第9話 初任務

ポスタル森林の浅部を進むこと30分、先頭を進んでいた兵士が片手を挙げて手足の合図を送る。


「メイナード少佐、魔力感知を」

「はい」


魔力感知とは体外で自分の魔力を薄く広げるようにする事で、一定範囲内の魔力を持つ生物を探す技術だ。

俺はガリア大佐の指示通り魔力感知を行う。

すると、前方100m先に5匹の魔物の魔力を感知した。

俺は一切魔物の気配など感じなかったが100mも先の魔物を見つけるとは。森の中だから視認できたわけでもない。さすが熟練の兵士だとしか言いようがない。


「前方100m、魔物らしき魔力が5つ」

「メイナード少佐、やれるか?」

「もちろんです」


部隊の大半はそのままで、俺と俺の部隊から連れてきた数人で魔物の近くまで進む。

近くまで来ると敵の正体が分かった。ゴブリンである。

ゴブリンは1.3m程の身長の汚れた緑色をした魔物だ。上位種ならともかく、ただのゴブリンなので知能は低いから簡単に討伐できるだろう。

俺はそばにいたフィリア中尉に小声で話しかける。


「俺の魔術で先制攻撃を行うから敵がひるんでいるうちに一気に畳みかけろ。」

「了解しました。」


フィリア中尉から配置に着いたとのアイコンタクトがあったので俺は魔術陣を展開する。

第二階梯魔術”火矢”


火矢は最も簡単な火属性の攻撃魔術である。魔術陣も簡単なので発動までの時間も短い。故に戦場では多くの魔術師に好まれて使用される魔術である。

俺の放った火矢は4体のゴブリンを貫いて絶命させた。残る1体もわずかに火矢がかすり、怪我を負っている。茂みから飛び出た隊員が素早く首をはねた。


俺は魔石を取り出すためにゴブリンの死体に近づいた。俺はゴブリンから漂う強烈な汚臭に顔をしかめる。そんな顔をみたガイル大尉が俺に尋ねる。


「もしかして魔物の討伐は初めてでしたか?」

「あぁ。魔物というのはこうもみんな臭いのか?」

「種類によりますが基本的に臭い種が多いですね。獣種の獣臭さはまだ我慢できる人は多いですがゴブリンなどの亜人系はかなり臭いので嫌われています。」


俺がゴブリンの臭いにいら立ちながら会話しているとどうやら魔石の取り出しが終わったようだ。


「中隊長、死体はどうしますか?」

「放置だ。どうせウルフ系の魔物が食うだろう。」


本来、魔物の死体はアンデットになる可能性とその臭いから燃やすのがルールである。しかし、今は敵に見つからないように行動中なので火を起こして自ら位置を教えるのはもってのほかである。


俺たちは本隊の場所に戻った。俺はすぐにガリア大佐に報告に行った。


「その様子だと無事に討伐できたようだな。敵は何だった?」

「ゴブリンでした。」

「そうか。死体を燃やさなかったのはいい判断だ。」

「ありがとうございます。」

「よし、では探索を続けよう。」


その後も順調に探索を続けたが、敵の痕跡は見つけられなかった。

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異世界転生したから帝国軍人として成り上がる @tree-cats

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