第17話 悪役の俺、公衆の面前で女を脱がす

俺は王様と騎士団長と、共に会議室に向かっていたが


「王様、本当に申し訳ございません」


そうして歩いていく騎士団長の女が、俺の好みドストライクだった。


(金髪ショートロリ顔まな板とか最高すぎん?)


と、脳内で思うくらいドストライクだった。

会議室に入った瞬間俺たちに視線が集まった。


(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い)


俺の頭の中は騎士団長への思いでいっぱいになっていたが


「お、王様がテロリストに襲われていた、だと?!」

「近衛騎士団何をしているのだ!」


貴族達の怒りは当然のように騎士団長に向いていた。


その一方で俺の性欲と愛情は騎士団長に向いていた。


(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い)


俺の溢れんばかりの愛情はこの時ダムが決壊したように溢れ出した。


「騎士団長」


後ろから騎士団長を抱きしめた。

もう無理だ、我慢できない。


その光景に貴族達から声が出た。


「な、何をしておられるのだ?カイン卿」


そんな言葉を無視して鎧を脱がしていく。


「なっ、や、やめてくれカイン殿」

「そんな事言うなよ。騎士団長殿、ありのままの団長殿をみんなに見てもらおうぜ?」


突然行われていく俺の女を脱がすという行動に部屋全体が固まったが、俺は気にしない。


俺は王様の命を救った功績がある。

この部屋で無理やりの1回や2回くらい誰も何も言わないだろう。


「こ、この!」


団長が魔法を使ってこようとしたので


「動くなよ」


組み伏せて氷魔法で手足を凍らせていく。


「それ以上抵抗すんな」

「く、くそ!」

「おいおい、口が悪いな。団長殿?ここから勝てると思ってるのかよ?」


とりあえず脱がして残すところ下着というところまで脱がすと


(ん?左胸の少し上になんかあるけど、タトゥー?)


そう思っていたら


「お、おい!こいつスパイだぞ!!!」

「ほ、本当だ!この蛇のタトゥーは反王家の集団の物だぞ!」


と貴族達が騒ぎ始めた。


なんだ?と思ってよく見てみると騎士団長の胸にあったのは蛇のタトゥーだった。


「す、すごいぞ!カイン卿!鎧の上からタトゥーも見えないのに騎士団長がスパイだと見抜いていたのだ!」


そうして俺の活躍を褒め称える流れになった。


「カイン卿が仰っていたありのままの姿っていうのは反王家としての姿だったのだ!あの人はきっと一目見ただけであの女の正体を見破ったのだ!」


と勝手に勘違いしていく貴族達。


(お、おいおい……俺はただ騎士団長を汚したかっただけなのに……何でまたこうなるんだよ……)


すると勝手に話し始める騎士団長。


「くっ……何故バレた……初対面で私の正体に気付くなんて……一体お前は何者なんだ……」


王様が指示を出す。

騎士団長は女騎士達によって連行されていった。


(お、俺の騎士団長を返してくれ!!!!連れていかないでくれぇぇ!!!!)


そんな俺の心の叫びも虚しく、騎士団長が連れていかれてしまった。


(ごめん!騎士団長!俺は君の味方になりたいだけなのに!ごめん!!本当は俺もダークサイドなんだ!)


俺の心の叫びは誰にも聞こえない。

そして会議が始まった。


会議の内容は


「近頃このように反王家の流れが加速している」


と、王様が話していたが俺は騎士団長が連れていかれたショックで何も考えられなかった。


「今こそ一気に反王家の集団を炙りだしましょう!」

「そうですぞ!このままではいけません!今こそ王家の威光を示しましょう!!!」


と他の貴族達が話を進めていくが俺は何も聞いていなかった。


(騎士団長ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!)


そして会議は進み、俺の話題になった。


「カイン卿はこのように一日に何度も活躍した訳だが。私は彼に子爵を授けたいと思う。皆の者、異論はないな?」


満場一致で俺に子爵を与えることがあっさりと決定してしまった。


「くっ、もう追いつかれてしまうとは」


いつの間にか俺の隣に座っていた父上にそう言われた。


「だが、流石私の息子だカイン。私も鼻が高い」


はははと笑っていた


(ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!俺は悪役なんだ!俺は悪役なのだ!!!何故英雄に向かって一直線なのだ?!!!!!)


今までやってきたこと全て本来褒められらる事ではなく罪になるはずのことばかりなのに、何故か全てが偉業として認識されてしまう。


(呪いだ。もう嫌だぁぁぁぁぁ!!!!俺は悪役なんだぞ?!)


その後王家主催の食事会が開かれた。

場所は王城の庭園。


様々な貴族が俺に話しかけてくる。

その度にとんでもない言葉の数々を放っているが


「カイン卿」

「黙れ!」

「も、申し訳ございません、私のようなゴミ虫が話しかけてしまい、もっと爵位を上げてきます!」


と何故か気を悪くするでもなく、寧ろ爵位を上げるぞ!!!と意気込んでいる。

何なんだよ、コイツらは!!もっと気を悪くしたりしろよ!


疲れたよ俺。

ベンチに座って休む。


異世界転生した直後は思ってた。

大悪党になるって意気込んだのに。


現実は英雄に向かっていた。


「カイン」


そんな俺の横に座ってくるのは王様だった。


「なぁ、王様」

「何だ?カイン」

「あんたの娘を傷物にしてオモチャにしたい」

「お前ならいいぞ。私の命を救ったお前ならあの子も喜ぶだろう」


ダメだこりゃ。

不敬罪で処刑してやる!くらい言ったらどうなんだよ。


「あー、やっぱいいわ」


俺はそう答えると立ち上がる。


「カイン?」


そう聞いてくる王様の前で俺は手に持っていた食事をぶちまけた。

ははは、悪党ならこれくらい当たり前さ。


「か、カイン卿何を?!」

「カイン卿。食べ物を粗末にするなどマナー違反ですぞ!作ってくださった料理長に何もお思いにならないのか?!」


やっと俺好みの反応が出てきた。

悪役はこれくらいでないとな。


「ふん。料理長の気持ちを考えろだと?考えるわけないだろう」

「王様!爵位を取上げましょう!この男に爵位を与えては我々貴族の品位に関わります!」


そうだ。俺から爵位を取り上げろ。

それでいい。


だが王様は全く予想していなかったことを口にした。


「食事を捨てる。一見マナー違反に見えるが、お前たちの目は節穴か?」

「な、何ですと?」


驚く貴族たちに続ける王様、


「ふん。見てみろ、カインが落とした食べ物を」

「あ、アリが群がっているではありませんか」

「この男は自分の品位を下げてまで、アリに恵んでいるのだ。自分の身しか考えていないお前たちに真似ができるか?」

「で、できません」

「カイン、この男は他者を救うために自分の身すらどうでもいいと思える聖人だ。私は素晴らしいと思う。むしろ、今すぐにでも伯爵にしたいくらいだ」


その言葉を聞くと涙を流し始めた貴族。


「長らく忘れておりました王様。人の上に立つ者は下々のことを考えなくてはならない、ということを」

「そうだ。カインは自分の品位を下げてまでお前に、我々に大切なこととは何なのかを教えてくれた」

「カイン卿、なんと素晴らしい方なのだ。その行動一つ一つにそこまでの深い意味があるなんて」


俺はただ王城の庭園を汚しただけなんだが??????


何故そうなってしまうのか。

疑問に思うしか無かった。

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