読後、そう問われているようにも思いました。
気持ちの問題で、世界が曇天に包まれたように見えたり、ノイズのようなものが感ぜられたり、体が鉛のように重くなったりすることはありませんか?
それらすべては精神的なものなのかもしれないけれど、でも、そこまで絶不調になるのならそれは確かに病気だなと思いました。それも死に至るほどの。
主人公は、常に『自分』を認めてほしかった。アイデンティティを求めていた。しかしそれは本人によって塗りたくられて偽物になってしまう。残念なことに、塗るのが上手い人ほどアイデンティティは別人のものになってしまう。
彼女は、特別塗るのが上手く、しかしそれ以上に本質が見えてしまう人だった。生きづらかったでしょうね。それでも生きることが正解だと押し付けて来る世界で、遥斗さんの存在は救いでした。
これは、世界とのズレに苦しむ人々の救いになる作品だと思いました。