第14話 悪役の俺、貴族になる
ミーナの住みたいと言っていた、プール付きの家を買って数日が過ぎた。
「ご主人様ー気持ちいいですー」
サナとミーナがプールで遊んでいる様子を見ていたそんな俺の所に一通の手紙が届く。
「手紙くらいは見るか」
俺は手紙に目を通すことにした。
(それにしても誰だよ?俺に手紙なんか送り付けてきて。俺返事書かないぞ?だるいから)
そう言いながら封を切り中身を取りだした。
まず俺に宛てて書いていることが記されており適当に目を通したら
「は?」
とんでもないものがそこには書かれていた。
「しゃ、爵位を授ける、だって?」
この手紙には男爵を授ける、という意味のことが書かれていた。
「お、俺はこれから男爵になるということか?」
そう思いながらこの手紙が本物かどうか確認したが、
「間違いない本物だな。王家からの手紙だ」
まぁ貴族になったからと言ってこれからの生活とさほど変わることはないのだが。
一応貴族になれば王家から褒賞が与えられたりするらしいのだが。
(それにしても何で俺貴族になってんのよ。俺なんかしたっけ?何もしてないような気がするんだがなぁ)
まぁ、何はともあれ貴族になったらしい。
実感は湧かないが。
「しかし、何でいきなり?」
と思って手紙に目を通すと、どうやらこの前の違法パーティ告発の件とか、その他にも色々と勝手に功績を上げたことにされて、勝手に評価されているようだ。
「それで男爵を授けた、か」
そんなような事らしい。
別に要らないんだが。
なんてことを思っていると
「おーい、開けてくれー」
家の門の辺りに父上が立っているのが見えた。
何の用かは知らんが、開けてやろう。
「男爵を授かったらしいな」
「それがどうかしたのか?」
「いやぁ。流石我が息子だなと思ってな。はっはっは。その歳で爵位を貰える人間は本当に少ないんだぞ。というより聞いたことがない!」
そう言ってくる父上。
やはりこの年で爵位をもらえる人間は少ないらしい。
「そこで、だがカイン。少しいいか?」
「ん?」
「何やら近頃モンスターが暴れているらしくてな、そいつらの殲滅に向かって欲しいのだが」
「へー。そうなんだ」
「それでは、よろしく頼むよ。これが依頼書だ」
「ん?お、おい?!」
父上は俺の返事を聞く前に出ていった。
(俺行くなんて一言も言ってないんだが?)
まぁいいか。
俺行くなんて言ってないからな、放置しとこう。
あぁ、眠。
庭に敷いたシートに寝転がって寝ることにした。
庭にブラックバードを放し飼いしてるから強盗がきても撃退してくれる。
そうして寝ていたら夜に起こされた。
「よく眠れましたか?」
起こしてくれたのはミーナだった。
「ん、あぁ、ぐっすりだったな」
横ではブラックバードが見張ってくれていたが、寝ていいと指示を出す。
この時間までご苦労様だ。
「そういえば、今日大きな崖崩れが起きたみたいですよ」
「へー、どこで?」
そうして言われた場所は
「あ、それ、この依頼のところだ」
俺は父上が押し付けていった依頼書に目をやった。
確認してみるとやはり同じ場所だ。
「その崖崩れで暴れていたモンスター達が下敷きになったみたいですけど。ま、まさか幽体離脱して倒しに行ってたんですか?!」
どうやら俺が何かしたものと勘違いしているらしい。
そんな訳ないんだがな。
ずっとここでぐっすりだよ、と思うが。
「こんなに都合よく崖崩れが起きてモンスターが全滅なんて起きるわけないですもんね!幽体離脱までできるなんてさすがです!」
それが起きたんだよなぁ、とっても都合よく。
自分でもびっくりするほど都合のいい話だ。
それから部屋に向かう、その道中
「そう言えば手紙の整理をしていたらこんなものが」
そう言って俺に手紙を差し出してくるミーナ。
「何だ?これは」
「分かりません。カインさん宛です」
「ふぅん」
俺は特に確認するまでもなく机に手紙を投げた。
後で読もう。
「風呂に入ってくるよ」
「お背中流しますよ」
そう言ってくるミーナだが断って俺は風呂場に向かうが、ミーナが付いてきた。
「正式に結婚するまでは手を出さない、とそういう事なのですか?そ、そんなに私のことを大事にしてくれるのですか?」
そう言ってミーナは涙を流し始める。
「ま、まさかそこまで大事に思っていただけているなんて、私は感動してしまいます」
何か勘違いしているけど、俺が単純に一人で入りたいからという理由なだけだ。
俺が脱衣所に入る前に
「あ、そう言えば新しい下着買ってきたので履いてみてください」
と俺はパンツを渡された。
「は、はぁ」
そう返事をして俺は風呂に入ったら、その後ミーナらしき影が脱衣所に入って俺のパンツを回収して出ていった。
『はぁ、はぁ、これが……カインさんの使用済みパンツ……スーハー』
と変態みたいなセリフがほんの少しだけ聞こえたが。
(まじかよ、あいつ)
なんてことを思っていたら。
違和感を覚えた。
(ん?敷地内に誰か入ってきたな?)
俺は魔力を糸のようにして敷地を覆うように結界を作っているから、侵入者がいた場合分かる。
(こんな時間に誰か知らないが、堂々と玄関に向かってきてるな)
俺は着替える時間も惜しかったから裸のままで玄関を開けて外に出た。
そこには
「な、何をしているのですか?カイン様」
と夜中なのにも関わらずティナが玄関前にいた。
その視線が俺の顔から股間に向かっていく。
(まずい!)
考えるよりも先に俺は両手を強化して股間を守った。
ガン!!
手を蹴りあげられる衝撃。
はぁ、俺は成長したのだ。
「ご、ごめんなさい。また焦って蹴ろうとしてしまいました」
「気にするなよ。それより、何でここに?」
「お、お手紙は読んでいただけていないのですか?」
「手紙?」
「私も今日からここでお世話になろうかと思ったのですが」
「え?」
服を着ながら思い出す。
あぁ、あの時机に投げた、あの手紙だろうが。
読んでいないがそう答えたら何を言われるかわかないし当然のように嘘をつくことにした。
「も、もちろん、読んだ」
「そ、そうでしたか、良かったです」
と話をしていた時だった。
「すいませ〜ん。届け忘れです」
と配達員がやってきて俺に手紙を渡して去っていった。
中を覗くとティナからの手紙だった。
覗き込んでくるティナ。
嘘ついたのがモロバレの瞬間だったが
「配達員さんが届けていないのを庇うための優しい嘘だったのですね?!」
え?
また何か勘違いされてる?
「届いていない手紙を届いたことにして、私が抱く配達員さんへの不満を抱かせないようにしたということなのですね!」
完全に自分のための嘘だけど?
「本当に素晴らしいお人ですね。カイン様は聖人です。私は改めて惚れてしまいました。配達員さんのために嘘をついて自分をおとしめてまで配達員さんを守ろうとするなんて素敵です!」
そう言って頭を下げるティナ。
「本日からよろしくお願いします」
今日も俺は何もしていないのに聖人扱いされてしまい、都合のいいように物事は進んでいってしまった。
だが、疑問が残る。
さっき机に投げた手紙は何だったんだろう?
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