第3話
みんなと話すことができて浮かれていたが、これからのことについて考えなくてはならない。
元の世界に戻りたいと思う気持ちは少しあるが、みんなに聞いても分からないと申し訳なさそうな表情で言われたのでどうしようない。
ユーグレというゲームの身体で動いているため、元の自分が死んでしまっている可能性も高いと考えている。
だとすると、家族に迷惑かけてしまうことが心残りだ。一言でも話せれば良かったのだが仕方ない。
いつまでも、元の世界について考えている訳にもいかないので、新しい自分を受け入れ、この世界で生きていく決心をした。
ここには仲間がいるし、みんなもこの世界で生きているんだ。
それに、せっかくだから楽しみたいという気持ちもある。夢に見ていた光景がここには広がっているんだから。
とりあえず、外の世界も同じなのか知りたい。
「僕はまだ外に行ってないから分からないけど、外の世界は変わっていたりする?」
「私も外についてはユーグレ様がこの世界に来てからは、まだ確認していないので調べてみます」
メタトロンが調べくれるらしいので任せるとにした。
拠点の周りは木に囲まれていたのは知ってるが、詳しくは分からない。画面と実際に見るのでは違いが大きい。
「…周辺は森のようですが、私たちが見慣れていた場所とは違っていますね。いつの間に変わっていたのか気づきませんでした。すみません。」
「いや、気にしなくていいよ。それより、そんなすぐに分かるもんなんだね。それの方が驚きだよ」
「はい、お役に立てたようで良かったです」
「わたくしもそれくらいできますよ〜」
「そ、そうなんだ...」
後で確認するのかと思っていたが、その場ですぐ分かるとは。そんなスキルはなかったはずだが。
ミカエルもできるらしい。言った後にルシファーとアテナも頷いていたので、みんなできるんだろう。
ただ、周辺がいつもと違うと分かったことは大きい。別の世界か、違う場所に拠点ごと飛ばされたのか。
僕がこの世界に来たタイミングか、その後に拠点ごと飛ばされたのだろう。
そんなこと可能なのか知らないが、自分自身も現実では不可能なことが起きてるので納得するしかない。
「よし、じゃあ周辺を探索して、ここが別の世界なのか確かめよう」
「恐らくですが、別の世界と考えられます。テレポートによる、移動可能だった場所を確認したところ、移動できませんでした」
「なるほど、そういう確認方法があったんだ。じゃあ別の世界と思って行動しよう」
道中のザコ敵が面倒で移動によく使っていた、テレポートがそんな方法で役に立つとは。
「この拠点は侵入や攻撃された場合はすぐ分かったりする?」
ゲームでは拠点に攻撃なんてなかった。PvPでもキャラクター同士が専用の場所で戦っていた。
これからは誰かが来るかもしれないし、ゲームと同じで魔物だっているかもしれない。
「はい、即座に対応できるようにしております。護りの結界も張りましたので侵入や破壊はされないでしょう」
「あー、それなら安心だね。それはずっと張り続けることは可能なの?」
「可能です。以前までは一定の時間までしか維持できませんでしたが、今は自由に扱えるようになっています。」
メタトロンのスキルにあったのを思い出した。ただ、あれは一定のターン攻撃を無効にするものだった。
別世界に来たということで、制限がなくなっているのだろうか?
