第12話 悪役の俺、伯爵の家に呼ばれる
学園に向かい授業を受けた。
俺が真面目に授業を受けるのは珍しかったが、何となく受けてしまった。
(帰るか)
放課後チャイムが鳴ったので教室を後にしようとする、フィオネとティナが話しかけてくるが何も頭に入らない。
ティナなんかは伯爵の令嬢ではないため対等に接することが出来るが伯爵令嬢となるとそうはいかない。
なんてことを思いながら一人さっさと校庭を抜けて校門まで行くと
「あ、先輩」
と、問題のミーナが話しかけてきた。
「え、え?み、ミーナ?な、何でここに?」
「私も学園の生徒ですので。言いませんでしたっけ?」
そう言われて昨日の夜学園の一年とかそんな事を言われたことを思い出す。
それより伯爵令嬢を口説いたことに付いて頭を悩ませていたから聞いていなかった。
「先輩。これから私の家に来て貰えますか?」
と聞いてくる。
「父上に好きな人が出来たと報告したいのです。それと父上からも是非会いたい、と」
「わ、分かった」
学園の前までミーナの執事が馬車で迎えに来ていたので、それに乗ってミーナの家に向かった。
庭に入ってまず見えたのが大きな家だった。
俺の家よりかなりデカい。
家本体も、庭も噴水も何もかもが俺の家のものよりデカかった。
「おぉ、君がカイン君かね」
この家の庭を見渡しているとき門の近くまで来ていた伯爵に声をかけられた。
「あ、あぁ」
俺は悪役だ。悪役が敬語なんて使ってはならない。
「き、貴様!伯爵の前だぞ?!言葉を選べ」
と、伯爵が雇っていると思われる兵士に注意されたが
「気にするな。私の客人だ」
と言って俺の行いを許してくれた。
「案内するよカイン君」
そう言われて俺は伯爵に同行して家の中に入っていく。
さてどうしたらいいのだろうか。
やべええええええええええええ。
正直内心ではかなり動揺しているが。
「ミーナ。カイン君とはいつから付き合ってるのだね?」
「昨日です。昨日愛の告白をされました」
「き、昨日だと?!」
驚く伯爵。
当たり前の話だろう。
今まで大切に育ててきた娘が、いきなり訳の分からない男と婚約しているのだから。
「お父様時間など関係ないとカインさんは言っているのです。私も関係ないと思います。運命を感じるのです」
「だが、ならんぞ!」
親子同士で喧嘩をしている。
伯爵の怒りの矛先は俺に向いた。
「ミーナが可愛いのは認めるが、それでも一目惚れで告白するなど常識知らずな男だな」
フンと鼻で笑われて俺はいつもの癖でローテーブルに足を乗せた。
俺も鼻で笑って喋る。
「はっ。俺がルールブックだよ。伯爵サマ?俺を常識で縛ろうなどと思ってくれるなよ。そんなんだから伯爵止まりなのだろうよ。ふはははは。そんなキミにアドバイスをくれてやる。俺のように自由に生きてみなさい」
俺の粗相を見て伯爵が凍った。
何してんだ、こいつみたいな目で見てくる。
もう後には退けなくなった。
原作のカインのような謎の自信を持って攻めていこうと思った時
「ふむっ。常識に縛られない、か。歴史に名前を刻むタイプの人間はそのような人間が多いが。良かろう」
そう言って俺を見てくる伯爵。
「私の家には騎士団がいる。その騎士団団長を倒せたのなら婚約を認めよう」
その言葉を聞いてゲラゲラ笑った。
「おいおいおいおい、そんなことでいいのかよ。ははははは。団長?随分と舐めてくれたものだな」
「な、なんだと?!」
「騎士団の団長?たった一人かよ?相手にならねぇよ。騎士団全員でぶつかって来てもいいんだぜ?」
俺の言葉に驚いているらしい伯爵に更に畳み掛ける。
「それと俺にだけ一方的に条件を付けられるのも気に食わないな?」
「な、何だと?」
「そうだなぁ。俺が勝った場合、ミーナは婚約者として迎えるのではなく────俺の奴隷として迎えよう」
「なっ?!ど、奴隷だと?!」
「あんたが先に条件を付けてきたんだぜ?なら俺からも条件を付けさせてもらった、だけだ」
「子爵の子供の分際で……格下の分際で……」
ワナワナと拳を震わせる伯爵。
いい感じに怒ってますなぁ。
ミーナが俺たちの仲を取り持とうとしてくるが、手で制して俺は口を開く。
「騎士団全員でかかってこいよ。ひねり潰してやる、あんたの自慢の騎士団とやらをさ。そんであんたの娘を目の前で犯しつくしてやるよ」
「ふふふ……いいだろう。カイン……格の差というものを見せてあげよう、その貴族の風上にもおけない振る舞い正してやる」
「それで、どこで対戦する?」
「我が家の裏庭にはいつも騎士団が練習する場所があるそこでいいだろう」
俺はその返事を聞いて頷くと部屋を出ていくことにする。
「せいぜいその娘守ってみなよ?パパさん?俺はミーナを心まで奪い尽くす」
そう宣言して部屋を出ると俺は先に裏庭に向かうことにした。
原作カインならば騎士団団長1人にすら余裕で負けるだろうが今の俺は努力した。
負けるわけが無い。
裏庭に先に来た理由がある。
「ウォーターボール」
芝生に水をぶちまけた。
水を地面が吸収し続ける。そしてやがて泥のようになった。
めちゃくちゃぬかるんでいる。
「あははは、これで奴らは足がぬかるみに取られて満足に歩くことが出来ない、いーひっひひ。笑い死ぬ!!!無様に転んで欲しいな!それを見て俺は笑い転げてやろう!」
俺は靴が汚れないように風魔法で空中を移動している。
これで足場がぬかるんでいることによる影響は受けない。
「さぁ、こいよ!騎士団!俺がメタメタに叩きのめしてやろう!」
悪は必ず勝つ!
俺はそう信じているのだ!
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