学園と出会いと先輩と

入学式其ノ壱

「でかすぎるだろこの学園!どこだよここは!?」


意気揚々と校門を潜り、入学式が行われる場所に行こうと思っていた矢先、突如トイレに行きたくなったのでトイレに向かったのだが。


「完全に迷子だこれ、人っ子一人もいねぇし。....まじでどうしよ、これ」


うわぁ、本気でまずいな。周りが静かってことは、もう入学式が始まるんじゃね?

初日から遅刻かまして悪目立ちすんのは勘弁だぞ。


「とりあえず歩くかー。....ん?」


なんか、音が聞こえたような。


「────!!───しょ!」

「だ──!─────ない─!」


音がする方へ歩みを進めると、男女の声が聞こえてくる。なにやら言い争いをしているようだが。


「さっさ謝りなさいよ!あんたからぶつかってきたんだから!」

「だから!さっきから、謝ってるだろうが!」

「誠意が足りないのよ!誠意が!ひ、ひとの事、押し倒して、ましては、む、胸も触って!」

「ばっ、だからあれはわざとじゃないんだよ!よそ見してたんだよ!迷子になっちゃったから!」


成程、言い争ってる内容を聞くに、男子生徒が女子生徒にぶつかって、尚且つ押し倒して胸を揉んでしまったみたいだ。

ギャルゲの主人公かなんかか?あいつ?見た所、二人とも胸元にコサージュを付けているから新入生だと思うんだが、大丈夫なのか?


「まぁ、俺には関係ない事か、巻き込まれたくないし、ここから去ろう」


俺は踵を返し、立ち去ろうとし──パキッ


「あっ...」


足元を見ると、折れた

恐る恐る後ろを振り返ると.....うん、ですよねー。すっごい、こっち見てる!


「あっ、うっす。おつかれしたぁー」

「ちょと、待ちなさい!」

「ぐえっ!?」


こ、こいつっダッシュで近づいてきたと思ったら、Yシャツの襟を思いっきり引っ張りやがった!首、締まるっ。あっ、まずい、飛ぶ。


「お、おい、その人、青い顔通り越してやばい顔色になってるけど!?」


俺が死にそうになっているのに気付いた男子生徒は、慌てて女子生徒を引き剝がす。


「かはっ!?ごほっ!ごほっ!」

「お、おい。大丈夫か?」

「うっえ....悪い、助かった」


締まっていた喉を摩りながら、俺を締め落とそうとした女生徒を睨みつける。


「お前、俺を殺すつもりかよ。川の向こうでおじいちゃんが両手を大きく振ってたぞコラ」

「ふん、勝手に人の言い争いを盗み聞きしていたあんたが悪いんでしょう?」

「盗み聞きなんてしてないわ!迷子になって彷徨ってたらここに着いたんだよ!だいたい、こんな場所で盗み聞きもクソも──「あー!!扇菜せなちゃん!こんな所にいんですか!?もう入学式始まっちゃいますよ!?」


後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきて、動きを止める。


「る、瑠璃?なんでいるの?」

「どうしてもなにも、入学式が始まるのに全然見当たらないから探しに来たんですよ!」

「え、もうそんな時間なの!?」


驚きながら画面ウィンドウを開いた扇菜と呼ばれた子は、現在の時刻を確認して頬を引き攣らせる。


「やっば!式に遅刻しちゃうじゃん!瑠璃、早く行こ!!」

「うん!あっ!咲花君!?久しぶりですね!合格おめでとうございます!色々話したいことはあるけど、入学式始まっちゃいますから!早くいきましょう!」

「え、ちょまっ──」


葵さんに腕を掴まれた俺は、そのまま入学式の会場まで引っ張られた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る