第2話 カップル
私たちの間に明確な線引きがあったとしても、それが第三者に可視化されることはない。
いつみてもスキンシップが激しい2人に対して、友人たちがやることはひとつ。
「そこのカップル〜。はぐれないでね〜」
私たちはカップルと呼ばれ、扱われる。
「違うから!ちょっと〜」
はっきり否定する私と何も言わないあの子。
何も言わないからカップルなんて呼ばれるんだよ、と内心怒りつつもそれを言葉にできない。
「いやだって、そこらのカップルよりカップルじゃん。
そんなにイチャイチャしちゃって」
スキンシップが激しいことは否定できないし、距離感が近いことも明白な事実だ。
ただ、世の中のカップルがイチャイチャしているほど仲が良いとは限らないように
関係の深さが必ずしもスキンシップなどの外側に出るものでもないはずなのだ。
本当に仲が良いのだろうか。
一瞬現れた疑問はどんどん膨れていく。
それとは別に、私が"カップルいじり"に対してはっきり違うと言うのには理由があった。
あの子には恋人がいるのである。
出会った時から聞いていた恋人の存在。
私が直接会ったこともないし、なかなか話にも出てこない。
少しの罪悪感を感じる私は、あの子に恋人がいることを度々確認する。
カップルと呼ばれているのに否定も動揺もしないあの子。
あの子の心の中を覗いて見たいと切に思った瞬間だった。
この世で一番悲しいハグ 波野 @namino_2525
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