第14話

おかしいおかしい!!

なんでこいつら気がつかないんだ!?

俺は今非常に混乱していた。

なぜなら、オークが上を向いても、怪訝な顔をするだけで逃げようとしたりしないのだ。


うん。分かってる。称号のせいだ。

落下者には隠密も上がるという能力がある。

それのせいだろう。

だがな、落ちて仲間が死んでるのに気付かないのか!?

まぁ、そのせいでもう52体も倒せた。

レベルも4上がった。

そのお陰で、もうレベル23だ。

もう意味が分からないくらいに成長が早い。

レベル25からが物凄く成長が遅くなるらしいが、大体そこまでたどり着くには普通の人なら半年ほど掛かるらしいから、俺は異常だ。

ま、まぁ忘れよう。うん。


俺はもうすぐ夕方かな? と思い外に出た。




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俺は帰りながら考えた。

よくよく考えたらレベルの上がり方が早すぎる。

レベルの上がり方は人によって変わるが、普通今まで倒した数だけじゃレベルは10位しか上がらないだろう。

物凄く早い人でも15位だ。


「うーん。」


俺は異常なのは分かる。

だが、何故かを考えてもほんの少しも思い当たるところがない。

しょうがない。こう言うときは俺の得意な考えないことにしよう。うん。

本日何回目か分からないが、こんなことが出きるようになってきたのは心に余裕が出来てきたのだろうな。


次は金銭的に余裕を作るために、オークの武器を売るか。

オークの武器は職人が作ったものには劣るものの、ある程度の強さはある。

ちゃんと使えば何年も使えるし初心者の武器としては十分なレベルだ。

ゴブリンの武器よりもオークの武器のほうが少しだけ強いため、今はゴブリンの武器を手放しオークの剣を使っている。

これだけの数があるとなかなかの価格で売れるだろう。

結構重かったので、本当に高く売れるはずだ。


「ついた!!」


重いものをもって歩くと言うのは思ったよりも疲れる。

俺は足早にギルドに入った。


「すみません。買い取りをお願いします。」

「はい。分かりました。」


受付嬢さんは俺が出した剣を鑑定しだした。


「あ、すみません。受付嬢さん。」

「ちょ、敬語はやめてください!! それと、私の名前はユノと言います。どうか呼び捨てでお願いします。」

「あっ、いや、その......うん。わかった。ユノさんだね?」

「いや、呼び捨てでお願いしますってば!!」


はぁ。最高待遇ってちょっとめんどくさいな。

俺は知らない人には敬語で話し、呼び捨てなんて出来ないのだ。

そんな、めんどくさそうな雰囲気を少しだしていると、ユノさんは物凄く慌てた様子になった。


「あっ、いえ。それでいいです......。」

「ありがとう。じゃあ、お礼と言ってはなんだけど、敬語は使わなくてもいいからな?」

「えっ?」

「だって、使いなれてないでしょ?」


ユノさんの敬語は一見変なところはないが、良く聞いていると少しだけ集中しているような声で喋っているのだ。

そこまでして喋って貰いたくない。

最高待遇だからと言って他の人の行動を阻害するのはいやだ。


「えっと、うーんと。いいの?」

「はい。それに年上の人に敬語使われるのはちょっと緊張する。」

「そっか。はぁー。疲れたぁー。」


ユノさんはため息をついた。

やっぱり慣れてなかったんだな。


「じゃあ買取りするね。あれ? 魔石は無いの?」

「ギクゥッ!!」


魔石は全てメイラにあげている。

しかし、そう言うものは原則色々な人への配慮としてギルドを通してではないと売ってはいけないということになっている。

大きな薬屋が小さな薬屋と同じ価格で素材を買えてしまったらそこしか発展しなくなったりするかもしれなくて、新たな発見などが少なくなると言うことで禁止されているのだ。


「あ、そっか。貴方の彼女さんって薬屋だったもんね。うんうん。深追いはしないよー。」

「かかかか彼女!?」

「えっ、違うの?」

「違う!!」


お、俺は付き合いたい位だが、メイラはそうじゃないだろう。

もっともっといい男になって、メイラと付き合えるようになるまでは駄目なんだ。


「そっか。そんなに強く否定するなんて。嫌いなんだ。」

「違う!! あっ。」


つい大声を出してしまった。


「へー。じゃあ、好きなの?」

「い、いや......キライジャナイ(ボソッ)」

「えぇ? 聞こえないなぁ。」

「うぅ。俺はメイラが好きだ!!」

「!?」

「あっ!!」


やばい!!

俺は周りを見渡した。

ふぅ。メイラはいない。


「ニタニタ。」


ユノさんが少し顔を赤くして、笑いながらこっちを見ていた。


「ゆ、ユノさん!! 今言ったことは忘れてくれ!!」

「えぇー? どうしよっかな~。」

「もう!! 早く鑑定してくれ!!」

「はいはーい。」


俺はユノさんを急かした。

「はい。買取価格は50000円になったわ。」

「おぉ。」


1日分の食費としてはかなりいい方だろう。

それに、魔石の分は抜いてあるので実際はもっと高いだろう。


「あ、言っておくけど、これは買取価格が増加した数字だからね? 一個一個で増加額が違うけど、大体それがなかったら30000円位だからね。」

「そうなのか。」


三万円でも十分多いのだが......。

本当に一週間でここまで強くなるなんて思わなかった。

この調子でいったら一年ほどで世界最強を目指せるんじゃないか?


......自惚れちゃ駄目だ。

そう。俺はもっと慎重にならなきゃ駄目なんだ。

俺が死んだらメイラが悲しむだろ?

そんなの駄目じゃないか。


「あれ? 彼女さんのこと考えてる?」

「うん。俺が死んだらメイラが悲しむかなーって。」

「えっ、重っ!! そんなに重かったら彼女さん疲れちゃうよ?」

「そ、そうかな? って、彼女じゃない!!」

「あはは~。」


俺は少しムッとした。

まぁ、本気ではない。

ユノさんは事あるごとにからかってくる。


「じゃあまた明日。」

「え? 明日も来るの?」

「え? そりゃ、狩りが終わったら売りに来るでしょ?」

「???」


ん? どういう事だ?


「君って一週間くらい素材とかを貯めて売るタイプじゃないの? 今回は一週間分位の量だったけど。」

「そんなの無理だよ。」

「え? なんで?」

「何でってそりゃ、冒険者になったのが一週間前だからだよ。」


ユノさんって、案外抜けてるところがあるんだな。

まぁ、人によって長所と短所があるからな。

いまだにユノさんは頭にクエスチョンマークを浮かべている。


「???」

「始めのうちは草原に居たから現実的に無理なんだよ。」

「......今の話ってほんと?」

「そうだけど。」

「今十五歳なの?」

「そうだけど。知らないの?俺って悪い意味で有名人なんだけど。」

「私は最近ここに来たから分かんないけど......。ってあれ? 十五歳で銀級?」

「このオークの武器も昨日と今日の分だよ。」

「二日でこの量???」


そういったっきりユノさんは黙ってしまった。

頭から湯気が出そうなほど考えてるな。

俺はそれを少しの間眺める。

すると......。


「ええええぇぇぇぇ!!!!」

「うわぁっ!!」


なんだ!? ビックリした。

いきなりユノさんが叫んだのだ。


「もぉ。ビックリしたなぁ。近くで叫ぶなよ。」

「あっ、ごめんごめん。それよりも君がしてることの重大さ分かってる!?」

「あぁ。僕って凄い成長速いよね。ちょっと意味が分からない程度には。」

「あぁ。分かってるのね。最年少でも銀級になったのは16才だし。」

「えぇ!? そうなの!?」

「うわぁ、やっぱり分かってなかったぁ!!」


と言うことは俺は最年少の銀級なのか!?

なんかデルさんは当然かのようにやってたけどな......。

俺はちょっとだけデルさんが怖くなった。


「それにね? 普通はパーティーでも消耗などを考慮して、五体から十体くらいしか狩らないんだよ?けどそれを二日で百体近く狩るなんて......しかもソロで!! 化け物だね!!」

「......聞かなかったことにしておくよ。」


俺の戦い方は体力をほとんど消耗しない剣なども使わないし、使うといったら回復薬位だ。

思ったよりも強かったんだな俺って。


「ま、そんなことはどうでもいい!! 帰って休むよ。」

「う、うん。分かったわ。」


こんなことにいちいち精神をすり減らしていたら駄目だよな。

特技、聞かなかったことにする、だ!!


俺はそのまま帰宅した。



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帰ったらすぐにメイラが出てきて、何故か謝ってきた。


「ごめんなさい!!」

「えぇ?」

「昨日睡眠薬を飲ませたあとにちょっと魔が差しちゃって......。」

「え?」


え? なに? 俺昨日の夜なんかされたの?

まぁ、メイラにならなにされてもいいんだが......これだけ謝ってくると言うことはとんでもないことをされたのか?


「リエルの事を抱き締めちゃった!!」

「なんだ、そんなことか。」

「ごめんなさい!!」


ひゅー。ビックリした。

呪いを掛けたとかも覚悟していたため、全然悪いことじゃなくて、逆に嬉しいことだった。


「全然いいよ。」

「本当? 許してくれるの?」

「あぁ。許すというかまず怒ってないから。で、抱きついてると落ち着いて眠れるのか?」

「え、あぁ。うん。そうだよ!!」

「そうか。なら、毎日そうしてていいぞ。」


......ご褒美だ。


「いいの? 嫌じゃない?」

「全然いやじゃないぞ。......好きな人から抱きつられていやだと思うやつ居ないだろ?(ボソッ)」

「え? なに?」

「いいいいや、何でもない!!」


あぶねぇー。つい本音が出てしまった。

聞こえてないようだからいいが、聞こえてたら恥ずかしすぎる。

ただ、抱きつられて居たら寝られないため、一つだけ条件を付け足すことにした。


「抱きつくときには睡眠薬を飲ませてくれるってのが条件で良いか?」

「いいよ!!いくらでも飲ませてあげる!!」

「いや死ぬだろそれ。」


まぁ、メイラは喜んでるみたいだし俺は満足だ。

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ハズレスキル「落下ダメージ減少」と世界のシステム「飛び降り自殺」を組み合わせると人類初の人間メテオが使えました。追放された俺は取り敢えず最強になって楽しく暮らしたい 黒飛清兎 @syotakon

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