最高の仲間たちと異世界へ

ちょこアイス

第1話


 目が覚めたら、そこは見覚えのある部屋だった。いつもは画面越しだったはずの場所が目の前に広がっていた。


「ん...? え...えぇぇぇええええ!!!」


 驚きで叫び声を上げてしまった。

 夢だと思ってほっぺたをつねってみたが痛くて...夢じゃない...?


 声もいつもの自分と違って高く、視点も低い。


 部屋に置いてある鏡で自分の姿を見てみると、金髪に翠眼すいがん、顔は整っているが少し幼さの残った中性的な男の顔が映っていた。


 ゲームの設定では15歳だったはずだ。


 本来の自分はこんな整った顔の中性的な男ではない。どこにでもいる大学生の男だった。


 改めて広い部屋を見てみると、ゲームの時に配置した色々な家具が置いてある。

 壁には絵画がいくつか飾ってあり、寝ていたベッドも豪華な装飾がされている。


 僕はどうやら、ゲームの世界に来てしまったようだ...


 遊べていたゲームは育成RPGと呼ばれるゲームであった。

 スマートフォンで気軽に遊ぶことができるため、そこそこ人気のゲームだった。


 たまたま見かけたキャラクターのデザインが綺麗で目が惹かれ、始めたのがきっかけだ。


 このゲームは分岐によって、結末がたくさん用意されているフルボイスのストーリー。


 NPCとの豊富な種類の会話に選択肢。


 仲間とのコミュニケーションで仲を深めていく信頼度システム。


 物語を進めながら主人公と仲間が暮らす拠点を大きくしていくことが特徴的で好きだった。


 部屋の中で呆然としていたがドアの方からノックの音がして、びっくりして声がでそうになったが、なんとか堪えることができた。


「は...はいっ!!」


 誰が来たのか、不安と緊張で返事が裏声になってしまった。


「ユーグレ様、大きな声が聞こえましたが大丈夫でしょうか?」


 呼ばれた名はゲームをしていた時につけた、主人公の名前だ。


「はっ...はい、大丈夫です!」


 ん? さっきの優しくて、落ち着くような声...


「もしかして、メタトロン?」


「はい、そうです」


 ゲームで何回も聞いたことのある声だから分かった。

 始めた時に最初のガチャで引いて、それからずっと、お気に入りの仲間だった。


「入ってきて!入ってきてー」


 思わず顔がニヤけてしまったが仕方ない。夢にまで見た仲間と実際に会えるんだ。

 ドアが開かれるとそこには、いつもは画面越しから見ていた、背中に翼のある天使がいた。


 神々しい白髪と碧眼に整った綺麗な顔。そして背中には白い翼がある。そして白の鎧に青のサーコートを着ている。


 性格は親切で優しく、責任感が強く、誰よりも頼りになる人物だ。


 実際に見ると、想像以上にかっこいい。

 

 そんなことを思っているとメタトロンは少し目を見開いて驚いている。なんでだ?


「…今までずっと一緒にいましたが、ユーグレ様が笑っているところを初めてみました。」


 プレイヤー目線から自分の顔はあんまり見てなかったがずっと無表情だったのか?


「いつもの僕って無表情だった?」


「はい、私たちと話している時や戦闘においての指示を出される時も笑うことや、怒ることは一度もありませんでした」


 となると、会話で変な選択肢を選んだ時も真顔だったのか...


「あー、今までの僕はそうだったのかもしれないけど、これからの僕は笑いもするし怒りもするからよろしくね」


「ふふ、分かりました」


 顔が整っていてイケメンだが、笑った時の表情は少し可愛いかった。

 

 まず、メタトロンには僕がゲームの世界から来たことを説明しよう。

 正直、自分が一番驚いているが、誰かに話さないと分からないことばかりだ。


 さすがに大切に育ててきた仲間にいきなり殺されるなんてことはない思う。ゲームでもそんなことなかった。


 自分の現在の状況について一通り説明することにした。


「そうだったのですね...ユーグレ様が笑っていた時に今までと様子や雰囲気が違って疑問に思いましたが、そんな理由があったとは驚きですね」


 説明している時に驚いた表情を浮かべいたが、信じてくれた。

 仲間の信頼度が最大で良かった。


 種族が天使ということで、敬語にした方がいいのか聞いたら、気にしなくていいと言われた。

 ガチャから引いただけだが、僕が生み出た主という存在になっている。


 メタトロンに会えた喜びで忘れていたが、他の仲間もちゃんといるのだろうか? もし会うことができるなら嬉しい。


「他の仲間たちって、この拠点にいるの?」


「はい、全員がこの拠点にいます。良ければお呼びしましょうか?」


 全員が揃ってるとなると、それなりの人数のはずだ。

 拠点のレベルを最大まで上げておいて良かったと改めて思った。


「じゃあ、作戦準備室に第一部隊のみんなを集めて!」


 これで通じなかった恥ずかしいけど...


「はい、すぐに呼んできますね」


 よし、通じた!

 

 自分が大きくしてきた拠点の部屋を実際に使う日が来るなんて思ってもみなかったからテンションが上がってきた。

 色々な設備を配置しといて良かった。してなかったら、ただのダンボールが置いてある部屋のままだったな...


 さっきまでは驚きやら、怖さもあったがメタトロンと話してて少し落ち着くことができた。作戦準備室に行く前にゲームのシステムが使えるのか確認しておきたい。












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