第19話 悪役の俺、周りからの評価がうなぎ登り

翌日。公爵を捕まえた俺達は王城にやってきた。

俺が王様を呼びに行って庭園で3人で話し合う。


「ふむ。反王家派の首謀を捕まえた、とな」

「あぁ。話した通りさ」


今までのことを王様に話した。

しかし王様の周りにいた貴族が口々に言う。


「王様反王家派の人間は小賢しいのです。とりあえず公爵を差し出しただけなのかもしれません」


それに、と騎士団長を指さす。


「この女は反王家派のタトゥーが」

「そ、それは偽物なのです」


と言う騎士団長だったが。


「お前は無断でスパイ活動をして私を混乱させた。本来であれば処刑でも文句が言えない立場だ」

「そ、そんな……」


落ち込まないで団長ちゃん。俺がいるよ。

俺は君の味方だよ。


「はっ。器のちいせぇ王様だなぁ」


俺は横にいた団長に腕を回して抱き寄せた。


「か、カイン殿?」


それに騎士団長も驚いたし周りにいた貴族も驚く。


「カイン卿?何をしておられるのですか?その女は裏切り者の可能性が」

「だから、なんだよ。俺はこの子の活動があったから公爵を捕まえられた。俺はその頑張りを否定しないよ」


そう言って俺は騎士団長の胸に刻まれていたタトゥーを時魔法で消し去った。


「こんなものを大事な体に刻んでまでスパイ活動をしてくれたんだよ。あんたらはそれに報いるって事もできないのか?血が通っていないのか?」

「し、しかし、王様」


「カインは犯罪になると知っていて、団長を逃がして公爵を捕まえてきた。それはお前たちにはマネが出来ないことだろう」

「そ、それはそうですが」


言いよどむ貴族。

返答に困っているらしいが王様が続けた。


「前も言ったが私はこの男の大胆さを買うことにする。カイン、お前には伯爵を授けよう」


また階級が上がってしまった。


「本当なら公爵まで一気に授けてもいいとは思うがもう少し様子を見てから、だな。他の貴族の目もあるし」


と口にして王様は団長を見た。


「お前は好きに生きろ。また団長になりたいと言ってくれるのなら迎え入れるが」

「王様……わ、私は」


目を閉じて返事を待つ王様。


「カイン殿のお嫁さんになりたいのです!こんなにも私を大事にしてくれる彼のお嫁さんになりたいのです!」


王様が叫んだ。


「お前この流れで団長の座を捨てるか?!普通!」

「好きに生きろと仰ったのは王様ですよね?!私はカイン殿の下に行きます!」


俺を見てくる王様。


「じゃ、団長は貰っていくから」


早速好きに生きろと言ったことを後悔し始めているらしい王様を見て笑いながら、団長を連れて家に帰ることにした。


「そう言えば名乗っていませんでしたね」


と団長は名乗ってくる。


「私の名はイザベラです」

「分かったよ。今度からそう呼ぶよ」



翌日。

フィオネが家を訊ねてきた。


「伯爵!伯爵!」


嬉しそうに俺の名前を呼んでくるフィオネ。

何が嬉しいのかは分からないが。


「すっかり貴族になってしまったな!」

「何をしに来たわけ?」


こっちはお前の代わりに貴族になったり、結果的には反王家を壊滅させたりして大忙しなのだが。


「お前が学園をサボってる間に溜まったプリントを届けに来た!」


と突き出してくるフィオネから紙を受け取るとメイドに家の中に持っていかせた。


「クラスは伯爵カインの話題で持ち切りだよ」

「へー、そうなんだ」

「うん。すっかり話が広がってるよ。伯爵様ーって、ところで私もプールに入っていいか?」


頷いてやる。水着姿の際どい写真でも取って後で脅しのネタにでも使ってやればいい。


そう言えば俺の父上が子爵だったよなーとか思っていると、俺の家の門の扉が開いて父上がやってきた。


「えーっと、カイン伯爵、あのですね」


と父上が俺に敬語で話しかけてきた。

父上ぇぇぇぇぇぇ?!!!


あんた俺の親父だろ?!

なに、息子に敬語使ってんだよ?!!!!


「カイン伯爵?聞こえていますか?おーい」

「で、なんの用?」

「カイン伯爵、あのですね」


そう言って改めて話し出す父上。


「カイン伯爵の活躍が凄すぎて父親の私の立つ瀬がないのですよ。もう少し自重していただければなぁ、と思います」

「そうか。すまなかったな」


「父親の私としてはご子息であるカイン伯爵様の活躍は微笑ましく見えるのですが、他の貴族から『あの家の父親あいついらなくね?』と言われるのが辛いのでございます」


なるほど。

それにしてと貴族ってのはすごいな。


親子間であってもこうして差が出来てしまえば下の者はこうやってへりくだってくるのか。


「それと、たまには実家に帰ってきてください。メイド達が玉の輿狙いで呼んでこいとうるさいのです」


とほほ、と言いながら帰っていく父上を見送り、またプールで遊ぶサナちゃんを見ていた時だった。


入れ替わるようにやって来たのはシュトレイザ伯爵。

ミーナパパだった。


「カイン卿。すっかり伯爵になってしまったようで」


以前のように俺を下に見ているような雰囲気はなくなっていた。

俺もミーナパパも両方伯爵だから、対等として見られているようだ。


「そちらこそお変わりないようで、何よりだ」


それらしい事を言ってみる。


「で、何の用だ?」

「娘の様子を見に来たのだが」


俺は目の前のプールに視線を移した。

今そこで遊んでいるという意味を込めて。


その時


「カイン殿」


と、鎧に身を包んだイザベラがやってきた。


「家の前で大量の女性達が集まっていますが」

「帰ってもらいなさい。俺は忙しいのだ」

「ではそのように」


去っていくイザベラ。


「忙しいようには見えないのだが」


と聞いてくるミーナパパに答える。


「俺が忙しいといえば忙しいのだ」

「は、はぁ。とにかくミーナが幸せそうでよかった」


そう言って帰っていく伯爵を見送る。

あの人も俺が侯爵になれば俺への対応が変わるんだろうか?とか思うと爵位を少し上げたくなって来るな。


さて、明日は学園にでも久しぶりに顔を出してやるか。

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