いつもの脚注解説

おがさわら丸(3代目):

東京港竹芝桟橋と、小笠原諸島の父島を結んでいる貨客船。2016年7月に就航しました。同年6月末を持って引退した先代のおがさわら丸(2代目)とほぼ同等の燃費でありながら、さらに速く(22.5 ノット→約23.8ノット)、旅客定員も大幅に増えています(768名→892人)。生活必需品も車も運ぶ、頼れる地元の足です。

https://www.ogasawarakaiun.co.jp/ship/


沈没船:

父島近傍にはWW2期の船がいまだに多数沈んでおり、その数は日本有数とも。ダイビングスポットにもなっています。

https://www.visitogasawara.com/archive/archive-4537/

https://oceana.ne.jp/diving/diving-spot/100832


濱江丸:

上記沈没船の一隻。陸軍に徴用され物資輸送を行いましたが、爆撃や雷撃を受け、最終的に浅瀬に座礁。終戦直後は船体の大部分が見えていたようですが、次第に風化が進み、現在は水面から少し顔を出しているだけです。

https://www.mod.go.jp/msdf/cjbf/hinkoumaru.html


漂流する漁網:

船の天敵1。万一プロペラに絡まると船は動けなくなってしまいます。


大型海洋生物:

船の天敵2。低速ならまだしも、高速で航行中にぶつかれば衝撃も相当なものになります。おがさわら丸くんよりは、東海汽船のジェットフォイルちゃんとかのほうがぶつかるとやばい。


出発時と到着時でお客さんの人数が合わない:

心霊現象ではありません。要するに、いくら転落防止に頑丈な手すりを作ったところで、自らすすんでDive in the seaする人を完全に止めることはできないということです。ホームドアがあっても線路内立ち入りが完全にはにはなくならないのと一緒。貨客船では時々発生するそう。


24ノット:

おがさわら丸くんは約時速44km。結構な速さですよね?

それに余裕持って平気でついてくるなんて、この「人魚」は……?


波の上を滑るみたいに、飛ぶように泳ぐ:

ある船の推進時の特徴です。飛ぶというか、波の上を少し浮いて滑るように進みます。


鳥の翼:

前述の不思議な推進方式と、航空機用の派生であるガスタービンエンジンを積んでいることのメタファー。


イルカの尻尾:

ある船の船体に描かれていたイラストのモチーフです。


運用入って一年半くらいした頃:

2018年のはじめ、広島県江田島市で、ある船が解体されました。おがさわら丸くんはこの船に会ったことがありません。


汽船さん:

東海汽船さんのこと。おがさわら丸くんの運行会社である小笠原海運は東海汽船の連結子会社です。このお話では上司さんの一人みたいなものだと思ってください。

https://www.tokaikisen.co.jp/


大荒れ:

海が荒れるとやばいことで知られるおがさわら丸。Google検索のサジェストで「おがさわら丸 地獄」と出たり……。

大丈夫!エチケット袋ならいっぱいあるからね!


どんな大声なんだ:

ガスタービン船はディーゼル船より声がでかそうだったので。


南洋踊りの「夜明け前」の歌:

南洋踊りは小笠原諸島に伝わる踊りと一種の民謡。大正から昭和にかけてサイパンなどの南の島から伝わり、歌はそもそも日本語ではなかったり、「夜明け前」のように日本語に訳されているものも、かなり不思議な独特の歌詞をしています。

http://senshoan.main.jp/minyou/nanyo-word.html


スーパーライナーオガサワラ:

今回のお話の「人魚(セイレーン)」のモデル。

本来であれば、先代である2代目おがさわら丸さんの後釜、現在の3代目おがさわら丸くんがいる立ち位置には、この船がいるはずでした。しかし「海の新幹線」と鳴り物入りで、あまりに甘い見通しのもとに生まれたこの船は、俊足の代わりにとんでもないコストだったのが祟り、一度も定期運行に就くことはありませんでした。スーパーライナーオガサワラがモノにならなかったがために生まれてきたのが、現行の3代目おが丸くんでした。

スーパーライナーオガサワラは、一度だけ石巻港で東日本大震災後の支援活動を行ったことはありますが、基本的にずっと係留されていました。米軍の輸送艦になるかもみたいな話も一度は持ち上がったものの実現せず、おが丸くんが就航してしばらく経ってから、江田島でひっそりと解体され、もう現存していません。

約140mの大型船ながら38ノット(約時速70km)という大変な高速を誇りましたが、その燃費は通常船の実に5倍。当初計画では国や東京都が補助してくれるはずだったものの原油高も相まって、普通に運行すれば年20億円とも見込まれる赤字に愛想を尽かされ、はしごを外されてしまったのでした。

お話の中ではおが丸くんになにか思うところがあるみたいですが、真意は誰も知りません。

https://www.huffingtonpost.jp/2015/05/09/techno-super-liner_n_7249744.html

https://www.ogpress.com/2p/TSL/TSL-1.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime/47/2/47_176/_article/-char/ja/

https://jstage.jst.go.jp/article/jnlsts/5/0/5_133/_article/-char/ja/

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嵐の海に歌う人魚 サキノ @sakino_haka

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