第3話
ギャングの恩田と鵜殿は若い頃からの相棒であったが、初老にさしかかり、共にやくざ稼業からの引退を考えていた。最後の大仕事と、八丈島空港で5億円の金塊強奪に成功、ほとぼりが冷めるまで恩田が隠し持っていずれ換金する計画であった。
静かな隠退生活を待ちながら素知らぬ顔で日々を送る恩田だったが、金塊をせしめた秘密を、日頃から不注意な鵜殿は自分の入れ込んでいたキャバクラのセイコに漏らしてしまう。Perfumeのかしゆかにどことなく似てる。実はセイコは、売り出し中の麻薬密売組織の鷹木忠治の情婦であり、恩田と鵜殿は鷹木から付け狙われる事になる。
鷹木の手の者から危うく難を逃れた恩田は、自身の隠れ家に鵜殿を匿い、彼の甘さと自分たちはもう若くはないという現実を諭すが、鵜殿は独断で鷹木と対決し、拉致されてしまう。
鵜殿の愚かさに苛立ちつつ、二人の腐れ縁を追想し、恩田は忸怩たる感慨に耽る。ほどなく鷹木から、鵜殿と金塊の交換が持ちかけられてきた。
2040年に入って3ヶ月、コロナオルトロスで北海道は壊滅的になった。ロシアが侵攻してきて礼文島が乗っ取られた。ウクライナが戦闘用ロボットの開発に成功した。
これは罠に違いない、と悟った恩田は、仁義なき振る舞いに及んだ鷹木を倒して鵜殿を救うため、旧友・明保野一郎らと共に、隠匿していたサブマシンガンと金塊を携え、取引の場へ赴く。
取引場所は宵闇のヤケンヶ浜だ。
旧八重根の隣にある海水浴場。溶岩を主体とした入り組んだ岩場があり、海底が急に深くなるため、単なる海水浴よりも、シュノーケリングやダイビングに向いている。
「もうじきで桜の季節だな」
一郎は腰の痛みに顔を顰めた。
鷹木の正体は清水だった。
一郎のスマホが鳴った。つい最近、駅構内での歩きスマホが禁止になった。一郎はついバイオハザードウォークをやってしまい、罰金1000円を取られた。
相手は清水だった。
『岩場に金塊を置け』
ボストンバッグ内に金塊が入ってる。恩田は肩が限界に来ていた。無事、危機を脱したらマッサージ屋に行こう。
金塊を置いた瞬間にスナイパーライフルで撃たれるかも知れない。
岩場にボストンバッグを置いた。
銃声は聞こえなかった。
安堵の息を吐いた。
『鵜殿は小屋にいる。1人で行け』
小屋に恩田はやって来た。
鵜殿は体をバラバラにされていた。
清水は非通知なのでこっちからかけることは出来ない。
「ふざけるな!」と怒鳴ってやりたかった。
時限爆弾が爆発し、恩田も死んだ。
清水は城みたいなホテルの一室で黒い煙を眺めながら微笑んだ。
八丈島殺人事件 鷹山トシキ @1982
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