第11話 悪役の俺、パーティを壊す

クエストも終わり俺たちはダンジョンの外に出てきた。

その帰り道も俺はミーナと手を繋いでいた。

その時、


「ご、ごめんなさいカインさん」


そう言って一旦手を離すミーナ。


「て、手汗が」

「大丈夫だよ。君の手汗は素敵だ。君の手汗の一滴だって俺は舐めとって俺の1部にしたい」

「そ、そんな、汚いですよ」


顔を赤くしながら俺に背中を見せて手汗を拭いたのかそれからまた俺の手を握ってきた。


ベチョっとした感覚が俺の手のひらに広がった。


あれ?手汗拭いたんじゃなかったのか?

まぁ深くは考えないでいいか。


手汗を舐め取りたいとか冷静に考えて気持ち悪いことを言った手前これ以上気持ち悪さを重ねる必要も無いか。


それにしてもこの子は随分手汗が酷いらしいな。

なんてことを思いながら俺は打ち上げと称した、晩飯に誘われていた。


俺としては十分パーティの仲は最悪にしたからこのままミーナを捨ててドロンして、最悪の悪役ムーブをしたかった所だが……。


まぁ、誘われたので仕方ない。

それよりここで最悪のことをしていこう。


「ほら、ミーナ。口開けてよ」

「あ〜ん」


俺とミーナはリーダーが見ている前で存分に食べさせたあった。

俺はリーダーを無視してミーナと2人で話す。


「新婚旅行はどこに行きますか?♡」

「ミーナはどこに行きたい、とかある?」

「私はカインさんとなら何処にだって行きますよ」


そう言ってくる。

俺は新婚旅行どころか結婚すらする気は無いが。


ミーナちゃんはおめでたい頭だな。

ははは。


と最悪なことを思いながら食事は終了した。

そしてリーダーと別れることになったのだが。


「カイン、今日は助かったよ」


と笑顔を引き攣らせながら口にするリーダーに俺は答える。


「こっちこそ、運命の出会いをくれて、とてもとても感謝しているよ」

「そ、そんなカインさん、運命の出会いだなんて」


と恥ずかしがるミーナの言葉を聴きながらリーダー の言葉を待った。


「こっちは最悪の一日だったよ」


そう答えられて


「カイン。明日らは絶対に来ないでくれ」


と、そう言ってきた。


「何を言ってるんだお前は」


来るなと言われるも何も俺は今日だけの関係なんだが?


「いいから明日からは絶対に来ないでくれ」


何を言ってるんだ?とか思いながら俺はミーナに目を向けた。


リーダーはミーナに口を開く。


「ミーナは明日からも来なよ?」

「は、はい……」


余り嬉しくなさそうに答えるミーナ。

俺が追放された事がそんなに悲しいらしいが。


去っていくリーダーを見送ってから俺は最後に嫌がらせする事にした。


ギルドに寄っていって俺は今度は匿名ではなく、俺の名前を出して報告する。


「先程まで所属していたパーティだが、かなり感じが悪かった、パーティメンバーにマイルールを押し付けて、とても最悪なパーティだったよ。あんな様子ではパーティメンバーが可哀想だ。是非とも指導してやってくれ」


へへっ。これで無駄な質問攻めにされてしまえ。


嘘と真実を織り交ぜながら俺は報告して家に帰ることにした。

ギルドを出てミーナを捨てて帰ろうと思ったが


(ん?)


ぐっ、ぐっ、と繋いでる手に力を入れてもミーナと握られている手が離れない。


(ど、どうなってる?これ)

「どうかしましたか?」


ミーナがいつもと違った笑顔で俺の顔を覗き込んできた。


「手が離れないんだが」

「私達は愛し合っているから離れる必要はないでしょう?カインさん?」

(ひえっ……)


お、俺がぁ!

愛しているのはぁ!

サナちゃんだけなんだよぉ!


手が離れない!


「な、何故手が離れないのだ?」


そう思った俺は少し見える隙間に目をやった。


(超強力な接着剤だと?!)


思い出した。

あの、ベチョっとした感覚を!


ミーナは俺と一度手を離した時に接着剤を自分の手に塗ってから俺と手を繋いだのだ!!!!!


(そ、そこまでするかよ?!普通!!!遊びだって?!てか遊びどころじゃなくて冗談だって!!俺手は出してないじゃん!!!見逃してぇぇぇ?!!!)

「優しくエスコートしてくださいね」


作戦通りみたいな笑顔で俺の顔を見てくるミーナ。

やべぇよ!!!こいつ!!!


とんでもねぇの拾っちまった!!!

どうしよう!!!


とりあえず僅かな望みにかけて接着剤の効果が切れるまでその辺を遠回りしてみようとするが


「あれ、そっちじゃないですよね?」

「……」


何?どういう意味?


「私知ってるんですよ?カインさんの家」


な、何で知ってるんですか?!


「私の家も貴族なので、家同士繋がりがあるのです」


やべぇ……連れていくしかないじゃないか。

家に帰るとメイドがとんでもない顔をしてすっ飛んで行った。


そしてミーナを連れて部屋に戻ろうとした俺をとんでもない形相の父上が追いかけてきた。


「お、お前……シュトレイザ伯爵のご令嬢に手を出したのか?」


伯爵ぅぅぅぅぅぅ?!!!!!

父上より身分が高いじゃないか?!!!


そうか。

思い出した、ミーナ・シュトレイザ。

何度か会ったことがある。


その度に父上は伯爵に頭をペコペコと下げていたのも!


大丈夫なのか?!!!

俺ヤバくない?!


「お気になさらずお義父様。私はカインさんの誠意を見せてもらいました、その上でこのお方ならきっと私を幸せにしてくれる、と思います」

「そ、そうなのですかご令嬢。う、うちの愚息にそこまで言ってもらえるなんて」


ミーナに土下座を始めた父上。

それから俺の両肩を掴んで叫んでくる父上。


「よくやったぞ愚息!お前には期待していなかったが、こんなにも美人な伯爵令嬢を連れてくるなんて!お前は期待以上の戦果を出した!伯爵には私の方から連絡を入れておく!」


そう言って歩き去る父上を見てから俺はミーナに言われた。


「さぁ、お部屋にご案内してくださいね?」

(中にはゴスロリサナちゃんがいるんだぞ?!どうする!!!)


おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!あんなもの見られたらどんな反応をされるか分からないぞぉぉぉ?!!!

そう思いながらも無言の圧力に負けた俺は部屋に入れた。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


俺専属のゴスロリメイドのサナちゃんが早速迎えてくれた。


「わぁ、可愛いメイドさんですね」


その後2人で話し始めたが俺の頭の中は真っ白になっていた。


(伯爵令嬢?!さ、流石に捨てらんねぇぞ?!粗相をしてしまえば、お、俺の立場も危うい!!)


その時だった。

俺とミーナの間に何か魔力的な繋がりが出来るのを感じた。それから接着剤の効果が切れた。というより、ミーナが効果を切らした感じだった。


魔力で目を強化すると俺の手から彼女の手に向かって線が繋がっている。


「な、何だこれ?」

「婚約魔法、ご存知ではないですか?」


知らない魔法。何だそれは。


「私とあなたの間に婚約の契りを結ばせてもらいました。時が来れば私とカインさんが結ばれる魔法です。お互いに不義理はできなくなる魔法です」


そ、そんな魔法あんのかよぉぉぉぉぉ?!!!!

とりあえず俺がミーナを捨てることが出来なくなったのは確定したようだった。

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