第8話 ポスタル森林

翌日の朝、第一師団はポスタル森林に向けて軍事都市イスタリアを出発した。第二大隊、第三大隊、第一大隊の順で移動した。

今回、イスタリアに駐屯していた第一師団が出動したことによりイスタリアに駐屯している軍は警備の兵を除けば0なので今イスタリアが攻めれれるとすぐに落ちてしまうだろう。しかし、ポスタル森林は対ファーレンス王国の重要な場所である。


ポスタル森林は魔物が跋扈する広大な森林地帯でイヴァーリアス帝国とファーレンス王国を分断している。ポスタル森林はゴブリン、オーク、オーガのような亜人系の魔物とウルフ系の魔物が多く生息する。両国とも昔から森林の中に砦を建てようとしてきたが、亜人系、ウルフ系共に大規模な群れを形成していて何度も砦の建設に失敗している。だから、イヴァーリアス帝国はポスタル森林からファーレンス王国の侵攻は考えておらず対策を全くしていなかった。

仮に、砦が完成した場合、ポスタル森林からイヴァーリアス帝国に侵攻されれば帝国東部が内側から攻撃されて東部が壊滅的な被害を受ける事は容易に想像できる。

だからこそ噂の真偽を確かめ、噂が本当ならば建設に取り掛かった砦を確実に破壊するために軍隊2中隊分、約300人も人を送った。


しかし、結果は部隊の壊滅と砦の建設が予想よりも遥かに進んでいるという事だった。東部の守りを担う東部方面軍にとって緊急事態であろう。






10日ほどかけてポスタル森林の近くまで来た第一師団はポスタル森林の手前で簡易的な野営地を設営した。もちろん、こんな大規模な野営は初めてだったので中隊の指揮は副官のフィリア中尉に任せた。流石、女性でありながら若くして中尉にまでなっただけのことはある。その指示は的確で他の中隊よりも早く設営を終えていた。


早く終わった第一中隊は部隊の中から何人か選抜して第二大隊の大隊長であるガリア大佐と合同で周囲の偵察任務を師団長から言い渡された。初日の偵察任務なんてポスタル森林の浅部しか行かないので重要度は低い。そんな任務に俺やガリア大佐などの佐官が出るのは恐らく俺の初めての任務を安全に行うためだろう。任務内容から、師団長の少し過保護な部分が垣間見えた。




フィリア中尉に部隊から30人ほど選抜するように指示して俺も装備の準備を整える。鎧は佐官以上は基本的に個人で用意したものを着ているが、俺は軍に入隊したてなのでそんな金もなく一般兵と同じもの着ている。入隊する時に鎧を準備してやると言われたが、メイナード家の財政状況からいい鎧は無理そうだったので、代わりに上質な剣を貰った。腕に赤い布を巻いているのは少しは目立とうとあがいた証拠だ。


「ガリア大佐、お待たせいたしました。」


「メイナード少佐だな。この中で少佐が一番の魔術師であるからいざという時には期待している。」


「了解です。」


「訓練とは違いいつ敵に遭遇するか分からないので常に気を引き締めるように。」


「はい」



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