エピローグ
子供の頃、あたしがバカにしていたバカ正直な両親が言っていたっけ。
『誰かを踏み台にして幸せになろうとする行為では、本当の幸せをつかむことはできない。それどころか、もっと酷い罰があたる』
って。
本当だったんだね。両親は、赤の他人に騙されて殺されたけど。それはそれで幸せだったのかな? 人を信じられたのだから。
こんな風にならなきゃ、気づかないあたしって、本当にバカだね。
これまでたくさんの人たちを傷つけた。
だから、これは罰なんだ。
身体の中を駆け巡る毒は、簡単にあたしを殺してはくれない。
痛い。
苦しい。
暑い。
「おい、さっさとこの女も車に載せろ。あとはコントローラーで心中に見せかける」
ああ、なるほど。その偽装工作のために電気自動車をあてがったんだ。爺さんなかなかやるな。
けど、どれもきっと、あたしが不幸に追い込んだ人間とおなじ気持ちなのかもしれない。
やっぱり、人を踏みつけておいて、自分だけ幸せになろうったって、そんなうまくいきっこないよね。
もし、もしも次に生まれ変わることができたなら。その時は、もっと人を信じよう。もっと人に優しくしよう。手遅れだなんて思わない。だってあたしは、ちゃんと気づけたから。ちゃんと学習したから。
おしまい
クレイジー・フォー・ユー 春川晴人 @haru-to
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます