第13話
「頑張ってね!!」
メイラはそう言うと、少し強引にリエルを出発させた。
「チラッ。」
僕はリエルが出ていった方向を見た。
帰ってくる様子はなく、どんどんと進んでいく。
リエルが見えなくなったことを確認してから、メイラは紙のようにへなへなとその場に座り込んだ。
「はぁ~。やってしまったぁ~。」
メイラは自分の頭をポカポカと殴った。
「うぅー。僕は卑怯ものだぁー。睡眠薬を飲ませてから寝てるリエルを抱くなんて......ってまって!? 言葉にしたらかなりやばいことしてない!?」
もちろんいかがわしいことはしていない。
ただ、少しだけ抱き締めていただけだ。
だが、リエルが自分のために働いてくれているのにその人に騙すようなことをした自分が恥ずかしい。
本当は謝りたいのだが、恥ずかしすぎて謝れない。
いつもならもっといいアイディアが出るのだが、睡眠不足で全然頭が回っていない。
「け、けど、睡眠薬を飲ませてるから昨日の事は絶対に覚えていないはず!!」
絶対にバレることはないはずだ。
......しかし、それでいいのだろうか。
バレないように悪事を働き、気付いていないリエルと仲良く出きるだろうか......。
こんな僕をリエルは好きになってくれるだろうか......。
「謝ろう。」
メイラは決意した。
「まぁ、まずは魔力回復薬を作らなくちゃ!!」
メイラはリエルの頑張りに答えるためにも、大急ぎで作り始めた。
俺は今、豚小屋という迷宮に向かっている。
豚小屋には、オークという種類の魔物がいるらしい。
オークはゴブリンの強化版の様なものだ。
ゴブリンでは一体一体の能力はそこまで変わらないが、オークの場合、色々な能力値を持っていて、人間のように能力によって変わった武器を持っているのでゴブリンよりも手強い。
しかも、一体一体がゴブリンよりも強いので戦いはかなりきついものとなるだろう。
早足で歩いていき、遂に入り口についた。
「ちょっと止まってください。」
俺は門の前で武装した男に止められた。
「ギルド証の提示をお願いします。」
「あっ、はい。」
そうだここは銀級上位の迷宮なんだった。
ここにはある程度の実力がなくては入れない。
俺は新しく銀級になったギルド証を出した。
「あっ!! あなたがリエル様ですか!?」
「はい。そうですけど。」
「ちょ、敬語はやめてください!!」
「えっ、なんでですか?」
さっきまでも丁寧な態度だったが、さらに丁寧な言葉遣いになり、腰が低くなった。
俺のギルド証になにか書いてあったのかな?
「え? 知らないんですか? 貴方はギルドのなかでギルマスと同じレベルの対応をしなさいってなってるんですよ? 私はギルマスに会ったことがないのでドのくらいで対応すればいいのか分からないのですが、いつも通りじゃさすがに駄目かな? と言うことで、出来る限りの礼儀を尽くしています!!」
「そ、そうなんですか......。」
そうか。デルさんの仕業か。あの人ならやりかねないな。
契約の時最高待遇をするとは言われていたが、ここまでとは思わなかった......。
あの悪い顔をしたデルさんが脳裏によぎる......。
「ささっ、お通りください。お止めしてしまい申し訳ございませんでした。快適な迷宮ライフを楽しんでください!!」
と言われ、半強制的に中に入れられた。
そりゃ、会社で言うところの社長と同じ立ち位置にいる人とずっといたくはないよな。
俺は迷宮ライフってなんだ? と思ったが、スルーし迷宮へと入っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はいつものように魔物を探し始めた。
音をたてないように抜き足差し足で探していく。
すると、五分くらいたってオークを見つけた。
俺は物陰に隠れて観察した。
オークの数は4体。
剣士が2体。盾使いが1体。弓士が1体いた。
まずは先制攻撃だ。
俺は人間メテオを使った。
ゴブリンの時のように弓士から狙おうと思う。
微調整をして弓士に当たるようにした。
ヒュゥゥゥン
落ちていく。
完全に当たると思ったそのとき、弓士のオークが偶々上を向いてしまった。
(やばい!!)
「ぶぎぎぎゃっ!!」
オークは慌てて叫び回避行動を取った。
くそっ!! 油断していた!!
俺は目一杯微調整をして弓士に当たるようにした。
「ブギャッ!!」
当たった!! しかし、直撃ではなく下半身に当たっただけな様だ。
しかし、オークは悶絶している。
「............あっ!!」
当たった場所をよく見ると、そこは男のエベレストだった。
「ブギャー!!」
弓士のオークは声にならない悲鳴を上げながらのたうち回っていた。
......はっ!! チャンスだ!!
俺はもう一度人間メテオを使った。
俺は減った体力を回復するため、空中で回復薬を飲んだ。
まぁ、落下しながらなので飲んでるというよりは浴びてるみたいな感じだった。
そして......。
「ブヒャァッ!!」
オークは哀れな悲鳴を上げて絶命した。
オーク君......なんかごめんなさい。
よし!! 次はどいつを倒すか......。
ビチャビチャビチャビチャ!!
「えっ!?」
空から液体が大量に振ってきた。
ん? この回復する感じは......回復薬か!!
そうか。さっきこぼしたやつが全部降ってきたんだ。
だが、そのお陰で体力がほぼ全回復した。
がんがん倒すぞ!!
まずは盾使いだ。
俺はまた人間メテオを使った。
また上から来てるのに、何故かバレずにヒットした。
回復薬を飲み、また人間メテオを使った。
それからは簡単に二回当たり、どちらとも倒せた。
ーレベルが上がりましたー
おぉ。レベルが上がったか。
俺はステータスに変化が無いかどうか見てみた。
「は?」
見てみて俺は呆然とした。
落下ダメージ減少がレベル9になっていたのだ。
いやいやいや。おかしいって。
レベル9と言えば金級上位の人のレベルだぞ?
いくら命懸けだからと言って一週間ほどでこうなるのはおかしいんじゃないか?
......よし。見なかったことにしよう。
俺は狩りを続けるのであった。
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