入学式其ノ弐
葵さんの後についていき、俺たちは入学式が行われる講堂についた。
「咲花くん、本当に久しぶりだね。怪我はもう大丈夫なの?」
「うん、おかげさまで。もうすっかり元気だよ。」
心配してくれている葵さんに対して、俺は笑顔で答える。
「お前、怪我してたのか?」
「あぁ、少し前に、ダンジョンでやらかしたんだ」
「ダンジョンでのやらかしって、基本的に命に関わると思うんだが....本当になんともないのか?」
隣に座った男子生徒が、心配した目で見てくる。実際、三週間前に完治したから、師匠との鍛錬は再開している。もう、何度も死にそうになってるぐらい平気ではある。
「大丈夫だって。でもまぁ、心配してくれてありがとうな。えーっと──」
そういえば、俺ってここにいる中で葵さん以外の名前知らないな。聞いてもなかった気がする。
俺が固まっていると、男子生徒は不思議そうな顔をした後、何かを察したのか右手を差し出してきた。
「そういえば、まだ名乗ってなかったっけ?
「俺は
差し出された手をとって握手をすると。左隣に座っていた葵さんが、小さく手を挙げていた。
「じゃあ次は私ですね。
自己紹介を終えた葵さんは、隣に座っている燃えるような赤髪の少女に声をかける。
声を掛けられた少女は、嫌な顔をしながらも、渋々といった様子でこちら側を向いた。
「......
「なんで俺だけ名指し!?」
名指しで指名された若葉は自分を指さしながら困惑の声を挙げていた。
「それと──」
ギロリ、とこちらを睨みつけながら殺意にも似た感情をぶつけてきた。......いや、つーかこれ殺意しかないわ。
「あんたが、瑠璃の言っていた咲花ね。まずは瑠璃を救ってくれてありがとう」
「う、うん。どういたしま「ただ!」
返答を待たずに、声を荒らげた朱原はニコッと破顔し──
「瑠璃に邪な感情を向けたら抉るから」
「抉るって何を!?!?」
なんか凄いことを言い始めた。
え、怖いんだけど!?何を抉られるの!?もしかして男の象徴のこと言ってる!?
「あ、あのどこ見て言ってるんですか.....?」
「ん?別にどこも?」
「そんなわけ、ねぇだろ!完全に男の象徴狙ってる目してるって!!」
「女の子になれば、瑠璃に接触するのを許可するわ」
「さっき邪な感情を向けたらって言ってなかったか!?いつの間にか接触禁止令でてんの!?」
怖いことしか言わない朱原に対して物申しようとした瞬間。壇上の上に1人の生徒が登壇してきた。後ろを三つ編みにして纏めている女子生徒だ。
「お集まりの新入生の皆さん。お時間になりました」
生徒会と書かれた腕章を身につけている女子生徒は、円形の眼鏡を押し上げつつ、一呼吸あける。
「只今を持って、第百四十八回。入学式を執り行います。まず始めに───」
入学式が、始まる。
彼方へ届く、傾慕の唄(ラブレター) ハナユキ @aaary
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