この世で一番悲しいハグ
波野
第1話 距離感
「ねぇ、2人って付き合ってるの?」
仲良くなって半年経ってから、友人にそう尋ねられた。
「私と誰が?」
「いや、あの子だよ」
「あぁ」
彼女が誰を指しているのかはすぐにわかった。
今年初めて授業が被った、あの子である。
私たち大学生はコロナウイルスの影響でオンライン授業が続いたため、
対面授業になったのは今年度からだった。
「あの子とは今年初めて授業が被ったんだよ。付き合ってない。」
「本当に?全然言ってね?」
なぜ友人が私にそう尋ねてきたか、理由は簡単である。
距離感が異常に近いからだ。
距離感が近いというフレーズから、みんなはどのような状態を想像するのだろうか?
手を繋ぐ?体と体が触れ合ってる?
私たちの場合は、それはハグだった。
授業の間の休憩では、ほぼ常にあの子からバックハグをされている。
私よりも身長が高いあの子はそのまま腕をぎゅっとして、私を引き寄せる。
その間、あの子は何も言わない。
「疲れてるの?」
「うん、疲れた」
授業終わりあの子はそう言う。
それ以外にも、授業中に首を私の肩にに預けてきたり、
距離感が近いよねと言われたら否定できないような状態だった。
後に友人は、
「最初授業受けにクラスに入った時、2人が近すぎてキスしてるのかと思ったんだよねー。だから付き合ってるなら話して欲しいなって思ってた。」
と言う。
あえて言うなら、あの子とキスをしたことはない。
キスとその先も一切していない。
明確な線引きは私とあの子の間に存在した。
あの友人の一言が、
今まで当たり前だったあの子と私の距離感を変えることになっていったのだ。
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