第22話 悪役の俺、二回戦の相手が弱そうだと笑われる
二回戦が始まりそうなので俺は待合室に向かった。
一回戦はとてつもなく、弱そうで笑わせてもらったが次はどうだろうとか思いながら待っていると
「ガハハハ!!!!一回戦は直ぐに突破したと聞いたが、凄く弱そうだなお前!」
と言いながら待合室に男が入ってきた。
そちらを見ると筋肉モリモリでいかにもな眼帯の男が立っていた。
「二回戦は楽勝だなぁ!こりゃ!弱そうなやつだわ!」
「あぁん?そりゃ、こっちのセリフだなぁ。デカいの。俺が勝つに決まってんだろうよ。そのデカい図体でどうやって勝つつもりだよ」
「あぁ?ガハハハ。捻り潰してくれるわ。わははははは」
「フハハハハハ。お前が俺に勝つ?笑わせてくれるなよ、くっくっくっく」
俺たちの笑い声が響く。
俺の言葉を聞いて、でかいのが口を開いた。
「あぁん?勝つのは俺だ」
「その脳みそにどっちが強いのか刻み込んでやるよ、単細胞。ふはははは」
俺がそう言うと舌打ちして男は俺の横にドカッと腰を下ろしてきた。
「お前みたいに反抗してくる奴は初めてだぞガキ。ガハハハ」
「そちらこそ俺にこれだけ口を叩けるなど中々やるな。ふはははは」
「俺は三年だ。お前二年だろうが?一年の差がどれだけデカいか教えてくれるわ。ガハハハ」
そう言って男は待合室を出ていった。
ふむ、しばらく待っていると俺も時間になったので出ていくことにする。
そうして向かい合うと男が話しかけてきた。
「ガキ!尻尾撒いて逃げなかったのは、褒めてやる」
「ふん。そっちこそ俺を相手に逃げなかったのは褒めてやろう」
「ガハハハ。年長者からの言葉は素直に受けとけおけよ」
年で言うと俺の方が前世があるから上なんだがなぁとか思いながら俺は宣言してやる。
「さて、一年の差とやらがどの程度なのか見せてもらおうか」
その時審判が開始の合図を出す。
俺は一瞬で距離を詰めると大男の足を薙ぎ払った。
「ガハッ!」
ドタッと倒れる男。
「くっくっく……一年の差の小ささがよく分かったな?おい」
「な、何だと……な、何が起きやがった……」
そう呟く、男をそれ以上見ることはなく俺はそのまま聞く。
「まだ続けかよ?弱い者を痛めつけるのは嫌いじゃないが面白くはないんだよなぁ?」
そう言っても審判が俺の勝ちと、判定したので試合は終わった。
これ以上続けても無駄だと思われたのだろう。
俺は舞台をおりた。
これからはどうなるんだったか。
このまま俺は一応原作でも勝ち上がってフィオネと戦いコテンパンにされた気がするが。
この後の試合だったが、原作とは流れが変わっており対戦相手が棄権して俺は何度か不戦勝となった。
そして迎える準決勝。
「さて、どうするか」
念の為予め何か罠を仕込んでおいてもいいが。
そもそも、別に負けてもどうということはないが。
(単純に何をしてでも負けたくないんだよな)
そう思う。
「さてと、フィオネに下剤でも盛りに行くか」
俺は何かフィオネに差し入れに行くことにした。
あいつに下剤を盛って調子を崩す。
完璧だ。
自分の悪さに胸が高鳴るを感じてスキップしたくなる衝動を抑えて俺は歩いて売店に向かう。
「コーヒーくれ」
「あいよ!お前あれだろ?!今注目のカインだろ?!ほら、もう1個サービスだ!応援してるぜ!」
店主がドリンクを渡してきたので俺はフィオネに渡すつもりのコーヒーに下剤を入れて、待合室に向かう。
今あいつはそこにいるはずだ。
「よう、フィオネ」
「おぉ、カインじゃないか。これを私が勝てばお前と当たるんだな」
俺は頷いてフィオネにコーヒーを渡した。
ふひひひひ。
こいつがこれを飲めば、決闘中に腹を下し、その場で悶えること間違いなし!
自分の頭の良さに痺れてしまう。
「ん?」
「差し入れだよ」
「珍しいなカインがくれるなんてありがとう」
そう言って受け取ったが
「私猫舌でホットは飲めないんだ。すまない」
そう言って返してきた。
えぇ……辛いの行けるからホットでいいと思ったんだが。
その時、ガラッと扉が開いて男が現れた。
「よう、フィオネ。待ってたぜこの時を」
そう言って男はフィオネに近付いたが、無視するフィオネ。
何かあったのだろうかとか思いながら俺が棒立ちしてると
「お、お前はカインだったな。ん?そのコーヒーは?」
俺が手に持つホットと書かれたコーヒーに目を向ける男。
2つカップを持っているから察したらしい。
「あー、こいつ猫舌でホット飲めないって突き返されたんだろ?」
と俺の手から半ば奪い取るようにホットコーヒーを取った男。
お、おい!まずい!やめろ!それは下剤入りだぞ?!!!!
の、飲むな!やめろ!
お前にはフィオネ相手に不戦勝して準決勝で俺にボコられるっていう大役が!!!!
しかし!!!
今の俺にこいつを止められなかった!!
下剤入りなのを知っているのは俺だけで、それを止めてしまえば、これからの人生をコーヒー下剤混入マンと呼ばれて過ごすことになるかもしれない。
だから俺は、今ごくごくとコーヒーを飲んでいく男を見守るしか無かった。
(さよなら、バイバイ。お元気で)
「ふぅ……ごちそうさん。俺ホットコーヒー好きだから、礼くらいは言ってやるよ」
そう言って俺にカップを突き返してくる男。
俺は何となくでそのカップを受け取ると
「ここ、ゴミ箱ないしお前が持ってきたものだし、捨てといてくれよ。頼むぜ、陰キャくん」
そう言って男は俺にゴミを押し付けて待合室を出ていった。
「す、すまないカイン」
そんな男の代わりに謝ってくるフィオネ。
一瞬反応が遅れた。
「あ、あぁ?」
「失礼でクズな男だっただろう?お前の買ってきてくれたコーヒーを奪い取るように飲んでしまって」
お前に下剤入りを飲ませようとした俺ほどでは無いと思うけど、な。
「私と幼い頃からの幼なじみで、お見合いとかもさせられていた男なのだ。貴族の息子で名前をバッカスという」
と教えてくれるフィオネ。
あー、そう言えばなんかそんな話もあったなとか思い出す。
「注意しているが治らなくてな。お前のためにも私は負けない」
そう言ってフィオネも出ていった。
そのフィオネを見送って俺は思う。
(やべぇことになってきたなぁ?おい)
俺はあのコーヒーに本来の3倍の下剤を入れてある。
あの男大丈夫かな、他人の試合に興味は無いが見に行ってみよう。
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