第2話

 

 ゲーム時のシステムが使用可能か、確認するために頭の中で試しにイメージしてみたが何も反応はなかった。

 

 目の前にステータスが表示されることに憧れがあったが無理なようだ。ゲームをしていた時もそんな方法で表示されてなかったから当然ではある。


 広い部屋を見回してみると四角いホワイトの机にはゲームでは使われなかったパソコンがあった。

 パソコンの横にはゲームの主人公が使っていた、スマートフォンのような端末がある。

 

 この端末ではゲームの持ち物やお金、仲間のステータス確認や成長など色々なことができた。

 この端末が同じように使えるのならば、凄く便利なので、電源を入れてみる。


「おぉ...! 使える!」


 画面には、主人公が使っていた時と同じように表示されていた。ただし、ガチャに必要な石の場所は文字化けしていて、使えそうになかった。ガチャの画面に関しては消えていたので諦めることにした。


 持ち物には、ゲーム時に持っていた物が表示されていて、試しに回復アイテムのポーションを取り出すという所をタップしてみる。


「…ほんとに出てきた」


 目の前から出てきたのは、ガラスのような容器に緑色の液体が入ったポーションがあった。


 驚いて少し固まってしまった。本当にファンタジーの世界だな。

 これなら、問題なく使えると思っていいだろう。


 ここで一つ気になっていたことがある。


 ゲームの主人公は戦闘を行わずに仲間へ指示を行っていたため、ステータスというものが存在しなかった。

 

 ランクという要素があり、最大の100まで上げていたが、それは仲間のレベルとは別物だった。

 

 ゲームの時はそんなこと気にしていなかったが、それが今の僕自身となると気にせずにはいられない。


 この世界で生きていくために強さは必要だ。だが、今のところ確認する方法がない。


 拠点が同じでも、世界も全て同じとは限らない。同じでも敵がいるため、正直言って怖い。


 自分と同じプレイヤーはいるのだろうか。いるのであれば、仲良くしたい。


 唯一の救いは育ててきた、仲間がいる。それを心の支えとして頑張っていこう。


 端末でメタトロンのステータスを確認をすると、遊んでいた時と同じで最大レベル【200】という文字が表示されていて安心した。


 少し沈んでいた気持ちを切り替え、そろそろ作戦準備室に行くことにした。


 部屋から出て、目的の場所に向かおうとしているが、ゲームと全く同じ作りでも実際に歩いて見ると違っていてた。

 少しだけ迷ったが作戦準備室の文字が見えてきてようやく着いた。


 ドアを開くと部屋の中央には大きな白の机に椅子が配置されており、ゲームの時によく使っていてお世話になっていた、第一部隊の四人が集まっていたので挨拶をした。


「みんな、ごめんね。少し迷って遅れちゃった。それと集まってくれてありがとう!」


 そう言うとメタトロンが返事をしてくれた。


「気にしないでください。先にユーグレ様の状況を説明しておきました。迷った場合は私を呼んでもらえればすぐに向かいますので」


 え、来てくれるんですか! 次から呼んでみようかな。


 それに説明も先にしてくれてるなんて、さすがメタトロン! 略して、さすメタ。


「わたくしも呼んでもらえれば、すぐに会いに行きますよ!分からないことがあれば聞いてくださいね」


 そう言ってくれたのは、背中から白の翼の生えた天使のミカエルである。

 

 ロングヘアのプラチナブロンドが輝いているように見え、服は青を基調とした、ロング丈のワンピースに胸元にはフリルがあしらわれている。


 ゲーム内でも可愛さだけでなく、温厚で思いやりのある優しい性格をしており、人気のキャラだった。


「それは単にお前が会いたいだけだろ。まあ、俺も聞いた時は驚いたが雰囲気が別人だな。」


 その声は背中に白と黒の翼を生やした男、ルシファーだ。

 黒髪の前髪には白のメッシュが入っている。黒のコートを着ており、人を寄せ付けない雰囲気を持っている。

 

 めんどくさがり屋ではあるが実は少し寂しいがり屋な一面もあるのは既にゲームで把握済みだ。


「いいじゃないですか〜! ユーグレ様に会える時間は今まで少なかったんですから。」


「うん、僕もみんなと実際に会えるのは嬉しいから大歓迎だよ」


「おいおい、そんなこと言ったらこいつは、お前に突撃しにいくぞ」


「突撃ってなんですかー! ただ、会いに行くだけじゃないですか」


「ルシファーもこれからは僕の部屋に来ていいんだよ?」


「じゃあ、俺は気が向いたら遊びにいくわ」


 会える時間が少なかったのはログインしていない時間だったからだろう。

 メタトロンに僕の事情を説明した時に自分の部屋いる時間が多かったと聞いて、そういう結論になった。


「ところでさっきから気になってたんだけどアテナは寝てるの?」


「むむ...私は眠ってなどいないぞ!」


 さっきからずっとこっちを見ていたのが気になって声をかけたが、どうやら寝てはいないらしい。


 アテナはホワイトブロンドの煌びやかな髪をポニーテールにしており、服は白銀の鎧を纏っていて、高潔さが伝わってくる。

 

 性格は真面目で責任感が強く、忠誠心が高い、少しポンコツな面もある。そのポンコツな部分も可愛いところとしてゲームでも人気を集めていた。


「冗談だよ、さっきからずっとこっち見てたから気になったんだよ」


「マスターがいつもと違いすぎて、びっくりしていたんだ!」


「私が説明していた時にアテナさんは三人の中で一番驚いていましたね」


「驚くに決まってるさ! 今までのマスターはマスターが別世界から操作してなんて...部屋にこもってばっかりいた理由が納得だよ!」


「ははは...僕が一番驚いてるよ...」


「そんな表情も今まで見たことがなかったかよ...本当なんだね。今のマスターが本物のマスターってことだね」


「前の僕も一応、本物だよ...」


 この第一部隊のメタトロンとミカエル、ルシファーにアテナの四人がいれば、頼りになるし怖いものなしだ。多分。


「わたくしは今のユーグレ様の方が好きですよ。笑っていたり、困った顔を見れるのは新鮮で楽しいですから。」


「私も部屋に入った時は驚きましたが、今までとは違い、皆さんと笑ったりする姿が見れるのは嬉しい限りです」


「俺も今の方が気が楽で話しやすくていい」


「うん、それもそうだね! 前までは、ずっと真顔でちょっと怖い時もあったけど、今のマスターは人間らしくていいな」


 みんなの優しさが心に染みる。大切に育ててきたキャラと一緒に入れるだけで幸せだ。


 みんなキャラデザが良かったから、実際に見ると尚更凄さを感じる。


「本当にみんな、ありがとう。前とは別人に見えるかもしれないけど、よろしくね!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る