エピローグ

 子供の頃、あたしがバカにしていたバカ正直な両親が言っていたっけ。


『誰かを踏み台にして幸せになろうとする行為では、本当の幸せをつかむことはできない。それどころか、もっと酷い罰があたる』


 って。


 本当だったんだね。両親は、赤の他人に騙されて殺されたけど。それはそれで幸せだったのかな? 人を信じられたのだから。


 こんな風にならなきゃ、気づかないあたしって、本当にバカだね。


 これまでたくさんの人たちを傷つけた。


 だから、これは罰なんだ。


 身体の中を駆け巡る毒は、簡単にあたしを殺してはくれない。


 痛い。


 苦しい。


 暑い。


「おい、さっさとこの女も車に載せろ。あとはコントローラーで心中に見せかける」


 ああ、なるほど。その偽装工作のために電気自動車をあてがったんだ。爺さんなかなかやるな。


 けど、どれもきっと、あたしが不幸に追い込んだ人間とおなじ気持ちなのかもしれない。


 やっぱり、人を踏みつけておいて、自分だけ幸せになろうったって、そんなうまくいきっこないよね。


 もし、もしも次に生まれ変わることができたなら。その時は、もっと人を信じよう。もっと人に優しくしよう。手遅れだなんて思わない。だってあたしは、ちゃんと気づけたから。ちゃんと学習したから。


 おしまい

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クレイジー・フォー・ユー 春川晴人 @haru-to

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