第7話 MPを増やそう②

 俺はお母さんにおやすみと言って自室に戻る。

 いつもより早い時間に言ったせいか、少し不審がられてたけど何とか言い訳して誤魔化した。

 俺は自分のベッドに座ると、クツクツと笑い声を上げる。


「ふっ……遂にこの時が来た……! ファンタジーの定番——魔力を扱う時が!」


 俺は今からMPを上げるために、《魔力操作》なるスキルを入手する予定だ。

 《魔力操作》は名前の通り魔力を操作するスキルで、このスキルがあれば魔法スキルのMP使用量が最大0.7倍になる他に、裏効果として魔法スキルのレベルが上がりやすくなる。

 スキルにしては珍しい、ステータス補助系の効果だ。

 ただそれはゲームでの効果であって、現実では魔力を操作するのも楽になるのではないかと考えている。

 ゲームでは魔力を操作するなんて言うのは流石になかったからな。


 そしてそのスキルを手に入れるために、まずは《魔力感知》を入手しないといけない。

 俺はまだ自分の中にある魔力を感じることが出来ないのだが、これがあると魔力を感知出来る様になるため、俺には必ず必要になってくる物だ。

 

 早速座禅を組んで意識を自分の体に集中させる。

 ゲームでは、魔力はお腹あたりにあると言っていたので、お腹に意識を重点させてみる——が、


「…………全然分からない……。やっぱり前世では無かったものだから、分からないのかもしれないな」


 ステータスにはちゃんとMPがあったので、魔力自体がないと言うわけではないと思う。

 勿論偶に魔力がない者も居るらしいが、その時はステータスのMPの表示が『0/0』と表示されるらしい。

 俺自身は会った事はないが、ゲーム友達は1度だけ会ったらしく、自慢気に俺に話していたのを覚えている。

 何やら魔力がない者は、特殊な職に就いていることが多いとか何とか。


 おっと、無駄なことを考えてしまっていた。

 始めは集中力が大事だからな。

 後にストーリーの舞台となる学園の授業で言ってた。

 

 俺は更に自身の身体を感じるため、自分の意識を外の世界から遮断する。

 これは俺がゲームでキャラを操作している時に編み出した技? みたいな物で、1つのことに集中したい時にもってこいの技術だ。


 今俺は目も閉じているため、周りの情報は一切入ってこない。

 意識を深く深く自身の体へと堕としていく。

 感じろ……きっとあるはずなんだ……。

 

 



「―――ッッ!?」


 それは唐突に起こった。

 真っ暗な意識の中で一筋の光を見つけたかと思うと、意識が一気に覚醒したのだ。


 俺は遂に無限にも感じる時の中、やっと自分の体にある魔力を感じる事が出来た。

 それは・・・確かに俺の腹部ら辺にあった。

 詳しく言えば、鳩尾の少し下辺りだ。

 そこに温かい物が溜まっているのを感じれた。


 俺は自身のステータスを確認するためにゆっくりと目を開ける。

 そして目に飛び込んできた景色に俺はビックリしてしまった。


「なっ———明るい!? もしかしてもう朝なのか!?」

 

 そう——俺の部屋は窓から入ってくる太陽の光で明るくなっていた。

 と言う事は、俺は一睡もする事なく朝を迎えてしまったのか……。

 まだ体が幼いせいか、それとも集中しすぎたせいか——多分どちらもだろうが、体がフラフラする。

 俺は座禅を崩しベッドに寝転がる。

 その瞬間に物凄い眠気が俺を襲って来たので、抗う事なく目を瞑った。


「疲れた……少し……休憩だ……」


 俺の意識はそこで途切れた。








<><><>





「———こらっ! いい加減早く起きなさいっ!」

「———はっ!?」


 俺が起きると目の前には眉を寄せているお母さんの顔があった。

 その表情から怒っている事が容易に読み取れる。


「お、おはようお母さん……」


 俺は思わず尻すぼみになってしまう。

 お母さんの迫力に圧倒されたからだ。


 美人が怒ると怖いっていうのは本当だったんだな……。

 

 最早俺の体はガクブル状態である。

 そんな俺に向けてお母さんは語調を強めて聞いてきた。


「どうしてそんなに隈があるの!? 体調が悪かったのね!? だから昨日早く寝ようとしたんでしょ!?」


 どうやらお母さんは起こっていた訳ではなく、心配してくれていたみたいだ。

 これは悪いことをしたな……。


 確かに自分の子供が隈を作って居たら心配にもなる気がする。

 

「少し筋トレしてたら時間を忘れちゃってて……ごめんなさい……」


 俺は素直に謝ることにした。 

 心配してくれると言う事は、それ程俺の事を大切にしてくれていると言う事だからな。

 そんな人を心配させてしまったんだ。

 両親を亡くした俺としては心配を掛けたくない。


「……次からは気をつけるのよ。もう無茶はダメっ! ———分かった……?」

「…………うん……」


 俺は躊躇いがちに頷く。

 ごめんなさい、これから俺の人生は多分無茶ばかりな気がします。


 俺は心の中で何度もお母さんに謝った。







<><><>






 俺はあれからお母さんに「もう少し寝ていなさい」と言われたため未だベッドに居た。


「…………スキル獲得できてるか確認するか……。『ステータスオープン』」


________________

名前 シンヤ


種族:人間 5歳

職業:援助者

称号:転生者 努力する者 魔力を感じし者 NEW!


Level:1


HP:11/14

MP:20/20(+10)=30/30

体力:6

物理攻撃:3

魔法攻撃:4

物理防御:2

魔法防御:2

敏捷:6

命中:3

回避:5

運:93(固定)


【転生特典】

《ステータス自由閲覧》《言語理解:MAX》《記憶移行》


【職業専用スキル】

《鑑定:0》《付与魔術:0》《強化魔術:0》《覚醒術:0》



【一般スキル】

《採取:1》《疲労軽減:3》《魔力感知:1》NEW!

《苦痛耐性:1》



【通知】

《重要なお知らせ》


________________



「よし、ちゃんと魔力感知ゲットしてるな。それに称号も」


 俺はホッと胸を撫で下ろす。

 もしかしたらまだ手に入ってないかもと恐れていたので取り敢えず一安心だ。


 因みに『魔力を感じし者』と言う称号は、MP総量を+10すると言うシンプルな効果を持っている。

 後になるとそこまで必要ではないが、魔力が少ない今の俺にとってはありがたい称号だ。


 俺はステータスを閉じて瞼を下ろす。


「はぁ……もう当分は徹夜は止めよう……」


 そう胸に誓って俺は再び眠りについた。

 

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ゲームを全クリしたらゲームの世界にモブとして転生したのだが、クリア条件は陰ながら主人公を支えることだった あおぞら@書籍9月3日発売 @Aozora-31

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