにしてやるっ!」

とロブスター男爵は少しぎこちない走り方で少女に襲いかかる。

「助けてー!誰かぁー!」

声が人のいなくなった公園に響き渡る。

「怪人!そこまでだっ!」

真夏の日差しに照らされたその男は、身につけた赤色のヒーロースーツを輝かせそこに現れた。

「出たな!グーパンマン!」

「助けてーっ!グーパンマン!」

そう少女が叫ぶと男はニヤリと笑い。

「今行くぞっ!」

と叫び走り出す。


そんな光景を横目に、俺は買い出しの帰路についていた。

「おっ、今日もやってるなー。」

真夏の日差しに照らされた男は黒いヴィランスーツを輝かせ、ボソボソと歩いていた。


「ロブスター・シザー!!」

と叫びロブスターがヒーローをはさむと、そのまま思いっきし右に投げた。

投げ出されたその身は勢いよく飛んでいき、公園の端に生えていた木にぶつかる。

「くあぁ…」

グーパンマンは口から血を流し、よろめきながらも立ち上がる。


「なかなかやるなぁ、あのザリガニ」

そう呟き、持っていたビニール袋からアイスバーを取り出す。


「グーパンマン、もう終わりかぁ?」

ニタニタとロブスターが笑う。

「負けないで!グーパンマン!」

少女が叫ぶとヒーローは決意したようにロブスターを睨んだ。

「絶対に…負けないっ!!」

そうヒーローが叫ぶと驚異的な脚力でロブスターに向かって飛びつく。

「必殺・グーパンチ!!!!!」

そうヒーローは叫び、握った拳でロブスターをぶん殴る。

ロブスターはとっさにハサミで防ごうとするが、圧倒的な力によりハサミは粉砕され、顔を殴られたロブスターはそのままぶっ飛ばされた。

「正義は勝つ!」

ヒーローは握っていた拳をそのまま天に突き上げる。


そんなよくある光景に男はため息をつく。

「やっぱり負けたかー。いっつもあいつらって中途半端なところで油断するよなー。あんなんだから負けるんだよ。俺だったら立ち上がろうとしてるところにさらに殴りかかるし、なんならハサミで挟んだところで投げずに何度も地面に叩きつけるね。」

そうと男はボソボソと早口で喋る。

「にしても今日も大漁だったなー、晩飯は鍋にしちゃおう。」

そう言いながらビニール袋の中を覗いていると、突然後ろから人の気配を感じた。

「あのっ!」

振り返ると、そこには恐らく小学生ぐらいの少年が立っていた。

「ぼ、僕をっ…!」

少年は一度息を吸い直すと、思いっきり叫んだ。

「僕を、弟子にしてくださいっ!!」

「……え?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヴィラン! @nisemono_desu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