自己肯定感

ネルシア

自己肯定感

※本編では若干のレイプ、およびDV表現があります。

苦手な方、当事者、フラッシュバックを起こしてしまう方は直ちにブラウザバックすることを推奨します。

悩んでいる方は専門機関に相談しましょう。


以下本編


私は昔からできないことを責められてきた。

なんでいい点とれないの。

なんで朝起きれないの。

なんで仲良くできないの。

家庭で常に責められ、褒められず、そのまま高校生になった。


バイトをしても褒められた経験がないため、失敗するとひどく動揺してしまい、仕事にならなかった。

友達付き合いも常に相手の顔色を伺うようになってしまっており、とても疲れるものだと感じるようになってしまった。


そんな中でも私には楽しみがある。

スマホアプリだ。

怒られないし、その世界に没入できて誰も何も気にしなくて済む。

オンラインは苦手なため、ソロプレイでもできるものばかりやってしまう。

そんな中、メッセージが届く。


思わずスマホを投げ出しそうになる。


「初めましてー。このキャラ借りました。あざっす。」


胸が高鳴る。

初めてありがとうって言われた。


こうなったら人間はちょろいもんで。


「いえいえ、役に立てて何よりです。」


そこからいろいろな互いの身の上話が始まった。

自分は何もできなくて価値がないと思っていること。

いてもいなくてもいいと感じていること。


向こうも向こうで社会人のため仕事でストレスがたまり、その掃き出し口がないこと。

自分より社員がさぼっているのに給料が低いこと。

ほかの仕事探してもぜんぜんいい仕事がないこと。


なんだか初めて怖くないと思った。

この人と文字だけとはいえ、話していると落ち着く。


そんなやりとりが続くと妄想が始まる。

どんな見た目なんだろう。

年は?

身長は?

見た目は?

匂いは?

声のトーンは?


あぁ、会ってみたいなぁ。


それを読み取ったかのようにメッセージが届く。


「会ってみない?」


ドクンドクンと返信を打とうにも指が震える。

でも、これを乗り越えれば何かが変わると思った。


「ぜひ!!」


「ほんと!!私車持ってるからここにきて。」


そう言われてルンルンと浮足立つ。


親から電話がかかってくる。

どこで何してるの、と。

勉強するから遅くなると返すと、あ、そ。

と言われて切れた。


はぁーあ、とため息をつき、死にたくなる気持ちを抑えて待ち合わせの場所に向かう。


待ち合わせ場所に画像の車。

うん、ここだ。

鼓動が速くなると同時に足も速くなる。


こっそり車の中を覗くと人影がいなかった。


「お、あんたか。」


びっくりして振り返る。

ショートヘアの金髪にデニムのホットパンツ。

ロングシャツといういで立ちだ。


いろいろと情報量が多くて固まってしまう。


「あっははは、そんな固まんなって。うーん、ザ・箱入り娘って感じだね。じゃ、いこっか。」


「え、どこに?」


「どこって、ホテルに決まってんじゃん。」


ホテル?よくわからないがついていくことにした。


フロントで「休憩で2人。」

と伝える彼女の姿。

派手なホテルだなぁと思ってしまう。

ホテルってこんな簡単に入れるっけとも思う。


「うっし、あたしらの部屋はここだね。」


入るときれいに整えられた部屋が目に入る。


「てか、あんた、ここどういうことする場所かわかってる?」


キョトンとする私にその人はにやにやしてテレビをつける。

するとそこにはR18ビデオが映し出されていた。


「ここ、ラブホテルだよ?ww」


気が付かないうちに私の制服のボタンをはずし始めていた。


「ちょ、ちょっと待って・・・。」


「んー、いや。」


そのまま流されるようにことを済まされてしまった。


行為の後もその人は煙草をふかすが、これじゃものたんねぇなと、ぶつぶつと呟いている。


い、嫌だ。

飽きられるのは嫌だ。

捨てられるのは嫌だ。


初めてここまで仲良くなった人に捨てられたくないというスイッチが入ってしまった。


「捨てないで。」


ぽろぽろと涙を流しながら言葉が出ていた。

その姿を見たその人は目を丸くすると同時に少し意地悪な笑顔に変わる。


「これ少し耐えて。」


煙草を灰皿に捨てると。

両の手を私の首にかけ、少しずつ力が入る。

だんだん息ができなくなり、振りほどこうとするが、ほどけない。


苦しい、死ぬ、助けて。


パッと急に離され、体全体で酸素を欲する。


「あぁ、やっぱあんたいいよ。最高。」


その言葉に反応してしまう。


「・・・私って必要?」


「うん、この先もこういうことさせてくれるなら。」


甘く、邪悪な誘いにいいえと言えず、私はただただ堕ちていく。


Fin.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自己肯定感 ネルシア @rurine

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説