第15話 悪役の俺、とても困惑する
中間試験を受けた。
一時間目は魔法道具考察という科目のテストだった。
正直全部答えは分かるんだが。
遊んでみるか
第1問目。
Q.魔法道具作成において1番大切なものは何か
(答えは自信、だったな)
魔法と同じく魔法道具を作成することにおいてもイメージは大切だ。
そしてそのイメージをこれで確実にいける!という自信でする事が大事だから、答えは自信なのだが。
(巨乳)
って書いとこう。
その後の答えも適当に埋めておく。
正直点数取れなくても最終的に金を払えば何の問題もないしそうしてもいいと思ってる。
だって俺貴族だもん。
2時間目のテスト。
もはや科目名すら見なくなった。
Q.魔法を使うために1番大切なものは?以下の選択肢から選べ。
選択肢など見ないし、答えるのがだるくなって名前だけ書いて白紙で出す。
はぁ、ねむ。
その後も名前だけ書いて全部白紙で出した。
素晴らしいできだ。とんでもなく低い点数を取れそうだ。
その翌日。
答案が返却された。
魔法道具考察の答案。
(なんで100点なんだよ)
おかしいだろ?!どう足掻いてもおかしいだろ?!
巨乳なんてあからさまにふざけた回答で何で100点付いてんだよ?!
そう思っていたら担当の先生が話し始めた。
「今回のテストはみんな出来が悪かったな。平均30点だ。そんな中でも頑張った人を紹介しよう。カイン君は100点だったぞ!」
クラス中が盛り上がった。
「やっぱりカインはすげぇな!普段授業に出てないだけあるな!」
「ほんとよね。カイン君はやっぱり凄いよ!憧れちゃうなぁ!」
先生が生徒を黙らせてから口を開く。
「みんなカイン君を見習って勉強するように、じゃあ今日の授業を始めよう」
そんなこんなで授業が始まり終わった。
俺は授業中になんで【巨乳】で正解貰ってるのかが気になり答案を見た。
答案には正解にした理由が書いてあった。
(そう、大事なのは巨乳のように胸を張り自信を持つことです。なので正解です)
と、コメントがしてあり自信と同じようなニュアンスで取られたらしい。
「なんだ、この世界……」
前世じゃ絶対に正解を貰えなかった理由で100点もらえてて笑えないぞ。
だが
(次は流石に0点かな。空白で出したもんな)
とか思いながら次の授業の答案の返却を待った。
(何で白紙で100点なんだよ……)
そう思っていたら先生が話し始めた。
「今回のテストの最高得点は100点の1人だけだった。最高得点者はカインだ」
って俺かい?!
何で?!
白紙だぞ?
「今回全ての問いを選択肢から選ぶ形式にしたが、選択肢に答えなんて初めから入れてなかったんだ。だから答えなし、つまり白紙で出すことが100点を取る方法だったんだ。みんなには自分を信じる心を持って欲しかったんだ」
(えぇ……)
俺が困惑していると
「そういうことだったのかぁ!くそう!」
「やっぱり流石だよねカイン君!」
とかクラスメイト達が騒ぎ出した。
そしてその後の全てのテストも何故か今回のテストみたいに答えがなかった、とかいう訳の分からないものだった。
そんなこんなで俺は全科目合計500点を取り学年一位となってしまった。
放課後になり一人席で放心状態で座っていた。
(……困惑するんだが。流石にこうはならんだろう?)
前世で白紙なんて論外だったが、何故かこの世界では白紙こそが正解だという。
「やはりカインは凄いな」
そう言って話しかけてくるフィオネ。
「私は白紙で出す勇気が出なかったよ。お前のそのメンタルを見習いたい、と思う」
と俺の肩に手を置いてきた。
「だが、次は負けないからな」
と去っていった。
「カイン様は凄いです!」
入れ替わるようにティナが話しかけてきた。
「先生も言ってましたもんね。私たちの自分を信じ抜く心、メンタルを鍛えるためのテストにしたって。私にも白紙で出す勇気がなかったのです。是非その勇気を私に分けてください!」
メンタルって分けれるものなんだろうか?
そう思っていたら
「せんぱーい♡」
ミーナが歩いてきた。
「学年一位おめでとうございます♡」
「あ、う、うん」
なんだか締まらない学年一位だったが、と思う。
俺はただ寝て、答案を白紙で出して100点だもんな。
そもそも後半は問題すら読んでないし。
(いや、分からん。そうはならんだろ?ほんとに)
溜め息を吐いて2人を連れて俺は家に帰ることにした。
早速プールで遊び始めたサナを含む3人を見ながら俺は先日机に放り投げて手付かずの手紙を読むことにした。
「王家から?」
なんだろうと思って開けると
「あ?会議に出て欲しいだ、と?」
その手紙には定期的に行われている貴族会議というものに出席して欲しいと書かれてあった。
日時を確認する。
「明日か、まぁ、学園休めば問題ないが」
流石にこういうものに出席した場合は学園側も出席扱いにするらしいし。
「面倒だが出席してみるか」
なによりも俺の行動はすべて良くない方向に流れるから、今回はこの流れを変えたいということもあり普通に行ってみよう。
変化があるかもしれない。
そう思うのであった。
俺に悪いことをさせてくれ。
俺は悪役に転生したのだから。
悪役っぽいことを何かさせてくれ!
それからしばらくすると、今日も配達員が来たので中まで入れてやると、配達員は俺に紙の束を渡してきた。
「おい、これ多すぎないか?50通くらいあるぞ?ミスだろ?いらない分はハブいてくれ」
俺が父上の家で過ごしてた時手紙などほとんど届かなかったのだから。
ミスに決まっている。
「い、いえ、こちら全てカインさん宛です。ご確認ください」
そう言われたので俺は紙の束をパラパラっと確認した。
(……まじで全部俺宛じゃねぇかよ)
「で、ではこれで」
そう言ってそそくさと去っていった配達員。
俺はとりあえずパラパラーっと目を通す。
「殆ど貴族の家から、か」
見たところ当主から、のようだが。
なんなんだ?
そう思いながら俺は1通目に目を通す。すると家の名前が書いてあり、次に娘の名前と娘の顔写真も載せられていた。
「なんだこれ」
本文の方を読み進めていく。
てきとーに読み進める。
「お見合いの申し込みだぁ?!」
この俺にお見合いを申し込むということを書いた手紙だった。
是非とも自分のところの娘と結婚してくれないか、とそういうことが書かれた手紙だった。
(嘘だろ?)
そう思いながらどんどん手紙を見ていくが
「ぜ、全部お見合いの手紙じゃねぇかよ……」
驚きでその場に手紙をばらまいてしまった。
余りの出来事に思考がついて行かない。
「お、おいおい、どういう事なんだよこれ。50人から一気にデートに誘われたようなもんかよ?!」
なんで悪役の俺がこんなにモテてる訳なんだ?
それにしてもこんなにモテたことなんて生まれて初めてだ。
前世でもなかったことだけどさ。
なにがどうなってるんだ。
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