第9話 悪役の俺、気付かれる
翌日。
学園にくると当たり前のように俺に話しかけてくるフィオネ。
「なぁ、カイン」
やはり俺以外に友達がいないのかもしれない。
こいつに話しかけられるのは、別に好きでは無い。
「いい加減にしろよフィオネ。俺に話しかけるな、と何度も言っただろう」
「何をそんなにツンツンしているのだ?」
そろそろ俺も悪役っぽく振舞っていくことにするか。
「なぁ、フィオネ」
「どうした?」
「今日の授業に実技演習があったな?」
「あるが、どうかしたのか?」
「今日は模擬戦の日だったはずだ。そこで俺はお前を叩き潰す。泣いて許して、と口にしてみろ。口にしても許さんがな」
はははは。
ふはははは。
やっと悪役みたいな事が言えたぞ!!!!!
俺だってやれば出来るじゃないか!
「いいぞ、負けないからな」
何で機嫌の1つも悪くせず受け答えするんだ?こいつは。
そう思いながら俺は残りの時間を潰していく。
最近はフィオネのペースに巻き込まれていた気がするがここで形勢逆転と行こう。
運命の時は来た。
校庭に降りる前にフィオネが話しかけたきた。
「行こうカイン」
「話しかけるな。これから俺はお前と殺し合いをするのだからな」
フッ、と笑って俺は一人で降りていこうと思ったが、フィオネがまた追いかけてきた。
だから何で追いかけてくるんだこいつは。
「私達がするのは殺し合いではないぞ」
「血で血を洗う殺し合いさ」
「流血するようなものは禁止されているのを知らないのか?」
「俺がルールだ」
「ルールブックは生徒手帳だぞ?ちゃんと読んだのか?」
一々細かい奴だな。
「ふん。その生意気な口閉じさせてやる」
「なにで?」
そこは望むところだ!とかじゃないのか?
と思いながら俺も考えてしまった。
(たしかに、なにで閉じさせるんだ?こいつの口を)
「私の口をなにでどうやって閉じさせるつもりなんだ?」
「俺に負けた悔しさでさ。口いっぱいに敗北の味を染み渡らせてやるさ」
「私はその程度じゃ口は閉じないと思うぞ?」
誰か助けて。
口で勝てる気がしないんだけどぉぉぉぉ?!
「次、カインとフィオネ。ほら、入れ」
俺は先生にフィオネと一緒にフィールドに入るように指示された。
「ほら、行くぞ?」
俺はフィオネに連れられてフィールドに上がった。
クラスメイト達全員がフィオネを見ていた。
こいつはこれでも実力者だからどんな戦い方をするのかが気になるんだろう。
そんな期待されているやつをここで叩きのめす。
「よし、フィオネ。特別ルールだ」
「特別ルール?」
「俺を一歩でも開始位置から動かせたら俺は降参してお前の勝ちにしてやろう。まぁお前程度の雑魚のゴミカスに動かせるとも思えないがな。ふははは」
「動かすだけでいいんだな?」
面白い、と言って答えてくるフィオネ。
先生が合図を出す。
「始め!」
俺はウィンドカッターを何十枚も出した。
そしてフィオネの周りをふよふよと浮かせる。
その全てがそこそこの速度でフィオネの周りを回っている。
だがフィオネを傷付けることは無い。
できる奴が見ればこれがどれだけの修練を詰んだ果てに出来ることなのかが分かるだろう。
「くっ……う、動けないぞ」
「おっと、動くなよ?服、破けちまうぞ?それどころか体まで傷付いてしまうかもなぁ?!」
「くっ……」
「それとも見てもらうかよ?お前の素肌をクラスメイトの前でさ。ゲハハハ!!!」
俺がそう言うと主に男子生徒達の顔が期待しているようなものに変わる。
見たいのかもしれない。
だがその時
「カイン。お前ルールを知らないのか?ウィンドカッターは使用禁止魔法だろうが」
先生に話しかけられた。
ぴっぴーと笛を吹いてそれ以上の戦闘を止めてくる。
「技術力は認めるが、お前の反則負けだ」
「は?どう見ても俺の勝ちだろうが!」
俺は1歩近づいて文句を言う。
「今動いたな?お前」
そう聞いてくるフィオネ。
はっ?!
「特別ルールが自分の首を絞めたな?カイン」
動揺によって俺のウィンドカッターが消えたことにより歩いてくるフィオネ。
しまった!!!!!
動いてしまった!!!!!
くそっ!
俺バカじゃねぇのか?!
まぁでも今更どうしようもないしな。
とか思いながらフィールドから出た。
そのままフィオネが話しかけてくる。
「一つ聞きたいことがあるんだが」
そのまま歩いていく俺に着いてくるフィオネ。
「以前、一つ下の女子生徒の服がバラバラになった事件があったな?」
「それがどうした?」
「あれはカインがやったものだな?」
「何で俺なんだよ?」
「あのウィンドカッターの技術力さ。お前なら女の子の体に傷1つ付けずにあれを出来るんじゃないかと思ってね」
あれ、バレたか?
「私は前々からカインではないかと思ったいたが今ので確信したよ。あれはカインがやった事なんだと」
やべぇよ。
女の服切り刻んだ変態だとフィオネに気付かれてしまう。
と思ったけど
「よくやってくれたな。学園を代表してお礼を言うよ英雄。あれがなければ多くの生徒が傷付いていただろう」
どうすればいい?
俺は悪役だ。主人公に感謝されてはならないぞ?
甘く見られてはだめだ!
「ふ、ふん。俺は人助けをした訳では無い。人助けにも興味はないぞ」
「何を言っている?昨日のクエストの件でもボアを駆除して人助けをしていたではないか」
「そ、それはだな。俺が肉を焼いて食べたかっただけなのだ」
「いや、違う。お前には未来が見えるのだろう?」
そう言ってふんわりとした笑顔を作るフィオネ。
未来なんて見えませんけどぉぉぉ?!!!!!
「ふふふ。そう否定しなくてもいいでは無いかいい事をしているのだから、それは誇らしいことだぞ?」
「ち、違う!!!!俺は悪いことをしたいのだ!!!」
「悪いこと?お前に悪いことなんて、できんだろう?」
そう言ってくるフィオネ。
お、俺はやってやるぞ!
俺は悪役だ。
こいつをボロくそに貶してやる。
「フィオネは馬鹿でブサイクでノロマの役立たず。もう俺に話しかけるなよ」
「ツンデレというやつなのか?」
ちげぇよ!!
「残念だな。お前が聖人のような人間であることは私が一番知っている。その言葉の一つ一つにも意味があるのだろう?」
ねぇよ!
ただの悪口だよ?!
俺はもう歩いていく。
無視だ無視。
「か、カイン?!」
呼び止めてくるが無視だ。
ほんとに調子が狂うな。
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