第20話 悪役の俺、学園に行った
翌日。
俺は学園に向かった。
ティナもミーナも俺と学園に行きたいと言うので遅刻する回数は激減した。
学園に到着すると視線がめちゃくちゃ集まってきた。
主に女子の視線だった。
「カイン伯爵よ!」
「うわー!すごい!かっこいい!」
なんて会話が聞こえる中俺たちは歩いて行く。
「先輩、私はここなので」
と、ミーナは一年なので途中で別れていくが。
俺はティナの一緒にいつものクラスに入る。
いつのものようにティナの隣に座っていると、もう片方の隣の席に誰か座ってきた。
どうせフィオネだろうなと思って目をやったけど違った。
男が座っていた。
「誰が座っていいと許可を出した?」
男を殴りつける。
すっ飛んでいく男。
「がっ!」
そうして立ち上がって俺に目を向けてきた。
「い、いきなり殴るか?」
「お前が不躾な奴だからだ。俺は伯爵だぞ?一般のゴミみたいな庶民が気軽に隣に腰掛けていい存在では無い」
この程度は原作のカインがやっていた程度だ。
あいつは親の名前を出してやっていたが。
「分かるな?貴族は平民に何をしても許されるんだよ」
俺は真の貴族だ。
なんの問題もない。
「くそ!」
吐き捨てて俺に話しかけてくる男。
「僕の名前を知っているか?」
「知らんなぁ。知りたいとも思わんなぁ」
なんか名乗っていた男だけど名前なんて聞いちゃいない。
俺は勝手にメガネと名付けることにする。
そのメガネが俺に人差し指を向けてきて告げる。
「か、カイン。明日から武闘会が始まるのは知ってるよな?僕はその武闘会で君を倒す」
「ギャハハハハ!!!!おいおい、お前俺に勝てると思ってんのかよ?わははは!!!お前が、イーヒッヒヒヒヒヒ。お、俺に勝つぅぅぅぅぅ?!!!」
笑い死にそうだ。
「じょ、冗談は眼鏡のデザインだけにしてくれよ。ブヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
俺は笑って答えてやる。
「俺を倒せるなら倒してみろよ。その代わりお前負けた時どうすんの?そうだなぁ。全裸で逆立ちして校庭3週とかどうよ?」
「そ、それでもいいさ」
「言ったな?お前言ったな?楽しみにしててやるよ、クソメガネが。ギッタギタのメッタメタにしてやるよ。手足全部へし折って顔面ぐしゃぐしゃにして、生まれてきたことを後悔しながら泣いて謝れよ」
我ながらすごい悪役っぽい言葉がでた気がする、と感動する。
俺も悪役に慣れてきたかもな。
しっかしティナが引いてそうだなぁとか思いながらティナの顔を見ると
「流石カイン様ですね。あんな風に自らが悪役になり切って相手の闘志を煽るなんて誰にも出来ることではありません。演技力に惚れ惚れしてしまいました」
演技じゃないんだけどなぁとか思う俺だった。
それにしても俺はカインを超える悪役になれているかもしれない。
やはり悪役はこれくらいしないとな。
去っていく男。
それからクラスメイトの女が俺の横に座ってきた。
女は別にいい。
そう思っていたら俺の前の席に座るフィオネ。
「むっ、今日は空いてないからここで我慢する」
という事らしい。
やはり俺しか友達がいなくて俺の隣に座りたかったらしい。
放課後。
俺は砂場で遊んでいる子供を見つけた。
駆け寄って子供達が作っていた砂の城を蹴って破壊した。
「ぼ、僕たちのお城が!酷いよ!」
「こんな下らないもの破壊してやったたけ有難いと思えよガキ共」
俺がそう返すとメガネが走ってきていた。
「な、何をしているんだカイン!」
俺はメガネの顔面を掴んで砂場に顔を埋めた。
「おいおい、メガネ。俺に気軽に話しかけるなって言ったところだろうが」
「もがもが!」
「あはは、何言ってっか分かんねぇなぁ?!」
グリグリとメガネの顔を砂場に押し付けると
「か、かっけぇ!兄ちゃん強え!!!」
子供達が止めに来たメガネではなく俺の周りを囲み始めた。
「兄ちゃん!僕は分かったよ!下らない砂の城作りじゃなくて自分の拳を鍛えろって言いたいんだね!お城を守りたかったら自分が強くなって守れ、ってそう教えたかったんだね!」
は?
俺そんなこと一言も言ってないが。
「みんな!今日から砂の城作りはやめて筋トレにしよう」
「お、いいね!それ」
「俺はこのメガネの弱い方じゃなくて強い兄ちゃんみたいになりたい!」
「よし、まずは腕立てからやろうぜ!」
そう言って子供たちは砂場から出て筋トレを始めた。
おいおい、俺が壊すための砂の城を作れよ。
お前らの泣き顔が見たいんだから。
と思いながら子供達に近づくと。
「兄ちゃん!また今度来てよ!僕たちも兄ちゃんみたいに強くなるから!」
とか言ってくるので俺は
「はぁ?砂遊びしろよ」
「しねーってのー。これからは筋トレの時代だぜ」
おいおい、子供が筋トレを趣味にするなとか思いながらこれ以上言っても無駄そうなので俺は家に帰ることにした、のだが今日は本家の方に寄ることにした。
呼び鈴を鳴らして俺を出迎えたのはメイド長だった。
「カイン様」
「よう。メイド長」
「今日も本家の方に貴方が以前雇っていたメイドが大量に押しかけてきました」
「知らんよ」
そう言いながら家に上がり込もうとするがすげぇ威圧を感じたやめた。
メイド長じゃない。
その奥だった。
客間から一人の少女が顔を覗かせた。
「みんな!カイン様がきたよ!」
ドドドドドドドと大量の少女がその客間から出てきた。
正直誰1人名前が分からない。
「カイン伯爵、また私をお雇いください!」
「ずるい!私だから!」
「私は解雇されてから考えていました。私に足りないものはなんなのか、それに気づけました。また雇ってください。お願いします!」
そう口々に言ってくる女の子の数は10を超えるが。
何の話か分からない俺は
「し、知らん!」
風魔法を使って空を飛ぶと自分の家に帰っていく。
その最中チラッとメイド長を見たが。
俺を睨んでいるような、そんな目をしていた。
「前々から嫌われてるような気はしてたがな」
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