ターン制というものも存在しないだろう。
これも調べなくてはならない。
「外の世界が平和なのか、どんな人がいるのかを知らなくちゃいけない。少数のメンバーで周辺の探索をしよう」
「聞きたいことがあったんだけど、僕ってみんなからしたら、やっぱり弱い?」
「はい、ユーグレ様は一般的な人間より少し優れてはいますが、それでも差はありますね」
やっぱり強くないのか...なんとなく自分の身体だから分かってはいたけど。
運動神経が少しいいくらいだろう。
「じゃあ、僕は探索は向いてなさそうだね」
「はい、できればここにいてもらう方が私も安心します」
未知の世界が広がっているから、冒険したい気持ちもあるが、無茶はできないからここは他の人に任せよう。
「マスター、私が行こうか?」
「いや、アテナには別のことをしてもらいたいんだ」
アテナが行っても大丈夫だと思うが、目立ちすぎるのと、何かやらかしたりしないか不安な部分もある。
近くに居てもらったら何かあっても守ってもらえるのも大きい。
「メタトロンはロイとディンを呼んできてもらえる? あの二人に探索を任せたいんだ」
「分かりました。お二人を呼んできます」
そう言うとメタトロンは部屋から出ていった。
ロイとディンは種族が人間で索敵などを得意とするため、探索には向いている。レベルも最大まで上げており、ここにいるメンバーよりも強さは劣るが問題ない。
「ミカエルとルシファーには現在の状況を他の人にも説明してきてもらいたい。全員状況が分かっていれば対応しやすいからね」
「分かりました。おまかせください! すぐに伝えてきます。」
「あぁ、分かった。んじゃ、伝えてくるとするか。」
「二人ともよろしくね」
二人から返事を聞いて、出ていくのを見送った。
「さて、アテナには後で拠点の倉庫に案内をしてもらいたい」
「分かった、任せてよ! そんな簡単なことなら誰でもできるけどね」
「まぁ、確かにね...」
正直、他にやってもらうことは今のところ思い浮かばない。
「そうだ、この拠点って名前決まってないよね? ずっと拠点って言っていたから。」
拠点に名前をつけられなかったから、そのままだったはずだ。
「確かに名前は決まってないね。でも私たちは家って呼んでたりするよ」
「家か...そのままで良さそうだね」
家と思ってくれているなら、そのままでいいな。
アテナと話しているとメタトロンが二人を連れて戻ってきた。
「お二人を連れてきました」
「ありがとうね。ロイとディンの二人にはやってもらいたいことがあるんだ」
「ユーグレ様、俺たちは何をすれば良いのですか? 何やら重要そうなお話のようですが」
先に話しかけてきたロイはショートの茶髪に黒と緑の軽装をしており、シーフと呼ばれる見た目をしている。顔は優男といった感じで親しみやすい性格で話しやすい。
「俺たちなら大抵のことはできるッス。」
ディンは目元まで黒髪が伸びており、服装はロイと同じで軽装だが、色は灰色と白の服を身にまとっている。
口数は多くないが冷静で判断力が優れている。
「うん、二人には周辺の探索を行って欲しいんだ。外の世界について全く分からないからね」
二人には現在の状況について一通り説明した後に今回のことを言った。
「それなら、俺たちに任せてください。必ず情報を持ち帰ってきましょう」
「そうッスね。知らない世界だとしても探索は俺たちの得意分野っスから」
「二人とも頼もしい限りだよ。安全第一でよろしくね。人と接触した場合は危害は加えないようにね。相手が攻撃的で最悪の場合は仕方ないけど」
探索について二人としばらく話し合い、すぐに行ってくれることになった。
二人とは実際に会うのは初めてたが、意外と話しやすかった。
「はい、では俺たちは準備してすぐに行ってきますね」
「うん、二人とも任せたよ」
二人は部屋を出ていき、部屋にはメタトロンとアテナの三人なった。
「食料の生産は問題なく行えている? 肉や魚は外から集めないといけないと思うけど」
「はい、人員も配置されていますので生産システムは正常に稼働しています。お肉や魚は1ヶ月は問題ありません」
食料に問題があったら大変なので聞いてみたところ、生産は問題なく行えているようだ。
肉と魚だけはゲームで生産できなかったので仕方ないが、必要な場合は外から得なくてはならない。
生産施設は施設と相性の良い人を配置することによって、ゲームでは生産効率が上がっていたから、今も効率良く生産できているのだろう。
食事について気になったので、メタトロンはいつも何を食べているのか聞いてみた。
「私たちは食べ物を必要としていませんので、食事は摂りません」
「…そうなんだ。知らなかったよ。アテナも食べなくても問題ないの?」
「そうだね、私も食べなくても問題ないよ」
「無理にとは言わないけど食べたくなったら、ちゃんと食べてね」
種族によるのだろう。自分は絶対必要だし、種族が同じ人間の人も必要だろう。今度、みんなには美味しいものを食べてもらおう。
「そうだ、倉庫に行きたいんだった。二人とも案内してもらえる?」
「はい、お任せください。案内しましょう。」
「そうだったね、まかせてよ!」
一段落終えたので倉庫に向かうことにした。
最高の仲間たちと異世界へ ちょこアイス @ice_y05
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