第4話 悪役の俺、婚約したので手を出す
「じゃ、よろしく〜」
俺は父上達に婚約の話を任せてティナを連れて屋敷の庭に来た。
「カイン様は普段何をしてらっしゃるのですか?」
「俺?普段は学園に行ってるよ」
「学園に行ってらっしゃるのですか?!」
驚いたような顔をするティナに頷く。
「やはり学園とは楽しいところなのでしょうか?」
「つまらないよ。教師の話は長いし」
「で、でも私は憧れてしまいます。私生まれてから体が弱くて」
「そうなのか」
「はい。だからこの家からもあまり出られなくて。ほとんど出たこともないんです。ですからお話を聞いて行ってみたいなって思いました。それに親が過保護で外は危ないって言ってて」
と俺の手を握りしめてくるティナ。
ティナの手が柔らかくて俺のあれがやべぇ!
ティナを押し倒す。
勿論無理やりだ。
こいつの意志など関係ない。
俺は悪党なのだからガハハ。
「俺が守ってやるよ?どんなものからだってさ」
俺DTだけど悪党だから何とかなると思うんだ。
無限の悪党パワーって奴を俺は信じてるよ。
「え?」
驚くティナの胸に手を伸ばす。
その時
「や、やめてください!」
チーン!
股間に迸る衝撃。
金の卵が潰れる!!!!!!!
見なくても何が起きたかは激しい痛みが伝えてくれた。
「おごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「ご、ごめんなさい。ひ、膝蹴りしてしまいました!!」
そう口にしたティナが目を見開いた。
「そ、空から氷の塊が落ちてきています!」
「くそっ!」
俺は痛みに苦しみながらもティナを守るために覆いかぶさった。
背中にゴン!っていう衝撃。
(どっかの魔法使いが魔法でも練習してんのかよ?!これ!)
「だ、大丈夫ですか?カイン様」
「だ、大丈夫だよ」
魂が抜けたような顔をしていると思うけど、それでもティナに覆い被さるようにして氷の塊から守った。
背中も痛いし股間も痛い……っていうか氷が当たって全身痛い!
助けて!!!!
中でも特に痛いのが蹴られた股間だ。
泡吹きそう!
その時氷の雨が止んだ。
俺は覆いかぶさっていたティナから離れるとその場でのたうち回る。
(潰れる!!潰れるぅ!!!)
「ど、どうしましょう!どうしましょう!」
やがて痛みでのたうち回る俺に気づいたのか、左に右にと動き回るティナに助けてもらう。
「わ、脇腹を……両腕で抱えて俺をジャンプさせてくれぇ」
「こ、こうですか?」
戸惑いながらも言われた通りに俺の両脇の下から腕を通して持ち上げてくらるティナ。
そのまま俺の身体を何とか上下にゆすろうとする。
昔こうやってもらってマシになったのを思い出すが、女の子の腕力じゃ厳しいかもしれない。
「お、おごぉぉ……」
死ぬぅ。
痛いよぉ!!玉が!マジで潰れる!!
てか潰れてる気がする!!!!
「は、はわわわわ……が、頑張ってください!」
余りの激痛に俺は意識を失った。
目覚めると全く知らない天井が視界に入ってきた。
「あれ、俺死んだかな?」
「あ、起きましたか?」
そう言って俺の顔を覗き込んでくるティナ。
「お、おはよう」
「今は夜ですよ?」
「そ、そうなのか」
もぞもぞと俺はベッドから抜け出ると座った。
そうすると隣に座ってきて俺の両手を握ってくるティナ。
「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい。驚いてしまい、蹴ってしまいました」
そう言って彼女は何を思ったのか自分から服のボタンを外していこうとする。
そして
「さ、触ってください」
と、俺の右手を自分の胸に持っていこうとしたが、トラウマが甦った。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!!オッパイコワイ!!!!」
次触れたらガチで潰れるのではないかという不安が過ぎる。
「も、もう蹴りませんから、お、お願いします。わ、私を愛してください、カイン様」
「オッパイが怖いよぉ……ママァ……」
悪党の俺に怖いものが出来てしまった。
それはオッパイだ。
前までは素晴らしいものに見えていたオッパイが、胸の膨らみが、今は地獄の門に見えてしまう。
「そ、そういえばカイン様はあの時氷が降ってくるのを知っていたんですね?」
「え?」
「言ってたじゃないですか。『私を守ってやる』って。それに覆いかぶさったのは、あれは氷が降ってくるのを知っていたから口にしたんですよね?」
い、いやー。
そんな事ないんだけどなー。
覆いかぶさったのはティナを犯したかっただけなんだけど。
でも俺悪役だからここは頷いておこう。
ミステリアスな悪役になるんだ。
「勿論そうだよ。知ってたから君を守るために覆いかぶさったんだよ」
ティナの好感度は上がるだろう。
ほら、見ろ微笑んだじゃないか。
「流石カイン様ですね。何で分かったのか教えて欲しいです!」
と喜んでくれるティナに適当に答える。
「今日は泊まっていってください。カイン様のお父様も今日はその予定みたいです」
「そうか。分かったよ」
とは言え俺はもう今から寝れる気がしないんだが、とか思いつつ今が何時か聞く。
「もう日付変わりましたよ。寝ましょう」
そう言って俺を寝かしつけてくる。
布団に潜ると
「えへへ、結婚したみたいですね」
と、俺の横に入ってくるティナ。
俺もうトラウマで怖いんだけど……この子。
ティナに無理やりするのはもう、やめておこう。
怖すぎる。
悪役にも勝てない奴くらいいるものだ。
多分。
そう思いながら俺は寝ることにした。
朝目覚めた俺は父上に昨日の話を聞かされた。
「婚約は無事に取り付けられた」
「そ、そうなのか」
「お前昨日気絶したみたいだが、何も無い庭で転けて気絶したってよく意味が分からないんだが。絶対嘘じゃないか?これ」
「もう聞かないでくれ」
父上には話せないことをしようとして気絶したなんて話せない。
「ふむ、まぁ構わんが。それと令嬢からお前に贈り物がある」
「あ?」
俺は父上から箱を受け取った。
「中身は知らんがお前宛てだ」
俺は中を開けてみた。
手紙が入っていた。
読んでみると包み紙の中に俺に使って欲しいという物を入れてあるという。
(何だ?使って欲しいものって。筋トレ器具かなんかか?俺やんないけど)
そう思いながら包み紙を開けてみると下着が入っていた。
紙も同梱してあった。
私を思い出して、してくださいね、とのメッセージ付き。
俺の魂が悲鳴を上げたのでソッコー見なかったことにした。
これは家宝として封印しておこう。
開けちゃダメだ。
トラウマが蘇る呪具だ。
まさかフィオネに奪われた髪の毛がまだマシと思う日がくるとは思わなかったな。
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