第4話
芳川はホテルで山根の死を悼んでいた。
サイバーテロリストの犯行かも知れない。
園田やまだ身元の割れてない第3の被害者を殺したのも『コアラ』って奴の可能性がある。
ニュースキャスターが『留萌での事件の続報が入りました』と深刻そうな顔で言った。
第3の被害者の殺人現場に『RE』というダイイングメッセージが残されていた。メッセージは血で描かれていたららしい。
被害者が死に際に遺したのだろう。
『RE』はサーブリック記号では休みを意味する。
コロナで休業を余儀なくされた者の犯行だろうか?
サーブリッグ記号は、あらゆる種類の動作分析に共通的に適用できるように考えられ、人間の動作を徹底的に細かく分析し、基本要素(サーブリッグ)に分割した。 ギルブレスが考案したサーブリッグ記号は、人間の動作を17の基本的な動作に分類したもので、作業を詳細に分析して、より効率的な作業方法や動作改善を行うときに用いる。
渡辺明美はデータ室で頭を抱えていた。
留萌市の浄水場のシステムに何者かが不正侵入、水道水に加える水酸化ナトリウムの濃度を100倍以上に高める操作を行う事件が発生した。管理者が不正アクセスを発見して、速やかに正常値へ戻したことから市民への被害はなかったが、発見が遅れれば留萌市民に健康被害が出かねない事態であった。
『コアラ』は留萌市に恨みがある人物に違いない。
明美は捜査会議で市役所に相談するのがベストだと伸べた。
新川優愛に似ている神原蘭子が「あなた、冴えているわね」と明美を褒めてくれた。愛川欽也に似た捜査本部長はOKを出してくれて、「いつか一緒に働きたいな?」と言ってくれ、明美のやる気は100%になった。
風磨と麗美はまだ港にいた。
ニシン、マメイカ、ソイ、ガヤ(エゾメバル)、ヒラメ、ブリ(いなだ)などがここでは釣れる。
「私だけ申し訳ない」
麗美はフェラチオでお返しすることにした。
「んん・・・んふぅ・・・」
微かに息が漏れる音が足元から聞こえてくる。
自分の股間に顔を埋めて麗美がペニスを咥えてくれている。
唇が亀頭の形をなぞるように歪んだまま飲み込もうとしていた。
「ゆっくりで、いいよ」
風磨はペニスを握りしめる麗美の指を包むよう自分も握り、動きを助けてやっている。
風磨は麗美の口内に射精した。
久々だったので痙攣がスゴい。
ティッシュでザーメンを拭い、ズボンを履いた。
麗美もスカートを履いて、ポルシェのエンジンをかけた。
海岸線をドライブした。
LINE♪と風磨のスマホが鳴った。
芳川からメールが来ていた。
『今、どこにいる?一緒にいる天野麗美が、一連の事件の犯人の可能性がある。3人目の被害者が原野清史郎って人物だと判明したんだが、彼が遺したREってダイイングメッセージは麗美を意味していたと推測する』
園田と原野に関しては分からないが、少なくとも山根とは関係がある。『科捜研』の秀才な土門ではなく、『家なき子』の鬼みたいな父親が風磨の脳裏に浮かんだ。
麗美にセクハラでもしていたのかな?だとしたら、セックスに関して臆病になっていたはずだ。
『留萌港近くの海岸線を走ってる』
ポルシェは増毛町に入った。
日本海の海岸美がみられる雄冬海岸と暑寒別天売焼尻国定公園の一部である暑寒別岳を抱える。歴史は古く、町内には北海道遺産に選定されたレトロな建物が立ち並ぶ。ボタンエビの漁獲高が日本一であるが、アマエビやタコなどの水揚げも多い。良質の水を利用して酒造も行われており、明治時代からある國稀酒造(元:丸一本間合名会社)は、日本最北にある造り酒屋でもある。
町名の由来はアイヌ語の「マシュキニ」「マシュケ」(カモメの多いところ)から。
留萌管内南部、日本海側沿岸に位置する。西部の日本海と東部の山地に挟まれた険しい地形で、ほとんどの集落は沿岸部に集中する。ただし別苅以西の海岸は急峻な断崖が続き、国道231号開通まで船以外の交通手段がほぼ存在しない「陸の孤島」であった。
ポルシェは岩尾温泉ってところにやって来た。
岩尾温泉増毛町岩老にある温泉。
日帰り温泉施設「増毛町営岩尾温泉あったまーる」、および日帰り入浴も扱う宿泊施設「夕陽(せきよう)荘」、他に温泉施設の無い民宿が1軒ある。 両施設とも浴室から日本海を望め、天気が良ければ水平線に沈む夕日を眺めながら入浴できる。 所在地は増毛町岩老となっているが、温泉名は「岩尾」である。
風磨は愕然とした。12月から3月迄冬季休業なのだ。
風磨は「吐き気がするからその辺で吐いてくる」と嘘をつき、ポルシェを降りた。岩老漁港ってところまで走った。
麗美が追ってくるのではとビクビクしたが、寒いので外に出たくないのか追っては来ていないようだった。
あのときに簡単に連絡先を交換できたのにもからくりがあったのかも知れない。が、風磨には天野麗美っていう知人はいない。
芳川からLINEが入った。杉崎という元システムエンジニアが留萌署に自首してきたらしい。
杉崎は園田から中学時代、体が小さいことを馬鹿にされ、同僚原野からは恐喝されていたらしい。
原野はゴミ箱の裏蓋に『サーブリック』と血文字で残していた。杉崎の下の名前は休太郎という。
杉崎はかつて山根病院で事務員として働いていたが理不尽に解雇されてしまったらしい。
コナンにも金田一にもなれなかったポンコツコンビは翌日、留萌市を後にした。
留萌殺人事件 鷹山トシキ @1982
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