第10話 破壊の神
ロベリアは、倒れ込んだ。俺たちふたりも同様に、座り込んでしまった。疲れた。
「カイト……大丈夫?」
「あぁ……生きてるよ」
ロベリアは………どうなった?まだ、生きてるのか?
確かめたいけど……立ち上がることすらできない。よし、煙が晴れてきた……!!
「うそ……だろ?」
「はぁ……はぁ……よくも、やったわね。なら、せめて……あれだけでも!!」
ロベリアは、上半身を倒し今にも崩れ落ちそうになりながらも、しっかりとその足で地面を踏みしめていた。
瞬間、ロベリアの手のひらから爆風が放たれる。それは俺ら二人ともを吹き飛ばした。そして、ロベリアは、魂の球体のもとまで這いずってでも、進んでいった。
「カイト!止めろぉ!」
「無理だ。もう指一本でさえ動かせない!」
「アハハ、もうあたしは助からない。だったら、ロスト様、最後にあなたへ、これを、、、」
ロベリアの手に魔力が集まる。そして、爆音と共にその手は爆発し、魂の球体はどこかへと飛んでいった。
その方角は、魔王城がある方とぴったり一致していた。つまり、その先には魔王城があるわけで………
その直後、ロベリア自身は、光の粒子となって消滅した。さらに、村全体を覆っていたつるも消えた。
「勝った………のか……」
「うん……一応ね……」
カイトのその言葉を聞いて、
「っしゃあぁぁぁ!!!!」
俺は、思わずガッツポーズで跳び跳ねてしまった。と同時に再び倒れる。
「カエデ、SPを使いきったんだ。あんまり無理をするなよ。それと、仮にも人を殺めたんだから、その反応はどうかと思うが………いや、別にいいか」
「あいつらの親玉を仕留めたんだ。もう、人が死ぬこともない。これで、喜ばずにいられるかよ!」
正直、体はかなりきつい。さっき起き上がれたのはほとんど奇跡で、今は腕の一本も動かない。
ただ、心のなかでは俺もカイトも、躍り歌っていたのだと思う。ロベリア・ジュエリーは長年この世界を苦しめてきた魔王だ。それを、ついに打ち破り、この世界には平和が約束されたのだから。
アトラスや、ミアも、親玉たる魔王がいなくなれば、これ以上動く理由もないから、きっと降参して罪を償うだろう……と、信じたい。
とにかく、魔王は倒された、これは事実だ。
そして、俺たちは、
――パチィン!
ハイタッチを交わし、勝利を喜びあった。
――――そんな2人を嘲笑うかのように、巨大な脅威が迫ってきていた。
ロベリアが魔王城へ向けて飛ばした魂の球体……
それが、最後の引き金だった。
――――――――――――――――――――――
ロベリアが飛ばした魂の球体は、すぐ近くの巨大な城の中へと落下した。不気味な石造りの城、それでいてつるに覆われている城。
魔王ロベリア・ジュエリーの城だった。
その目の前には、玉座に座る人物、アトラスがいた。
「おっ、届いたか」
ゆっくりと歩みより、球体の大きさを確認する。直径は2メートル程度、アトラスの背丈よりも少し大きい。
「フフッ、フフフフ……フハハハハハ!!!ついに……ついに集まったぞ!これで、魂が集まったぞぉぉ!!!」
アトラスは、魂の球体を浮遊させ、天井に向かって放り投げた。球体は、天井に開いた空間の裂け目に吸い込まれる。
「さぁ、死と破壊の神ロスト様!御復活の時です!」
瞬間、裂け目から膨大な魔力が漏れ始める。部屋中に黒い稲妻が暴れ始めた。
アトラスはその目を輝かせ……わずかに、笑みを浮かべていた。
裂け目から、闇の塊が吐き出される。モヤモヤと動き、徐々に
「おお、この時を、いくら待ちわびたことか。ロスト様、数千万年ぶりの世界はいかがでしょう」
「………なぜだ。なぜ全て消し去ったはずの人間が、再び我の前に現れるのか。お前は何者だ」
アトラスの体は、小刻みに震えていた。なぜ人間がいるのか、それを聞くだけの質問が、それを言うだけの言葉が、凄まじい覇気を帯びていた。
――アトラスが恐怖を感じた。
「私はアトラス。あなた様をこの世に蘇らせた、神ロスト様の信者です」
「ほう……かつて生きとし生けるものを滅ぼした我を蘇らせようとは、物好きなやつもいたものだ。して、お前は我に何を望む」
「私は……何かを望んであなた様を蘇らせたわけではありません。私はただ、信じる神が封印されている状態にあるのが、ただ悲しかった。ならば、私がどうなっても必ずあなた様を蘇らせると誓い、いまここにあなた様を蘇らせました」
ロストは、ゆっくりとアトラスを見る。頭から足の先まで。
「面白い。ただの興味に我を起こすとは。よかろう。我はお前の望みを叶えてやろう」
「いえ、私が望むことは何もありません。ただ………」
一度うつむき、再びロストの目に向かっていった。
「このクソみたいな世界を、滅ぼしてくだされば、それだけで」
――己の、望みを。
異世界復讐記【3つの世界を同時に救え!】 古部伍堂 @atosotog
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